「全員がサッカーを知っていなければ、”ジャパンズウェイ”など絵に描いた餅」東京五輪サッカー男子 決勝 ブラジル-スペイン

スポンサーリンク

メキシコをPK戦で下したブラジルと、日本を延長戦で破ったスペインというカードになった東京五輪の決勝戦。

試合の序盤はスペインのペース。ブラジルの4-4-2に対してスペインは4-3-3のフォーメーションで、マッチアップ的にはアンカーが浮くため、そこからペドリやメリーノにボールが渡ってサイドを使う組み立てが機能、ブラジルを押し込む流れで始まる。

が、ブラジルの上手いところは、特に監督が戦術的な手当をしなくても、選手自身が相手に応じた修正が出来るところで、アンカーには特定のマークを付けず2トップがパスコースを塞ぎ、スペインのインサイドハーフをきっちり抑え、ボールを奪ったら素早く大きなサイドチェンジでスペインの攻撃をスローダウンさせてしまった。

前半は拮抗した流れが続き、このまま後半勝負かと思われたロスタイム、左からのクロスにオーバーラップしたダニ・アウヴェスがククレジャを振り切って折返し、中でバウンドしたボールに素早く反応したクーニャが流し込みブラジルが先制する。

スペインは後半からアセンシオに代えてソレール、メリーノに代えてブライアン・ヒルを投入。ブラジルは後半7分にリシャルリソンが抜け出しシュートも、ウナイ・シモンの体に当たってクロスバーの決定機。

しかしスペインは後半16分、右サイドでソレールがスルーパスに抜け出しクロス、ファーに飛び込んだオヤルサバルが見事なボレーを突き刺しスペインが同点に追いつく。その後はスペインがボールを支配してペースを握るが、ブラジルものらりくらりと攻撃をしのいで90分間を終えて延長戦へ。

ブラジルは延長に入って左SHにスピードのあるマウコンを投入、徹底的にボールを集めてクロスで攻め立てるが、スペインもGKウナイ・シモンを中心に体を張った守備でゴールを割らせない。

延長戦の後半に入る直前でスペインはオヤルサバルを下げてラファ・ミルを投入。ブラジルは後半開始でクラウジーニョに代えてヘイニエルを入れる。すると後半3分スペインのCKからブラジルがカウンター、マウコンがバジェホを振り切ってのシュートはウナイ・シモンの足に当たってゴール、ブラジルが勝ち越し点を決める。

そこからは当然ブラジルは3ラインのゾーンを自陣に組んで守備固め、スペインはラファ・ミルにボールを集めて何とかチャンスを作ろうとするが、ペドリのシュートが大きく外れるなど疲労の影響は強く、そのままブラジルが逃げ切って勝利、ブラジルがリオ大会に続いて連覇を決めた。

ブラジルは、ゴールを決めたマウコンやレアル・マドリー所属のヘイニエルでさえサブに回せる圧倒的な選手層、そして中2日の試合が続いても120分間ペースを落とさず戦えるタフさは金メダルにふさわしいとしか言いようが無い。

それは単に体力があるからではなく、個人のキープ力や守備範囲の広さ、適切なフォローの動きとミスのない判断力で、いちいち無駄な動きをする必要が無く、スタミナを温存できている。それでいて無理にドリブルで突っ込むようなエゴイズムも皆無。そして勝負どころで全員が一気に攻め上がって試合を決めてしまう。

まさに、田中碧が言うところの「サッカーを知っている」選手が11人揃っているのがブラジルなのだ。選手の自主性を尊重する”ジャパンズウェイ”を標榜するのであれば、ブラジルぐらい個人能力が高くなければ、絵に描いた餅なんだと痛感させられる試合だった。

タイトルとURLをコピーしました