2度目の休養日明けとなる第16ステージは、オーベルニュ地方の丘陵地帯を使った山岳タイムトライアル。通常の山岳ステージでは全く差がつかない、ヴィンゲゴーとポガチャルの戦いに決着が付く可能性がある勝負どころ。
まず序盤でトップに立ったのが、フランス・タイムトライアルチャンピオンのカヴァーニャで35分42秒。スイスのタイムトライアルチャンピオンであるステファン・キュングは最初の計測ポイントでトップに立ったがその後失速、52秒遅れ。
途中にある2級山岳コート・ド・ドマンシーでは、麓から頂上までのタイムによって山岳ポイントが与えられ、熾烈な山岳賞争いを繰り広げているチッコーネとパウレスの戦いはチッコーネに軍配、これで5ポイントを積み重ねる。
カヴァーニャのタイムは1時間以上破られなかったが、ユンボ・ヴィズマチームのワウト・ファンアールトが途中まで遅れるものの登坂で一気に逆転、15秒差で暫定トップに立つ。そしてスタートでは総合成績トップ10の選手が走り出す。
サイモン・イェーツ、アダム・イェーツ、そしてビルバオらがファンアールトに迫るタイムで走る中、総合2位のポガチャルが第1計測ポイントで、それまでトップだったキュングのタイムを16秒上回る。しかし総合トップの証であるマイヨ・ジョーヌのスーツを着たヴィンゲゴーが、コーナーぎりぎりを攻める鬼神の勢いで猛追する。
ヴィンゲゴーは第1計測でポガチャルを16秒上回ると、第2計測ではさらに31秒差へと差を広げる。ポガチャルは残り5.7kmの地点で上り対策としてノーマルバイクに交換、ヴィンゲゴーはTTバイクのままで継続、これでさらに10秒のタイム差がつく事になる。
これでポガチャルが巻き返すはずだったが、明らかに表情から覇気が消えてペースが上がらない。逆にヴィンゲゴーはペースを全く緩めず、第3計測ポイントでは1分5秒にまで広がってしまう。
それでもポガチャルはファンアールトから1分14秒早いタイムでゴールはしたのだが、ヴィンゲゴーがさらに1分38秒の驚異的なタイムを叩き出してステージ優勝。これで総合のタイム差は1分48秒差まで広がり、まだ第17、19と山岳ステージを残しているとはいえ、ポガチャルの逆転は極めて厳しい状況になったのは確かだ。
前日の第15ステージで、終盤にポガチャルを突き放すチャンスがあったのに、ヴィンゲゴーが何もアクションを起こさなかったのが謎だったのだが、アルプスでは手の内を隠しつつ、このタイムトライアルで確実に勝利をつかみ取るために、全て周到に計画・実行されたのだと納得する。バイク交換の選択にしても、UAEのチームとしての甘さが露呈したとも言える。
しかし勝負が完全についたわけではない。今日は獲得標高5000mを超えるハードな山岳ステージ、超級ロズ峠を登ってゴールはリゾート地として有名なクールシュベル。もし体調が悪化して遅れてしまったら取り返すのは不可能な難関である。ポガチャルもこのままでは終われないはず。まだまだツールをかき回して欲しいところ。
世界に衝撃を与えたヨナス・ヴィンゲゴー??????
これがマイヨ・ジョーヌの底力????第16ステージ – 22.4km(個人TT)?#ツール・ド・フランス 2023????#TDF2023 #jspocyclepic.twitter.com/01SVfHwBXa
— Tour de France JPN/ツールドフランス公式???? (@letour_jpn) July 18, 2023