第10ステージ
ツール・ド・フランスの大きな楽しみの1つは、パリとかモン・サン・ミッシェルなど有名どころではない、日本人が知らない風光明媚なフランスの風景を見ることが出来る事にある。
この日は、大西洋に面した西海岸に浮かぶオレロン島をスタートし、大陸に一度渡ってから北側に位置するレ島にまた渡ってゴールというコース。オレロン島は牡蠣の一大産地で、広大な湿地を利用した無数の養殖池が並ぶ風景は日本の田んぼそっくりだが、すぐ外が海という不思議さ。そしてゴールのサン=マルタン=ド=レには、世界遺産の星型要塞があり、要塞を利用したヨットハーバーが面白く、フランスの軍艦島ボイヤール要塞もある。
レースの方は、何とツールのディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏の新型コロナウイルス陽性が判明、今回はチームに2名以上の感染者でチームまるごとリタイアという厳しい規則なのでキャラバンに緊張が走ったが、ひとまず選手は全員陰性で無事スタート。
いったんは逃げ集団が形成されたが、数少ない純粋な平坦ステージという事でメイン集団も動きが素早く、残り100km地点で早くも吸収、強風のためにあちこちで落車が発生、集団も分裂と集合を繰り返して神経質な展開が続くが、結局最後まで上位争いを左右するような大きな中切れは起こらず、ラストスプリント。
いつものサンウェブトレインがスタート、途中でクイックステップチームにスイッチすると、ギリギリまで引っ張ってベネットが発射、ユアンが交わしにかかるが間に合わずベネットが涙のツール・ド・フランス初勝利を飾った。
第11ステージ
早くも今年のツールは折返し、完全平坦ステージ2連発、大西洋からアルプスが待ち受ける東へ向かうリエゾンステージ。ゴールのポワティエはツールではおなじみのアルプス中継点である。
このステージはいかにもフランスの内陸という感じの丘陵地帯が続いて風景的な楽しみは少ないが、途中で世界で最も有名なバターの産地であるエシレを通過、名声の割に凄く小さい町でちょっと驚いた。
レースの方は、スタート直後にマチュー・ラダニュが単独で抜け出し、その後は最大で4分のリードを保って独走、集団では途中のスプリントポイントをベネットが獲得、サガンとのポイント差は25に開く。
ラダニュは結局ゴール残り43km地点で吸収、その後は散発的な落車はあったが逃げる選手は生まれず、そのままポワティエでのゴールスプリント。最近では珍しい長くて広い直線が続くコースだけに、最後は横幅いっぱいに広がった豪快なスプリント合戦が展開、最後はサガン、ファンアールト、ベネット、ユアンが横一線でゴールを通過したが、自転車を投げ出したタイミングが当たったユアンが勝利。
2位はベネットとサガンが写真判定でも完全に並んでいたのだが、サガンがゴール前でよれてファンアールトを押したとの判定で失格、降格と減点の処分が課されてベネットとのマイヨヴェール争いは68ポイント差まで広がった。しかしこれから19ステージまで山岳コースが続くので、ベネットがどこまで我慢できるか。
第12ステージは大会最長ステージ、細かいアップダウンが連発して最後は2級山岳をこなしてのゴールと、まさに逃げ屋による逃げ屋のためのステージ。フランス的には総合で4分差が付いてしまったアラフィリップの爆発に期待だろうね。