UAEとカタールは国家として断交状態、スタジアムのチケットを王族が全て買い占め、カタールサポーターを完全に排除した異様な状況で始まった準決勝。UAEは4-1-4-1、カタールは4-2-3-1のフォーメーションで、中盤がマッチアップする形のでスタート。
序盤はホームのUAEが勢いを見せたが、15分頃からは落ち着いてカタールがボールをキープ、UAEが4-5のブロックを引いて守る展開。カタールはカウンターが得意なチームだが、ボールを持ってもサイドチェンジを交えてワイドに展開、中央を固めるUAEのゾーンを外側から上手く攻めている。
すると21分に、カタールはUAEが攻めた後のカウンターからフーヒがシュート、コースは甘かったがGKエイサが出した手の下を通ってゴールが決まる。さらに36分、アリが単独ドリブルで持ち込みシュート、ポストに当たってゴールイン。今度はエイサもノーチャンスのゴラッソ。
後半はマタルやハリルといった攻撃的な選手を投入してザックは勝負に出るが、攻撃は雑なクロスが多くてひたすらカタールの守備に跳ね返されるのみ。そして後半35分、UAEのDFラインがボーッとしている間にパスを通され、ハイドゥースがチップキックで3点目。
これで切れてしまったUAEは、ペットボトルが観客席から投げ込まれる中、ロスタイムにCBアハマドがあからさまな肘打ちでVAR判定、当然ながら一発レッドで退場。その後も4点目まで献上するオチまで付けて試合終了。日本が決勝で対戦する相手はカタールに決まった。
アジアカップが始まってから、ずっとカタールは強いと言い続けていたので、この結果にはさほどの驚きは無いんだけど、もうちょっとUAEは開催国の意地を見せて延長ぐらいは持ち込んで欲しかったよね。自国の観客で満員にして、カタールにプレッシャを与えたかったのかもしれないが、逆にUAEにとってはそれが精神的な重圧になってしまい、全体的に空回りしてしまった印象。
そういう時にこそ、チームに培われた戦術がモノを言うものなのだが、UAEはポジショニングの共通意識が無く、個人が局面で頑張っているだけで、せっかくボールを奪ったのにスペースに誰も人が居なかったり、呼吸が合わずにあっさりタッチを割ったりと終始チグハグ。サイドが前がかりになる割にラインが低く、中盤が間延びしてカウンターさせ放題。いかにもザックらしい「自分たちのサッカー」だったと。
カタールは全くの対照的。ビルドアップ時には3バックになってプレスを掻い潜り、しっかり前線に縦パスを入れてくる。相手に引かれてもサイドチェンジで高い位置での基点を作る。ボールを奪うとまずサイドに人が走るという約束事が徹底、サイドで基点を作ったら、SBがインナーラップで攻撃参加、サイドでトライアングルを作り、ニアゾーンを使ってゴール前で崩す。5レーン理論を駆使したモダンな戦術が徹底されている。
イラン戦の快勝で、世間はもうアジアカップの優勝が決まったかのような雰囲気だが、少なくとも戦術面では選手任せの日本や、古臭いゾーン・ディフェンスのイランとはレベルが違う。親善試合とは言えスイスやエクアドルに勝っているし、アジアカップでは日本が大苦戦したサウジに快勝。アフリカ系の移民をスカウト、自国開催に向けて育成年代からカタルーニャ流の強化を図って来ただけの事はある。大迫がいれば勝てない相手じゃないけど、油断は禁物なのは確かである。