いや、日本戦で120分間の激闘をこなし、ようやくPK戦で勝ち抜けたクロアチアが、ここまで圧倒的な強さを見せ、ベスト16の韓国戦では前半だけで勝負を決めて後半はサブを出して流していたブラジルに対し、まさか勝利するとは誰も予測出来なかったよね。
クロアチアはブラジルに対し、中をガッツリ締めてアンカーのカゼミーロに対してはモドリッチがケアをし、得意のワンツーはグバルディオルを中心とした守備陣にことごとくカットされ、ほとんど外からクロスを上げるしか攻め手が無かった。
それでも、延長前半にブラジルのエース、ネイマールが自らドリブルとワンツーでPA内に切り込み、最後はリヴァコビッチをテクニックで交わして角度のないところから撃ち抜く、超絶技巧ゴールを決めた時には、これでブラジルは勝っただろうと皆思ったはずだ。
しかし、ブラジルにとっての大きな誤算は、この得点後にチームがどう戦うかの意思統一が出来なかった事だ。本来であれば、なりふりかまわず自陣にブロックを作って守り倒すのがセオリーで、ブラジルもしばらくは我慢のサッカーを見せていた。
ところが延長後半10分、ブラジルはたまたま高い位置でボールを奪い、フレッジが飛び出すもグヴァルディオルのタックルを食らってロスト。セカンドボールを拾ったモドリッチに対してカゼミーロがアタックを仕掛けるも、上手く入れ替わられてしまう。
この時点で、ブラジルは前線に6人が取り残された状態になり、ヴラシッチがドリブルでブラジル陣内に入り4対4の形。そこから左サイドのオルシッチにパス、ここでブラジルは4人のうち2人がオルシッチに寄せてカバーに入るが、当然中は2人だけになってカバーが間に合わず、ペトコビッチのシュートはマルキーニョスに当たってコースが変わりゴールイン。
4年前のロシア大会ベスト16で、日本がベルギーに逆転ゴールを食らったカウンターが14秒だったが、これは延長後半10分41秒から11分3秒までの、ロストフの14秒ならぬエデュケーション・シティの22秒である。
時間と状況を考えたら、フレッジの飛び出しに逆サイドの選手が上がる理由は無いし、カゼミーロがアタックに行く必要性も全く無かった。すぐに自陣へ戻ってブロックを作っていれば、同点に追いつかれる可能性は極めて低かったはずだ。
同点でPK戦に持ち込まれると厳しいという情報はチームに共有されていたはずで、それでも攻撃に人数をかけてしまったのは、1点を先制した事で浮かれてしまったのか、追加点でとどめを刺しに行こうとしたブラジルのプライドなのかは分からない。
ブラジルのマスコミは、PK戦でネイマールを5人目に温存、若いロドリゴを1人目にした事でチッチ監督が非難を浴びているようだが、先制してから同点にされるまでの試合運びにこそ、ブラジルの問題が集約されているように思うのだ。