グループリーグは3戦全勝と、イタリアらしからぬ万全の状態で臨んだユーロのベスト16。対戦相手はグループCで2勝して突破したオーストリア。
ダークホースと見られているオーストリアだが、バイエルンからレアル・マドリーへ移籍したダヴィド・アラバを始めとして、長谷部のチームメイトであるヒンテレッガーやイルザンカー、遠藤の同僚カライジッチなど、ブンデスリーガで活躍する選手が多くいる。
試合が始まってみると、オーストリアは4-2-3-1のフォーメーションでビルドアップがスムーズ、攻撃陣がバイタルに下がって縦パスを受けて組み立てるところが日本A代表と良く似ていると言える。
序盤はオーストリアが高いラインを保ってボールを保持するのだが、イタリアはカウンターから度々惜しいチャンスを作るようになると、前半途中から形勢が入れ替わってイタリアがほとんどオーストリア陣内でプレイするようになる。
後半になるとオーストリアもイタリアの攻撃に慣れて来たのか、後半6分にカウンターからゴール前すぐのところでFKをゲットするも、アラバのFKはわずかに枠外。17分にはザビッツァーのミドルと、惜しいチャンスを作るようになる。
イタリア最大のピンチは後半20分、ライナーのクロスにファーでアラバが折り返し、アルナウトビッチが頭で押し込んでゴールに見えたが、VARで惜しくもオフサイド。30分にもオーストリアのFKに選手がなだれ込み、ライナーが後ろから倒されたように見えたがノーファール。
90分で試合を決めたいイタリアはさらに攻勢に出るが。38分にはスピナッツォーラのクロスにファーでフリーだったベラルディがオーバーヘッドシュートを試みるもヒットせず。ここでイタリアは疲れが見えるインモービレとベラルディを下げ、ペロッティとキエーザを投入する。ロスタイムにはPAすぐ右でイタリアがFKを得るも、得点ならず試合は延長戦へ。
延長に入るとむしろオーストリアのほうが前に出る流れになるが、延長前半5分に右サイドでサイドチェンジを受けたキエーザが、右足でカバーに入ったオーストラリアの選手を上手く交わし、左足でゴールを決めてとうとうイタリアが得点。
こうなるとイタリアは守ってカウンターに狙いを固め、前半15分にFKの流れからインシーニェのグラウンダーのクロスをアチェルビがポスト、それを拾ったペッシーナが決めてイタリアが2点目。
オーストリアも延長後半9分に、CKからニアでカライジッチがゴールに頭で流し込んで1点差に迫るが反撃もそこまで。そのままイタリアが苦しみながらも逃げ切り2-1で試合終了、準々決勝はベルギー対ポルトガルの勝者と対戦する事になった。
イタリアは疲れがあるのか、それともオーストリアだからと気を抜いていたのか、チャンスが多かった割には最後まで得点できず、自ら苦しい展開にしてしまった。そういう意味では、延長で結果を出した控えメンバーのほうが緊張感を持っていたと言えるのかもしれない。
逆にオーストリアは自分たちの持てる力は全て吐き出したと言えるだろう。最後は選手層の差が出て力尽きてしまったが、グッドルーザーとして胸を張って帰国出来る素晴らしいチームだった。