2003年9月18日

・山本ジャパンU-22韓国戦を終えて

韓国戦はひどい試合だった。マスコミはやたら「韓国強い」を連発していた(個人的にはそれほどとは思わない)が、たとえ相手が強かったとしてもやり方という物がある。山本監督にすれば課題がはっきりしたらしいが、試合をするたびに課題が増えていくチームというのも珍しい。大久保の1トップや那須の急造センターで何の課題を見つけるつもりだったのか。「通用しない事が分かった」ってのが収穫なら誰が何をやっても全て収穫だろう。

とまあ文句を言えばきりが無いが、これまでの山本監督の仕事振りを言い表すなら「破綻」の一言である。

山本監督がトルシエ後に目指したものは、トルシエの欠点を修正し、良いところは継承する事によってより良いチームを作ろうと言うものだったのだろう。しかし、残念ながら今のところほとんどが裏目に出てしまっていると言わざるを得ない。

具体的に挙げてみよう。まず欠点の修正の失敗例。

次においしいとこ取りの失敗例。

では何故こういう事になってしまうのだろうか。私は、特に日本の指導者に「サッカーをマクロに捉える」能力が足りないからだと思っている。例えるなら、サッカーのチームとは建築物のようなもので、材料やコスト、建築期間、立地、周囲との環境などを考えて、監督は慎重に設計プランを考えていかなければならないのである。

日本ではどこかの4-2-3-1論者のようにやたらと設計図ばかりに目が行く事が多いが、実績を残している監督は決して材料の吟味や強度計算をおろそかにはしない。オシムやヒディンクは選手を徹底的に走らせてスペースを作ったりプレスをかけ続けられるようにして最低限の強度を持つ材料に仕上げ、ホンミョンボやミリノビッチといった優れた材料を大黒柱にした。トルシエにしても、良い素材ではあるがメンタルの弱さという不純物がある材料を煽ったり小突いたりして徹底的に精錬した。その上で、どういう設計にすれば期間内に顧客が満足できる、つまりJならJ、W杯ならW杯の試合に勝てる物が出来るかを綿密に逆算してチーム作りをしていたのである。

山本監督の場合、トルシエの書いた設計図や方法論だけを真似して、ここの桟が邪魔だからとかここにドアを付けた方が便利だからとかで色々いじっているうちに突然家が崩壊してしまったというところだろうか。仏作って魂入れずとは正にこの事である。

たとえ話はともかく、この五輪代表チームはかなり危機的な状況になっているのは間違いない。監督は相変わらず根拠の無い前向き思考だが、あんな無様な試合をやって「収穫があった」などと言っているようでは、もはや目の前の現実すら認識出来ていないほど迷走していると言わざるを得ない。相手はサンドニのフランスでは無く、五輪予選のライバルであり、しかもイチョンスやパクチソンもいない韓国なのだ。それなのに「彼らは強い」と持ち上げてまで自分たちを卑下して、五輪でどうやってメダルを取るつもりなのだろうか。そんなに「自分たちは弱い」という自信を植え付けたいのだろうかとまで思ってしまう。

山本さん自体は決して無能な人だと思ってはいないが、今はあまりにトルシエ(と技術委員会?)の影響が悪い面に出すぎている。一度野に下り、J2あたりで長いシーズンを戦って泥にまみれた方がいいのではないか。

もし、今のままで処方箋を考えるとしたら、ドゥンガでもラモスでも柱谷でもいいから怒れるコーチを招聘し、ポスト役のFWとボランチとCBのメンバーを固定、形だけ真似した「フラット3もどき」を捨てて余計なシンキングスピードを必要としないシンプルな戦術を叩き込み、運動量があり闘えて汚れ役も厭わない選手をもっと増やし、徹底的にアウェイの厳しい環境での試合を重ねる事だろう。選手も指導者も一度頭をまっさらにして闘う集団を作り上げる事だ。

ただ、問題はあのお上が気付いて対策を施すかどうかなのだが・・・(以下略


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」