2003年1月15日

・高校選手権での戦術

今年は市立船橋が優勝で高校選手権が終了した。ごり押し的プレイスタイルで準決勝まで圧倒的な強さで勝ち上がってきた国見が敗れた事で、組織とテクニックサッカーの勝利と喜ぶ人も多いだろうが、ちょっと待てよ、と言いたい。

今回の大会では、代表の影響もあるのかやたらとプレスサッカーを採用しているチームが多数見受けられた。しかし、選手に代表並みの確かなテクニックがあるわけじゃないので、トラップもパスも満足に出来ずに狭い中盤をボールが行ったり来たりするような試合になってしまう場合が多くなっていた。そこに一体どれだけ選手の自主的な判断や個人能力の反映があったのだろうかと思う。

もちろん、前にも書いたようにプレスサッカーであっても個人の判断は必要だ。しかしスペースも時間も無いプレス状態での判断は複雑で経験が求められる。経験豊富なA代表の選手でさえ、なかなか難しい事であるのはW杯での日本の失点を見れば明らかだ。結局、W杯のようなギリギリ紙一重の勝負の中では、勝敗を分けるディテールは選手個々の能力と判断に帰すると言うことなのだろう。

今、ジーコやカピタンは、個人の能力と判断重視のポゼッションサッカーで代表を作ろうとしている。それで勝てるかどうかは別にしても、結局は個人なのだと言う思いは伝わってくる。私もその考え自体は否定しない。が、本来その考えはユース年代にこそ優先されるべきものじゃないだろうか。

確かに、高校生同士ならとりあえず組織的にコンパクトにしさえすれば、ある程度のレベルの相手なら勝ててしまうだろう。しかし、相手の強さ次第で全く様相が変わってしまうのも組織守備の怖さである。しかも崩壊した組織を同じ試合中に立て直す事はほとんど不可能だ。今回の大会でも、国見相手に中途半端な組織をズタズタにされたチームの何と多かった事か。市船は国見に勝利したが、下手にラインを上げて通用するような相手ではないという布監督の読みがあったのだろう。しかしそれも、個人で対抗できるだけの準備をきっちりやっていたからこそ出来た芸当である。

西村監督がフラット3を採用したアルゼンチンワールドユースでも、3バックだった試合はラインを上げるのか人に付くのか後ろ5人が混乱した状態で終わったのに対し、2バックにしたチェコ戦は見違えるように良い試合をした。一次予選突破が絶望になってかえって開き直れたという理由はあったのだろうが、逆の順序であったならと思ったものである。つまり、若くて世界経験の無い彼らには、高度な組織サッカーは無理だったのだ。それと同じ事が高校サッカーにも言えるのではないか。

湯浅氏は、昨日のコラムで国見のスタイルに一発勝負のトーナメントの弊害を指摘していたが、プレス偏重のスタイルもまたトーナメントの影響であるように思う。制度的な改善もされようとはしているようだが、カピタンも「個人のレベルアップ無しではドイツ大会でベスト16は無理」とA代表に言うなら、まずユース世代の指導者を教育して欲しいものである。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」