2003年4月17日

・親善試合 韓国-日本(1-0)

初勝利、しかも韓国相手のアウェイで勝った事は嬉しいし、これがW杯予選だったら満点を付ける結果だったが、チーム作りという点で言えば、ここからどう発展するのかが正直良く見えない試合だった。というか、この日本のメンバーでブラジル式4-4-2だったらこうなるだろうなという論理的な展開に終始したと言える。

前半こそコンパクトな布陣でSBとのコンビネーションでサイドを使った攻撃が出来ていたが、イチョンスの惜しいシュートがあってからはすっかり相手の押し上げる動きが良くなり、中盤でセカンドボールを拾われてはSBの前のスペースにどんどん侵入されてクロスを上げられまくってしまった。相手の決定力にも助けられて無失点で済んだが、あそこまで左右から連続攻撃をされるのはリスクが高すぎる。

結局こういう展開になったのは、前線でボールがキープできないせいもあるが、カバーリング中心のDFラインがセーフティファーストでほとんどラインを押し上げられず、中盤の広大なスペースを福西と中田の2人でケアしなければならず、自然に人の薄いサイドににパスを通されてしまったからである。

特に、前半40分のような、右でキープされた時に森岡がラインを作るなというジーコの言いつけを守ってラインから大きく下がり、ラインとの間のスペースにイドングに入られてボレーを打たれた場面や、後半9分にカウンターからイドングが1トラップしてボレーを打った場面のように、サイドから揺さぶられたときに、オフサイドを取らない戦術ではほんの少しのマークミスやFWの機転が失点につながる怖さがあるし、この1人余る動きを相手が研究してきてダイアゴナルの動きでカバーリングの隙間に何人も入って来るようになった時を考えると、また別の動きと駆け引きが必要になってくるように思う。

攻撃面でも、ボランチが組み立てる位置が低くて相手のプレスを受けてしまい、ほとんどボールキープ役と落ち着かせるためのパス出し役になってしまって、大きな展開や前線とからんでの二次攻撃の場面は数えるほどだった。優れたFWがいない日本でこれでは厳しい。

もちろんそれは悪い事ばかりじゃなくて、トルシエの時のように無理にラインを上げず、ジーコが小笠原や奥にポジションを守るように指示したので、とりあえずスペースは埋められた状態になり、ジダンやラウルなどの傑出した技術の持ち主がいない韓国選手相手では、1対1で完敗しなければとりあえず大ピンチという事態は防げるわけだ。そういう意味で怖かったのはイチョンスの個人技ぐらいだろうか。また、必ず1人が余るという守備も、必ず相手を視野の中に入れながら対処をする事が出来るので、日本の経験の浅いDFにとってはメリットが大きい方法なのかもしれない。おそらく、我々がピンチと感じるほどには日本選手は危ないと思っていなかったのではないだろうか。

問題は、この試合があくまでアジア相手にアウェイで負けないための戦略を採用した結果なのかどうかである。前半は運動量と飛び出しタイプの山下と中山、後半はドリブルタイプの三都主と永井の起用というのも、負けないためであれば最初は裏狙いでバックラインを下げ、最後はキープという事で分かるのだが、本当にそういうゲームプランであったのかどうか。もし攻撃的に行こうとしてああなったというのではあまりにも不可解である。もっともそれはイドングを下げてクロスの意味が無くなった韓国にも言える事なのだが。

とにかく今日の出来ではフッチボル・アレグリはもちろん、ポゼッションサッカーにも程遠い対アジア限定のカウンターサッカーチームに過ぎない。まだまだこれでは2006年は安心できない。これから、東アジア選手権で先制された時の展開や、コンフェデでの強豪相手にどう攻撃を組み立てていくのかを見ていかなければならないだろう。

◎採点

楢崎 6.5 終始非常に落ち着いていた。やはり現時点での第一キーパーだろう。

服部 6 クロスを簡単に上げられる事もあったが、1対1はまずまず落ち着いていて良かった。

森岡 5.5 相手に簡単にポストプレイをさせすぎる。4バックの守備としては対人が甘いと言わざるを得ない。

秋田 6 高さや1対1は安定しているが、バックラインのパス回しの緩さは何とかならないのだろうか。

名良橋 6 攻守に良く動いてクロスも注意深く上げて好感が持てたが、相変わらず自分のサイドに詰めてきた選手を見失う事多し。

三都主 4.5 サイド攻撃が機能しなかった元凶。やたらと中に入る場面が多く、売りのドリブルも無くパスも中途半端。FWになってからは存在感無し。

中田 5.5 キープミスや判断の遅さが目に付いた。本来ならここから左右に展開パスを出さなければならないはずなのに。

福西 6 フィジカルで負けていなかった分中田コより上だが、攻撃の組み立ての課題については同じ。

小笠原 6.5 前半はキープ、守備、展開と文字通りチームのけん引役。後半はペースががた落ちしてミスが多くなった。

中山 5 頑張りは分かるのだが・・・ポストプレイぐらいはしっかりしてくれないと困るのだが。

山下 6 フィジカルで押さえられてはいたが、何とかアイデアを作り出そうと努力していた。

奥 6 前線でのアクセントという前半の日本には無かった役割を果たしていたが、当たり一発で交わされてカウンターの起点になるのは勘弁して欲しい。

永井 6 点を取った一連の勝負の意識は良かったが、それまでは居場所を探すのに苦労していた。


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