ホームでの親善試合、しかも相手のコンディションが万全で無かったとは言え、とりあえずきっちり2戦とも勝ってタイトルを取った事は素直に評価してよいだろう。4バックなのか3バックなのか、マンツーマンなのかラインディフェンスなのか、まるでチームとしての方向性が見えなかった以前に比べると、おぼろげながらチームの完成形というものが見え始めてきたようにも思う。
守備では、相手が攻撃に転じた時はDFがあまりリスクを犯さずディレイをかけながら下がってMFが挟み込むようにしてボールを奪い、攻め込まれたらあとは人数をかけてマークを外さない。そして攻撃ではスペースへと走る選手の間を少ないタッチ数のパスで回してポゼッションを回復し、セルビア・モンテネグロ戦ではサイドチェンジを織り交ぜながらFWのポジションチェンジに合わせて中盤が飛び出すなど、縦と横の変化を生かすという狙いがある程度形になっていたと言える。
しかしアジア予選でも見られた事だが、相手がボールを持ったときにDFが早く引き過ぎてしまい、中盤が戻りきれずにバイタルエリアに空いた大きな穴に入られた時にマークが混乱して決定的なピンチを迎えてしまう場面が多く見られ、こちらが押し上げたときの守備組織と最終局面でのマークの受け渡しが煮詰められていない点が非常に気にかかる。
また、ディレイからサポートを待つ守備は安定感があるのだが、その分中盤の運動量の負担が大きく、セルビア・モンテネグロ戦を見てもジーコはトルシエのようにサイドを消耗品と割り切った采配をしないので、後半になってダイナミズムが落ちてしまった時や、連戦が続いてスタメンに疲労が溜まった時にどう立て直すのかという部分についても課題は残ったままであると言えよう。
アジアカップではそれを踏まえ、連戦でのコンディション面を配慮しつつ、サブを含めたメンバーでこのサッカーのクォリティを維持し続けられるのか、ほとんどの国が日本に対して引いて守るだろう状況で、いかに守備を崩し、高い位置でカウンターを未然に防ぐ守備をする事が可能なのかを主眼に見て行きたいところである。
正直、ほとんど名前を聞いた事の無い選手ばかりのスロバキアが相手とあって、スタジアムにもやや空席が目立つ中での試合。日本のスタメンはGK川口、DF中澤、宮本、坪井、MF三都主、遠藤、福西、加地、トップ下中村、FWが鈴木と玉田。
試合は開始からスロバキアは自陣で堅く守って日本がボールをキープするという予想通りの展開で始まる。スロバキアは守備に入ると2ラインできっちり固め、攻撃時もあまり前に出ずに長いボールを蹴るのみで、試合にほとんど動きが無いままに時間が過ぎる。
日本は鈴木がトップに張っている以外は、玉田や中村が中盤に下がってボールの中継役になろうとするが、スロバキアがサイドのスペースを完全に封じているためにクロスを上げる場面が作れず、鈴木のポストプレイも安定しないために前で起点が作れない。
15分ごろからようやくスロバキアも前に出始めたおかげで日本も攻撃時にスペースが使えるようになり、玉田と福西のワンツーから一度決定的なチャンスを作ったものの、またもや攻撃は沈滞してしまう。あとは鈴木のシミュレーションに沸いただけで、会場にはぐだぐだしたムードが蔓延する。
そうこうしているうちに日本の中盤にもスペースが空いてしまい、福西や中村のミスパスから危ない場面を作ってしまう。しかし45分にに中村の左CKから福西がどんぴしゃヘッドで唐突に得点、そのまま前半は終了する。
後半になるとスロバキアのペースががたりと落ち、ただ引いてスペースを埋めているだけでマークになっていない守備になり、日本が自由にパスをつないで攻撃を仕掛けられるようになる。ところが20分、今度はスロバキアがCKからバブニッチのどんぴしゃヘッドで同点に。宮本がマークについていたが、ジャンプしたときにマークが外れてしまっていた。
ところがわずか1分後に日本が突き放す。早いリスタートから中村がすぐに振り向いてスルーパス、そこに反応した鈴木が飛び出したGKを浮き玉で越すような、鈴木とは思えない(笑)うまいシュートを決めてしまう。
33分に、日本は鈴木と玉田を下げて柳沢と本山を投入。そしてすぐに、バックパスを処理しようとした相手GKを柳沢がチェイシング、これが相手のミスをさそって柳沢がそのままゴールに押し込んで3点目。あとは攻めに出てくるスロバキア相手に落ち着いて守り切った。
とてもレベルが高いとは言えない上に、コンディションも悪そうなスロバキアが相手だったとは言え、DFからのワンタッチのビルドアップや前線と中盤とのコンビネーションで崩す狙いはある程度見えたと言える。しかし早いサイド攻撃につなげられるような後ろからの展開がほとんど無く、中距離パスを中村が出してしまっていたのは小野の不在を感じざるを得なかったのは今後の課題だろう。
●採点