2003年6月9日

・キリンカップ 日本-アルゼンチン(1-4)

今日この試合をもう一度ビデオで見直してみた。すると、昨日もうすうす感じていた事だが、前半45分と後半開始から3点目を入れられるまでの試合内容に大きな違いがあることに気づく。

まず前半であるが、個人としての守備はあるものの、とにかく全くプレスがかかっていない。何しろ相手ボールになると4バックがあっという間に下がってしまうので、攻撃のために高い位置にいたボランチ3人が置き去りになり、バイタルエリアには広大なスペースが。

しかも日本は中途半端にマンマークになるので、アルゼンチン選手の動きに中盤の選手が引っ張られ、そのスペースに入り込んだ選手からこれまた広く空いたサイドまでパスを通されていた。しかもアルゼンチンは執拗にサイドのキープからオーバーラップを仕掛け、日本の守備は混乱するばかり。

日本の1失点目も、右サイドの動きに小笠原や秋田が何度も吊り出されているうちに全員がそちらに意識が行ってしまい、サビオラの存在を完全に忘れてしまっていた。パスコースに入っていた稲本の責任がやや大きいか。ともかく、突破されたのは個人能力の差が決定的だったとは言え、ただ人を埋めているだけの中盤が簡単にあそこまでボールを持っていかれるようでは失点は時間の問題だっただろう。

そして2失点目は、うるぐすの都並氏が指摘したように、まさにDFラインにギャップを作ると言うジーコの指示が裏目に出てしまった典型的な失点パターンである。

しかし後半では、日本は高くラインを保つようになり、ムズ〜リ氏の指摘ではハイボール以外の場面ではDFラインにギャップを作らないようになったらしいが、ビデオを良く見たら明らかにボールの位置によってDFラインを上下している。そしてオフサイドを量産。おいおい、これはあの見慣れたトルシエメソッドではないか!

そしてラインが高くなることでプレスが効き始め、アルゼンチンはパスを出すスペースが無くなってロングボールに頼り始めてサイドが機能しなくなり、日本は中田や稲本が高い位置で攻撃に絡む場面が増えてチャンスを作り出す事が出来るようになった。

また、高い位置でボールを奪えるとその瞬間にパスコースがたくさんあるので攻守の切り替えが早くなる効果も出ていたと言える。

この良いリズムの時に2点目が入っていれば、試合はまだ分からなかったはずである。

3失点目は単なる森岡のマークミスの失点なのだが、心理的なダメージが大きかったのかこの失点から選手の足が止まってラインの上下も鈍くなって中盤が再び空いてしまい、集中力が途切れた末の4点目だった。

試合を見直してはっきり言える事は、後半になってアルゼンチンのペースダウンや日本が慣れた布陣に戻したという理由も少しはあるのかもしれないが、ラインディフェンスを積極的にやっていた時間帯は少なくとも日本のリズムになっていたと言う事である。

問題は、この電波流に言えば「ジーコの呪縛から抜け出した」守備メソッドの変更に対してジーコがどう考えているかである。やはり今までと同じように「間抜けの守備」だとして一人余る深い守備を取ろうとするのか、変更をポジティブに考えて選手にまかせるのか。パラグアイ戦での立ち上がりの守備に注目したい。

最後にFWについて。確かに大久保はスピードを生かした激しい動きでアルゼンチンのマーカーを悩ませたが、コンパクトになって中盤のフォローが早かった時間帯、しかも後半45分のみの出場なので、まだ完全なレギュラーとの評価は早いだろう。

鈴木については前半はかなり孤立した状態でのポストばかりだったので低評価は少し酷だろう。大久保と組めた時間帯はコンビネーションも良かった。

中山はそろそろお疲れ様か。永井については韓国戦は特にそうだったが、あまりにいろいろな所を動きすぎる。もっと裏への飛び出しや危険な地域で勝負するためのポジショニングをクラブで学んで欲しい。テクニックはあるのだから。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」