2003年3月29日

・親善試合 日本-ウルグアイ(2-2)

色々な意味で極めて残念な試合だった。

まず何より、ウルグアイのコンディションがひどくてほとんど選手が動けず、また中盤の意思統一も皆無だったので、今日の試合で見るはずだった守備的な課題がほとんど検証できなかった事である。しかも、ウルグアイが全くプレスをしてこなかったので、サイドや中盤で余裕でボールを持つ事が出来、試合はほとんど日本の攻撃練習のようになってしまった。そういう相手につまらないミスで引き分けである。これでは全く強化になるはずも無い。

と愚痴を言っても仕方が無いので評価が出来るところだけをやってみると、まず黄金の中盤であるが、中村や小野、そして稲本のボランチとしての経験によって、個人の守備意識やキープ力が上がり、ポジションチェンジをして誰が前線に出ても攻守ともにある程度の確実性というものは出てきた。それによって相手はマークしにくくなり、ポゼッションを高める効果が出て来ている。

しかし、ウルグアイの3バックのサイドのスペースを使うのがほとんどFWだけであったため、スピードに乗った崩しが出来ず、あまり4-4-2の利点が生かされなかった。そういう意味で前線の組み合わせは再考の余地があるように思う。

あとは・・・うーんと・・・思いつかないなあ(笑)。って笑ってる場合じゃないぞ。

ともかく、この試合でジーコジャパン自体の評価はほとんど不可能である。出来れば、相手が本気で来るだろう韓国戦に欧州組を使いたかったのが正直なところである。

◎採点

  • 川口 4 理由は言うまでも無いね。
  • 名良橋 5.5 前半は良い上がりを見せるも効果的な攻めにはならず、後半は消えてしまった。
  • 秋田 5.5 1対1の守備はまずまず。ただ攻撃面でフィードの精度に問題あり。
  • 森岡 5 1失点目のマークミスはもちろん、相手に簡単に抜かれる場面もあり本調子にはほど遠い。
  • 服部 5.5 守備は及第点だが、攻撃の精度に欠ける出来。
  • 稲本 6.5 下手に動かなかったのが良かったか(笑)。得点以外にも落ち着いたキープと散らしでリズムを作っていた。
  • 小野 5.5 絶好の位置でのFKは吹かし、パスや動きにもいつものキレが無かった。
  • 中村 6 キープの技術はさすがだし守備意識も確実に向上している。ただもう少し早い崩しを心がけて欲しい。
  • 中田 6.5 攻守の切り替え、フィジカル、運動量ともに格の違いを見せつける。パスやシュートに精度が欠けていたのが残念。
  • 鈴木 5.5 ファウルはもらっていたのだが、ほとんど前を向いたときの仕事が出来ず。
  • 高原 6 一人で前線のアクセントを作り出し惜しいシュートを放ったが、もう少し相手に怖さを与える働きが出来たはず。
  • 中田コ 5.5 気合が空回りしたか、危険なミスを犯す場面も。後半に入った割には効果的な存在になれなかった。
  • アレックス 5.5 あまりにも勝負しすぎ。今回はそれでもいいが、もうちょっと周りを生かす事もこれからは考えるべきだろう。
  • 黒部 - 採点不能
  • 試合 3 これで何か意味があったんですか?


・アジア・マドリード

ウルグアイ戦について、ネットでいろいろ意見が書かれていたが、全体的には賛否両論という感じだった。ホームで引き分けだからやや批判が多いかな?

確かに、この試合を面白いと思った人がいるのは分かる。ボールは良く回っていたし、相手陣内で攻める時間が多かった。欧州組も1対1での対処の仕方や個人の守備意識が成長して、昔のようなバックパスだらけのサッカーでは無くなっている。ようやく、ほんのちょっとだけレアル・マドリードっぽいポゼッションサッカーの香りが漂いはじめるようになったのは間違いない。ただしもっとゴールに抜け目の無い選手が必要ではあるが。

しかし、上にも書いたがウルグアイがほとんどプレスらしいプレスをかけて来なかったのも確かで、欧州組の欠点があまり表に出てこなかったという点は考慮すべきだろう。リーグでの試合で見られるプレスをかけられた場合の各選手の欠点を挙げてみると、だいたい以下のパターンになる。

中田 - ミスを犯すことはさすがに無いが、前線でパスコースを作る動きがないと、1対1を抜くテクニックが無いのでキープしつつ後ろに下がってからバックパスか無理なパス出しをして攻撃を遅らせてしまう。

中村 - フリーでいられる人のいない場所、つまり遠〜いサイドに張るか後ろに下がってパスをクレクレ君になってしまう。

小野 - 守備意識が強くなりすぎてほとんど前に上がれない、後ろからボールをもらってもワンタッチでバックパスをしてしまうだけになる。

稲本 - パスをもらってもそこで慌ててしまって、トラップミスやうっかりバックパスを相手にカットされて大ピンチ。

こう書くと、ウルグアイ戦では後半に中田の持ちすぎの場面は見られたものの、他の3選手のこういう場面はほとんど見られなかった事が分かるだろう。とは言えレアルの場合でもプレスにあたふたする試合は必ずある。それでもジダンやフィーゴの正確なトラップとキープでDFの負担を和らげ、DFは1対1で相手の攻撃を出来るだけ遅らせて何とかしのげるから勝てるのだ。

つまり、そういう試合をどれだけ経験し、見つかった課題をどれだけ修正できるかがジーコ”ポゼッションサッカー”ジャパンの未来を決めて行く事になるだろう。それだけに、そういう条件にならなかったウルグアイ戦は極めて残念だった。しかし、プレスだけは世界レベルで来てくれるだろう韓国戦については、欠場を表明している中田をはじめ、欧州組の集合は望めそうにない。ジャマイカ戦やアルゼンチンから見ても、J組と欧州組の実力差が広がっているのが確認できただけに、もったいない事である。

これでとうとうW杯からの4試合が、本来の強化にならない形で消化されてしまう。おそらく、代表の本当の真価はコンフェデまで問われない事になるだろう。日本がただの「アジア・マドリード」で留まるのか、「レアル・マドリード」になれるのか。そのカギは日本で見つかる事の無いままに欧州リーグでの戦いへと引き渡されてしまった。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」