アイスランド戦とはうって変わって7割方の入りでのアウェイらしい雰囲気の中での試合。日本はアイスランド戦と全く同じスタメンの3-5-2で、イングランドはGKジェームズ、DFアシュリー・コール、ジョン・テリー、ソル・キャンベル、ギャリー・ネヴィル、MFスコールズ、ジェラード、ランパート、ベッカム、FWがオーウェン、ルーニーという4-4-2の布陣。
試合は開始からイングランドが完全にボールを支配、いきなりベッカムのCKから失点かと思いきやゴールラインギリギリで小野がボールを掻き出して難を逃れるものの、イングランドはシンプルなパス回しからサイドで数的優位を作り、三都主の軽い守備もあって次々に中にボールを配給される。日本はほとんどべた引き状態となり、久保は厳しくマークされ、玉田は相手のフィジカルに苦しみ、中村は全くボールをキープ出来ずにほとんど攻撃を仕掛ける事が出来ない。
そして22分、中盤にスペースが空いたところでこの日再三フリーになっていたジェラードが強烈なミドル、これを楢崎が前にこぼしてしまい、詰めて来たオーウェンに押し込まれてしまう。その後はイングランドもややペースを落とし、ようやく上がれるようになって来た三都主が攻撃にからみ始め、ミドルシュートなどで反撃を試みるものの、イングランドゴールを脅かすまでには至らない。
後半は、ダイレクトパスやサイドチェンジを多用した攻撃を仕掛けるイングランドペースで始まる。しかし、日本も前半ほどマークに混乱は見せず、DF陣も落ち着いた対応を見せて工夫の無いイングランドの攻撃をしのぎ続ける。
そして8分、後半から下がり目に位置した中村から三都主、小野とダイレクトでボールが渡り、小野がジェームズの股間を抜く見事な攻撃で日本が追いつく。その後はイングランドも反撃するものの、日本も空いたスペースを使って中村や三都主が再三攻撃にからんでイングランドに対抗する。
しかし、14分にようやくスペースが出来始めて働けるようになった2トップを何故か鈴木と柳沢に交代してしまう。柳沢は飛び出してからの後が続かず、鈴木はボールキープしても味方のフォローが無く、日本の攻撃から怖さが消えてしまう。
30分を過ぎるとイングランドに疲れが見え始め、オーウェンとルーニー、スコールズを下げてバッセル、ヘスキー、ダイアーを投入するもイングランドのペースは変わらず、逆に日本がボールをキープしてバイタルエリアから再三ミドルを放つも決められずに試合終了。
イングランドにアウェイで引き分けたと言う結果を見れば快挙なのは間違い無いが、今日は最後まで3バックを貫いたとは言え、鹿島セットのFWへの交代は非常に疑問であった。また、中村の位置を下げてから試合は安定したとは言え、その分前線が孤立してしまったのは確かで、やはりトップ下のポジションをどう有効に使うかと言う課題は残されたままだと言える。今日の試合を見る限りでは、まだ中田の必要性を感じざるを得ない。
逆に、イングランドは高さに劣る日本に対してあまりアーリークロスを仕掛けて来ず、あくまでサイドを使っての崩しに重点を置いた攻めに終始し、少しは久保を研究していたとは言え、あくまでフランス戦を睨んだ試合をやっていたように見えた。また、ベッカムを筆頭として主力選手にキレが無かったところからも、コンディション的にもまだユーロに向けて調整段階のように見えた。これから本番に向けてどれだけ調子を上げられるかが課題だろう。
●採点
チェルシーのグジョンセン率いるアイスランドとマンチェスター・シティのホームスタジアムで対戦した試合。日本の先発はGK楢崎、DF中澤、宮本、坪井、MF三都主、小野、稲本、加地、トップ下中村、FWが久保と玉田と言う3-5-2。
試合は開始直後からアイスランドが縦にラッシュをかけ、日本の守備に圧力をかける。早速5分に稲本が判断の遅さからボールを奪われてファールをし、そこからのFKを何とか楢崎がパンチングするものの、宮本の前に入ったヘルグソンの頭に跳ね返されてゴールに決まってしまう。
しかしアイスランドも得点をして安心したのか、急に自陣に引いてしまってロングボールを裏に通すばかりで怖さが無くなり、小野を中心とした日本のタッチ数の少ないパス回しが効き始める。そして20分、小野のパスが相手に当たったこぼれ球を拾った久保が個人技でDFを交わし、飛び込んできたGKをあざ笑うかのようなチップ気味のシュートを決めて同点に。
その後もアイスランドのペースは変わらず、日本は時折カウンターでピンチになりかける場面はあるが、そんな場面も数える程。35分にはこれまた小野のアウトサイドでバックスピンをかけた小野ならではのパスが、右サイドの裏に抜け出た久保に渡り、久保は右足でGKの上を越すシュートを決めてしまう。
後半になると日本は一気に5人の選手を投入する。2トップが柳沢と鈴木、SHが本山と小笠原、ボランチに福西が入って4-4-2に。しかし、これで明らかに日本は機能性が落ち、攻めに出てきたアイスランドに次々にサイドを破られて波状攻撃を受けてしまう。
案の定、また5分に左CKから再びヘルグソンにヘッドを決められて日本は早速同点にされる。しかし今日の日本には運があった。13分に、後方(小野?)からのパスに抜け出した鈴木がPA内で倒されてPKの判定。これを三都主が豪快に決めて日本は再びリードする。
その後はアイスランドが攻めて日本がカウンターで対抗と言うお決まりの展開に。しかし日本もアイスランドも決定機に決められずに時間は経過、37分に遠藤に両足タックルをかましたグンナルションが退場してからはさらに日本のペースになるものの、山のようにあったチャンスに決められないまま、どうにもグズグズな内容のままに試合終了。
まあアイスランドの覇気と工夫の無さにもガックリした試合だったが、それ以前に日本は3バックの前半と4バックの後半を比べればまるでジキルとハイドのような試合展開で、やはり中盤の枚数が増えた方が日本の良さを生かせるというポイントがはっきり分かり過ぎた試合だったと言える。選手も一応採点はしてみたものの、後半に出場した選手があまりに気の毒で、採点の基準に困り果ててしまったのが正直なところだ。
ここまで見事な違いを見せ付けられると、今後日本がW杯に進めるかどうかはジーコが3バックと4バックのどちらを採用するかにかかっていると言っても過言ではない(笑・・・ってられないが)。それでも、久保の左足を研究されて小野に密着マークを付けられるとどうなるか分からないところはあるが、前半のパス回しの早さに前進が見られたのは明るい点であるように思う。
さて、次のイングランド戦で何が起こって何が反省され、何が性懲りも無いのか、ジーコのビックリ箱を楽しみに待ちたいところだ。
●採点