監督がジーコとマテウスと両国ともに派手なのに対して、選手は国内組中心というやや地味な顔ぶれながら、ザラエジェルツェグスタジアムは地元の熱心なサポーターが詰め掛けている。日本のスタメンはGK楢崎、DF茶野、田中、坪井、MF三都主、遠藤、福西、西、トップ下が藤田、FWが久保と玉田という3-5-2。
試合は開始直後こそ日本がサイドを中心にした大きい展開を見せるものの、ハンガリーのマークの厳しさと当たりの激しさ、ロングボール攻撃に押し返され、15分ごろにはセットプレイからのセカンドボールをことごとく拾われてDFがゴール前に釘付けにされてしまう。観客の野太い声もハンガリーを後押しする。
20分過ぎからは試合もやや落ち着いて来るのだが、日本は2トップがマークされてしまってオフザボールの動きに連動性が無いために足元へのパスだけになってしまって最後は苦しい体勢でのトラップミスを奪われると言う冴えない攻撃に終始する。しかしハンガリーも激しさはあるのだがボールを奪ってからの攻めにアイデアと精度が無く、互いにセットプレイからしかチャンスが作れない。
前半終了間際には、ようやく日本が攻める時間が来て久保の右足シュートなどの場面が生まれたが、それだけで簡単に得点が奪えるわけもない。そして特筆すべき事は何も無いままに前半が終了。
後半が始まると、両チームともに中盤のスペースが空きはじめて互いにゴール前の場面が増え始める。そして7分、左サイドでの深いところで坪井がファールをしてハンガリーのFK。ニアに蹴られたボールをクトルに合わされてハンガリーが先制する。
16分にはACLの試合後で疲れがある福西と西に代わって三浦と加地を投入する。しかし日本のペースは全く上がらず、23分にはまたもFKからユハースに坪井が高さで完全に負けてヘディングを決められてしまう。しかし、日本も本山を入れたところから少しリズムを取り戻し、ハンガリーにも安心感が出たのかやや疲れが出始める。
そして28分、右サイドでボールを奪ってから前線で平行にパスをつなぎ、最後はファーにいた玉田にボールがつながってGKとの1対1を落ち着いて決める。さらに30分にはまたも右サイドから転げ出たボールがハンガリーCBの間を抜け出た久保がGKを交わして同点に。
その後は互いにノーガードのどつき合いになるが、日本がゴール前でのテクニックに勝る分惜しいチャンスを作る。しかし終了間際のロスタイムに茶野がPA内で相手を軽く腕で倒してしまっていかにもアウェイな判定のPKを決められてしまう。そして試合はそのまま終了。日本は遠征初戦を飾る事が出来なかった。
後半に選手交代からいったんは同点に追い付いたとは言え、どれも相手の足が止まってスペースが出来た後半半ばからの、しかも相手CBの単純なミスからの得点であり、そこまでの共通理解の悪さや足元パスの連続での希望の無さは相変わらずで、相手もさほど強くは無かっただけにとうてい課題が解決できたとは言えない試合だった。
ただ、その中でも3バックに変えたおかげでDFとボランチの間の間延びが抑えられ、いつもほどスカスカ守備を見せられる事も無かったのは良かった点だと言える。しかし次のチェコ戦ではまたもや機能しない4バックになってしまうんだろうが・・・
●採点
ネドベドを始めコラー、ロシツキー、ポボルスキーなど有名選手を揃えた欧州屈指の強豪であるチェコに対してアウェイで戦いを挑む日本という試合。中田と中村を怪我で欠く日本のスタメンはGK楢崎、DF茶野、田中、坪井、MF三都主、小野、稲本、西、トップ下が藤田、FWが久保と玉田という3-5-2。
試合は最初からチェコがペースを握り、ネドベドからポボルスキーへの展開などを中心とした攻撃を繰り出す。しかし、日本もハンガリー戦で安定した守備を見せた3バックが相手のFWをきっちりマークして、それほど危険な場面を作らせない。得点かと思われたシーンでも日本のオフサイドに引っかかってなかなかリズムも作れない。
さらに、チェコは攻撃の勢いに比べて守備のマークが緩く、日本がボールを奪って攻めに出たときに、簡単に久保や玉田にポストをされて、小野の大きくシンプルなパスから三都主がフリーでボールを受けて攻めるような場面を作られてしまう。
そして32分、日本はカウンターから稲本のパスを右サイドで受けた久保がそのままドリブルで持ち込み、チェコDFをフェイントで交わして左足でゴールに叩き込んでしまう。この場面、チェコは久保の利き足を全く警戒しておらず、かなり日本を甘く見ていた事が良く分かる。
その後はチェコも反撃しようとするものの、攻守の切り替えが非常に鈍く、ボールを奪ってはゴール前であまり効き目のないドリブルやパス回しに終始してしまって日本に危険を与えることが出来ない。
後半からはチェコも一気に7人の選手交代を行い、前半とは見違えるような早いチェックを見せ始める。日本は前半は守備専だった西に代えて加地を投入するもチェコのペースは揺るがない。
10分過ぎからは試合は完全にチェコが支配するようになるが、日本は楢崎のスーパーセーブの連発を中心に高い集中力を見せて何とかチェコの波状攻撃を持ちこたえる。
17分には柳沢と遠藤、34分には三浦と福西、本山を投入するが、やはりチェコに傾いた流れを変えるまでにはいかず、日本は防戦一方のまま試合は推移する。そして運も何もかも味方につけたまま、日本は1点差を守りきって貴重なアウェイでの勝利を手に入れた。
この勝利には、久保の左足を知らなかった守備や攻守の切り替えの遅さから分かるように、チェコが完全に日本をなめていた事、コンフェデや先の韓国戦のように相手が攻めてきてスペースをもらうと日本は攻めがとたんに機能する事、ボールを持ち過ぎる傾向のある中田と中村がいなかった事、好調の久保と玉田という2トップと田中誠を中心とした3バックを引き続き使った事、楢崎が当たりまくっていた事など、かなり偶然性が強く働いたことには間違いない。
しかし、結果や内容が詳しく分析されずに、たまたまうまく行ったら相手の出方やこちらのコンディションにかからわずとにかく継続してしまうのがジーコの恐ろしいところで、今回の殊勲を受けても全く安心は出来ないのだが、これで機能しない4バックを捨てて、海外国内にかからわず調子の良い選手を使っていくようになれば、ある程度アジア予選の展望も見えてくるかもしれないとのはかない希望を抱かせてくれる試合だったと言えよう。
これで、インドに負けない限りほぼアジアカップまでの続投が決定的になったわけだが、今回の勝利の要因を正しく分析し、その上でひたすらベストメンバー&欧州組といったこれまでの方針の転換がジーコに可能なのかどうかを注意深く見守る必要はあるだろう。
●採点