2003年12月11日

・東アジア選手権総括とこれからの展望

失点0で準優勝という結果が表すとおりに、実にスッキリしない内容の大会であった。

戦術的に見れば、3バックと4バックを相手の出方によって使い分け、アジア相手とは言え守備という点ではそれなりに機能させる事は出来、久保と福西がようやく代表でもクラブで見せているパフォーマンスを示せたという収穫はあったものの、まだ相変わらず三都主と山田のボール離れが悪く、彼らが個人技で突破した場合を除けば、ほとんど中とのコンビネーションで崩した場面を見る事は出来なかった。特に山田については、4バックにしたときの守備には安心感があるものの、3バックではほとんど良さが見られなかったと言える。

香港戦も、決定力不足ばかりがクローズアップされているが、三都主がサイドを軽々突破していた前半に比べ、後半は石川が登場するまで前半のようなチャンスの量産が出来なかった事も注目されてしかるべきだ。つまり、サイドを生かせずに遅攻の原因を作ってしまった事が最終ラインが不安定な香港相手に1点しか取れなかった遠因とも言え、引いてくる相手が多い1次予選に大きな不安要因を残したと言えるだろう。

もう一つのポイントは冷静さである。大会を通じて守備陣は終始落ち着いた守備を見せていて安心感があったのだが、自身のイエローカードの枚数と審判の性向を見抜けなかった大久保の失態を筆頭に、10人になってからようやく攻撃の狙いがはっきりした韓国戦、サイドからの崩しを徹底できずにマークに苛立った香港戦を見ても、もっと冷静さを持ってチームをコントロール出来ていればと思う場面があまりに多かったように思う。

まあ、外野が何を言おうがミスや怪我や疲労があってもベストメンバーで「あとはまかせた」と丸投げをするのがジーコのやり方なので、選ばれた選手自身がもっと成長して自分たちで対処、修正していくしか方法は無い。海外組は誰かのおかげでベストコンディションが保てず軒並み苦戦に陥っているが、幸い、ご意見番やノワール作家様が何を言おうとJリーグのレベルは上がってきている。ジーコの監督としての成長と選手の成長、それとアジア予選との時間の競争である。最初の1次予選で「はい、時間切れ〜」となってしまわない事を願うばかりである。

2003年12月10日

・東アジア選手権 日本-韓国(0-0)

日本はGK楢崎、DF中澤、宮本、坪井、MF三都主、遠藤、福西、山田、トップ下には怪我を押して小笠原、FWが久保と大久保。対する韓国はキムドフンを中央に左右がキムデイ、アンジョンファンの3トップで来た。

試合は最初から韓国が攻め込んでくるかと思ったら、かなりきっちりと守備を固め、そこからサイドを使った速い攻撃というカウンター指向でやって来た。日本も相手が3トップにしたのを見て、中澤が左SBへとスライドする形の4バックに修正し、相手のサイド攻撃を封じる策に出る。

小笠原にいつものキレと踏ん張りが無く、コンパクトな守備で頼みのサイドも封じられて攻撃の起点が作れなかった日本だが、15分ごろからは三都主や福西のドリブルなどの個人技で中盤を突破してのチャンスを作れるようになる。ところが、何と18分に大久保がシミュレーションを取られて二枚目のイエローで退場してしまう。

そこからは当然韓国が試合を支配するが、以前のようなごり押しの突破が無いのでそれほど怖い攻撃にならない。それでも35分ごろにはハイボールを落としたセカンドボールを拾われて危ないシュートを打たれるものの、何とか耐え切って前半終了。

後半から日本は本山と藤田を中澤と福西に変えて、布陣を4-3-2にして勝負に出る。高さの福西と中澤を下げてかなり黄金指向にして来た日本だが、その分守備のキーポイントが無くなって韓国にゴール前までボールを持っていかれてしまう。しかし韓国のアバウトなミドルシュートで日本は何とか助かる。

23分、日本に初めての決定機が訪れる。右のコーナーからのヘッドがポストに当たり、こぼれ球からの本山のシュートは右わずかに外れてしまう。そこからは、多少韓国も疲れてきたのか日本もパスをつないでカウンターの場面を作れるようになるが、惜しいところでタイミングが合わずに得点出来ない。

日本も終了間際に黒部を投入して最後の攻撃を仕掛けるものの、最後の宮本のヘッドも浮かしてしまい試合終了。日本は開催国の東アジア選手権の優勝を飾る事は出来なかった。

ただ、この試合については日本はかなり良くやったと言える。しかし、動きの悪い小笠原を使い続け、守備で効いていた福西と中澤を下げるなど、後半の韓国がもっとパワープレイで来ていたら一気に崩れる危険もあったと言え、とうてい納得できるジーコ采配とは言えないだろう。

結局は香港戦で点が取れなかった事が第一、そして間接的にはその香港戦で交代が機能しなかった事、この試合の大久保の退場、小笠原の怪我がこの大会を取れなかった原因となってしまい、やはり懸念材料であったジーコの戦略性の欠如が最後まで響いてしまった大会だと言えるだろう。

これからのアジア予選は長く激しい戦いである。その大海原に向かって戦略も羅針盤も持たずに、日本は漕ぎ出そうとしている。ここまでのジーコの1年半は思っていたほどには悪くなかった。今日の采配も以前に比べれば少しは評価できる部分はある。そして、ジーコの方針のおかげで選手は自分で考え、対処する術を身に付け始めている(大久保以外)。そろそろ、私達もジーコに感謝の念を送りつつ、総監督などの采配の実権を持たない立場にお引取りを願うべきではないだろうか。少なくとも、非常時に備えた監督選考だけは協会に進めておいて欲しいのだが。

●採点

  • 楢崎 7 危ないポロリの場面はあったが、数々の危険をセーブした。
  • 中澤 6 空中戦で勝っていただけに残しておくべきではなかったか。
  • 宮本 7 今日はカバーに獅子奮迅の活躍を見せた。
  • 坪井 5.5 数的不利の時は余計にパスは慎重に。 
  • 三都主 6.5 コネコネはあっても今日は貴重な攻撃の繋ぎ役になっていた。守備でも割と奮闘。
  • 遠藤 6 運動量豊富に展開のパスを出していたが、相変わらず軽率なパスも多い。
  • 福西 6 前半は攻守に良く絡んでいた。不運な交代。
  • 山田 5.5 守備は良かったものの、ドリブルで切れ込んだ時以外はパスをひたすら相手にぶつけていた。
  • 小笠原 5.5 明らかに怪我の影響で動きが悪いのに使い続けたのは非常に疑問。
  • 藤田 5.5 良く走っていたがさすがにプレイに切れは無かった。
  • 久保 6 前半は消されていたが、後半は日本の数少ない武器となった。 
  • 大久保 3 イエローは2枚とも厳しいとは言え、アジア審判のレベルを考えれば少し足が触れたぐらいで大げさに倒れたのはいかにもまずい。これを良い教訓にしなければ予選では危なくて使えないだろう。
  • 本山 5 ワールドユースで見せたあのドリブルのキレはどこに行ってしまったのだろうか。

2003年12月07日

・東アジア選手権 日本-香港(1-0)

日本は中国戦から中澤に代わって茂庭が入ったベストメンバー。香港は韓国戦で得点を決めたナイジェリアから帰化したローレンスをFWの軸としたメンバー。

試合は日本が徹底的に支配し、三都主のサイドを中心にチャンスを作るものの、大久保や久保が絶好のチャンスに決められず、試合はやや嫌なムードに。香港も、時間帯によっては前に出てくる事もあり、なかなか出番の無い守備陣の集中力の欠けたプレイから危ない場面を作る始末。

しかしそんな悪いリズムを三都主が個人技で崩す。37分に左サイドにスルスルと抜けた三都主に小笠原が股抜きのパス、相手GKが三都主の足を払ってしまいPK。これを三都主が落ち着いて決めて日本はようやく先制点を奪う。

後半になると香港の守備が激しくなって、日本はなかなか自由にプレイさせてもらえなくなり、小笠原の怪我やイライラからボール離れが悪くなってリズムが作れなくなる。香港も守備に走り回りながらもなかなかスタミナが落ちてくれない。

20分過ぎに遠藤に代えて山田卓、小笠原に代えて奥を投入するも、山田卓は福西と動きがかぶる場面が多く、それで空いたスペースを相手に使われてピンチになる場面も出始める。ジーコにはサイドを使う狙いがあったのだが、日本にも疲労が出てしまって石川の投入もサイド攻撃を活性化させる事は出来ず、決定的なチャンスはあったもののクロスバーと香港ディフェンスの粘りに防がれてそのまま試合は終了。

確実な勝利を狙ってベストメンバーを組んだにもかからわず得点は1点のみ、小笠原が怪我で下がってから初出場組を出したものの、コンビネーションも決まり事も無い状態では機能しろと言っても無理な話で、決定力の無さはジーコの責任ではないにせよ、悪い流れを選手交代で引き戻せないベストメンバー指向の欠点が浮き彫りになってしまった試合と言えるだろう。

これで疲労と怪我人を抱えたまま最終戦を迎えるはめになったわけだが、勝ち点は韓国と並んでいるものの、総得点でビハインドを負ってしまい、優勝は韓国戦での勝利が必要になってしまった。コンフェデに続いて見せ付けられたこの戦略性の欠如は、たとえ韓国に勝ったとしても、長いアジア予選を戦う上でジーコジャパンの大きな不安点であり続けるのは覚悟しておいた方が良いかもしれない。

●採点

  • 楢崎 6 ほとんど仕事らしい仕事無し
  • 茂庭 5.5 相手が1トップだったのでもっとオーバーラップしても良かった。消極的。
  • 宮本 6 セットプレイでマークを外した場面があったもののまずまず。
  • 坪井 5.5 一試合に一度は危ないミスをやるのを無くして欲しい。
  • 三都主 6.5 今日の攻撃の核だったが、弱い相手に抜けるものだから途中から変に調子に乗ってしまった。
  • 遠藤 5.5 やはりたまにやってしまう弱いクサビパスは危険の元。
  • 福西 6 高さではまず負けていなかった。
  • 山田卓 5.5 試合になかなか入る事が出来なかった。
  • 山田 5 上がれる相手なのに上がらず、上がっても判断が遅すぎる。
  • 石川 5.5 マークは何とか突破するものの、クロスの精度があまり無かった。
  • 小笠原 6 良いプレイと軽率なプレイと。マークに苛立っていた。
  • 奥 5.5 ミドル1本以外にあまり大きな変化を与える事が出来なかった。
  • 久保 6 彼だけには使える「今日は彼の日じゃなかった」。
  • 大久保 5 最初のチャンスを外してからはひたすら空回りしていた。セレッソでもおなじみの事だが。

2003年12月4日

・東アジア選手権 日本-中国(2-0)

日本は予想通り、GK楢崎、DF中澤、宮本、坪井、MF三都主、遠藤、福西、山田、トップ下小笠原、FW大久保、久保の3-4-1-2。中国の方も3バックのようだ。

いきなり開始5分で試合は動く。小笠原のFKがミスになって相手選手に当たるものの、それを再びタックルで奪った小笠原が浮き球のパスを前方へ。そこに抜け出した久保がGKにボールをキャッチされる寸前に拾って押し込み日本先制。

20分ごろまでは日本のペースで試合は進むものの、中国が小笠原にマンマークを付けてから試合は膠着する。FWが厳しくマークされてポストプレイが出来ず、小笠原もボールを拾えないので中盤からのパスの出しどころが無くなってゆっくりサイドに出すしかなく、相手にボールを奪われてはプレスが連動していないのでラインがずるずる下がって中盤にスペースが出来、相手にそこを使われるという展開になる。それでも35分に大久保がGKと1対1になるものの決められずに前半終了。

後半になっても、しばらくは日本の中盤でのもたつきの目立つ展開になっていたのだが、15分過ぎから中国の運動量が落ち、中盤のパスから相手DFの裏にFWが抜け出す狙いがうまくはまりはじめ、久保や大久保が絶好のシュートチャンスを迎えるもののポストとバーに当たって決まらない。

ようやく35分に、中盤でボールを奪って本山が裏に抜けた久保にパス、GKが前に出たところをうまくコースに転がして2点目を決める。あとは危険なミスもあったものの、日本が試合をコントロールして終了。まずは日本は幸先の良い勝利を決めた。

まあ今日の試合を見てまず思ったのは、「アジアのレベルの試合だな」という事だった。中国は身体的には強いものの、トラップは雑でFWにゴール前での狡猾さは無く、日本にミスが無かったわけじゃないがそれが失点に即つながるような恐怖を感じなかったのは確かであり、また戦術的にも整理されてなくて、日本の弱点であるスピードに乗った攻撃をする事が出来ていなかったという点は割り引く必要があるだろう。

日本も、前半グズグズで後半にようやく試合を修正するというスロースターターぶりは相変わらずで、久保×2コンビを始めとして攻撃陣も決して息が合っているとは言えなかった。それでも急造とは言え3バックがまずまず機能し、今絶好調の久保の得点で勝てたことは、今まで出場機会に恵まれなかった国内組の自信になったのは良い点だった。まだ韓国戦を見てみない事には真価は分からないが、この試合がジーコの選手層の幅を広げようという意識のきっかけになる事を願いたい。

●採点

  • 楢崎 6 失点の危険を感じたピンチは一度だけだった。
  • 中澤 6.5 終始落ち着いて、中国に十分高さで対抗していた。
  • 宮本 6 3バックのラインコントロールは良く統率していたものの、1対1では危ない場面も。
  • 坪井 6 山田とのコンビはもう一つだったが、まずまず無難な出来。
  • 山田 5.5 対面のケアに追われて攻撃面であまり存在感を出せず。
  • 遠藤 6 前半はパスミスが多かったものの、後半は持ち直して広いスペースで攻撃を組み立てた。
  • 福西 6 やはり後半に生き返って相手の攻撃の第一の防波堤になっていた。
  • 三都主 5.5 あまり守備する必要が無かったが、それでもクロス以外は攻撃の役に立っていない。
  • 小笠原 6.5 相手のマークに苦しんだが、アシストを含め攻守に動き回る。まるで中田だ。
  • 久保 7 2ゴールは文句無し。身体能力とテクニックは常に中国DFの脅威であり続けた。
  • 大久保 5.5 3度の決定的チャンスを無駄にする。今日は彼の日ではなかった・・・と言いたいが代表ではまだ彼の日は無い。
  • 本山 6 アシストを記録したがスペースをもっと生かした動きが出来たはずだ。

サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」