2002年12月11日

・Derby Giapponese

注目の日本人ダービーだったが、結果だけ見ると大方の予想通りパルマの完勝。だが、前半はレッジーナが非常に良くてパルマは苦しめられた。あれだけ前線が活発に動いて守備でも誰も自由にしないマークをやってると、どこもそう簡単には得点できない。中村もマークが緩かったので生き生きしていた。ただ、W杯の韓国以外は(笑)どんなチームでもあのペースを維持できないのも確かで、後半に中村を封じてうまくペースを自分の方に持っていったパルマがうまかったと言うことだろう。パルマは3TOPが好調なのに加え、特に最近はSBが安定してきて守備の集散ペースが最後まで崩れなくなってきたのが大きい。子供だったパルマも、ちょっと大人のチームになってきたのかも。

レッジーナは前半こそアグレッシブな守備と中村の技術でパルマを苦しめたが、ラインが下がったままになった後半は4−5−1の弱点であるSBの前のスペースを使われるようになって2失点。疲れからだと思うが、パスの精度もガタッと落ちた。やはり柳沢2号と中山3号が決めるべき時に決められなかったのが痛い。とまあいつもの話なんだが。移籍解禁の1月まではとにかく辛抱だな。

中村も前半は素晴らしかったが、後半はパルマが対策をとって厳しくマークに付くようになってから危ない地点でボールを奪われるようになり、そのうち完全に消えてしまったので交代。それに対して中田は、相手に勢いがある前半は守備重視で後半に得点してからはボールを動かして落ち着きとリズムを作るようにしていた。ちょっと中に入りすぎる事が多くて得点に直結する働きは無かったものの、常に守備のために戻りつつカウンターでは前線への飛び出しを忘れずと安定した動きを見せ、日本人対決はピークでは中村、試合を通してでは若干ではあるが中田の判定勝ちであったと言える。

しかし、Jや代表戦だとチーム全体を、海外組の試合では一人の選手中心で見るクセがついていたので、同時に二人注目するのに凄く疲れてしまったよ。まだ2試合見た方がマシだったかも。

・コネの力学

中村の出来についてはカフェのミツオミーノさんとフリータイプ氏の分析が秀逸だが、おそらく前半と後半とで全く印象が違ったせいがあるからだろうと思うが、その実効性についての見解が分かれているのが面白い。では何故前半の中村は怖かったのだろうか。それは、中村のコネが常に前向きのベクトルを持っていたせいだと思っている。

ここでは一貫して、現代サッカーではゴール前にいかに数的優位の状況もしくはフリーの人間を作るかが重要であるかを唱えているが、コネが前向きであればマークに付いた人間の代わりに前にいる別の人間がチェックに行かなければならず、またDFのラインも下がりながらの応対が必要になってくる。つまり局地的には数的有利、ゴール前ではフリーの状況が生まれやすくなる。しかし、後半にサイド奥でコネた場面のように1タッチ目で交わせずにその場だけでコネても、局地的にはどんどん不利になるしDFも動かなくて済んでしまい、結果的に実効性が著しく落ちるのだ。

パルマではムトゥとアドリアーノがコネ性向の強い選手だが、常に前向きのベクトルを持っている上に最近では球離れの判断が身についてきて(昨日は持ちすぎが目立ったが・・・)、そこがパルマの結果と内容に如実に表れている。また、高原が得点王になったのは勝負の意識が強くなったからだと言われているが、個人的には常に前向きを意識しつつ無理な時は簡単にパスを回す判断が出来るようになってきた事も原因ではないかと思っている。要はコネも使い分けなのだ。

しかし中村にとって、前向きの競り合いやかわし方が見られるようになってきたのは、逃げパスかその場コネが多いJサッカーから卒業しつつある証だと言える。黒魔術師レベル5ぐらいにはなったかもしれない。と言っても周りの動きや戦術の助けがレッジーナにはまだ足りないのは確かだが、頑張って判断を高めていって欲しいものだ。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」