ルーマニアはキブ、ムトゥの両大黒柱を中心に若手中心に構成。日本は川口が先発、DFが三都主、中澤、坪井、山田、MFが中村、小野、稲本、中田、FWが柳沢と高原の2トップ。
日本は最初こそ丁寧にパスをつないで相手のプレッシャーを交わしていたのだが、ルーマニアが高いラインからSBの攻撃参加を見せ始めると、山田と三都主が引いて中村が全く攻撃にからめなくなり、日本は小野や中田のスルーパスしか攻撃の形が無くなってしまう。そして15分に、右サイドでのムトゥのドリブルに坪井が競るものの最後に足を出せず、そして川口がニアを破られるという二重のミスを犯して失点してしまう。
その後も日本は誰がどうマークに付くのか混乱し、中村や中田が最終ラインに加わってまで守備をするような場面が目立ち、組織で守っているというよりは何とか人で守っているという展開が続く。ようやく30分過ぎになってからサイドチェンジを使って山田や三都主が上がる場面が出てくるのだが、前線との息が合わずに点につながらない。
後半になると少しマークの仕方がはっきりし、SBと中村が高い位置にポジショニング出来るようになって、日本のリズムが出て来る。そして後半13分に中田と中村のパス交換から中田が浮き球のパスをDFラインの裏に出し、そこに飛び出した柳沢が完璧に決めて日本は同点に。
その後も中盤のプレスが落ちたルーマニア相手に中田の飛び出しなどからチャンスを作るが惜しくも決められない。35分ごろからは個人で守っていたために走りすぎた日本も疲労が出てミスが多くなり、度々危ないシーンを作られるが何とか守りきって試合終了。
日本はアウェイで引き分けに持ち込んだのは良かったが、前半のおたおたぶりは相変わらずで、それが後半のペースダウンにつながり、SBのセットについてはチュニジア戦コンビより特に優れているわけでなく、さらに中盤の選手の疲労の色が濃くなっても選手交代は大久保のみと、もっと勝つために良い手段があったのではないかと思う点が多く、あまりすっきりしない試合だったのは確かである。
東アジア選手権に中田は出場するそうだが、一度中田抜きでどこまで自分達で修正できるのか、その時にジーコが的確な手を打てるのかを見てみないと、何が起こるかわからない長い予選の戦いを安心して向かえることは出来ないように思う。
●採点
日本の先発はGK楢崎、DF加地、中澤、茂庭、三浦、MF小野、稲本、中田、中村、FW鈴木、柳沢。チュニジアにはベンアシュール、トラベルシといったおなじみの面子が見える。
チュニジア監督は2002年W杯にフランスを率いたロジェ・ルメールだが、さすがにチュニジアはW杯の時とは全く違うチームに変貌していた。
まず非常にラインが高くて中盤の組織的なプレスが強い。そして、ボールを奪った後はダイレクトのパス回しで早めにサイドにボールを出し、そこからトラベルシ、モハズリ、アヤリといったスピードのある選手を生かして日本のサイドを完全に殺してしまう。
日本はサイドが上がれない上にDFラインも低く、その分小野や稲本が最終ラインに吸収され、中田と中村も守備に回らざるを得ないためにボールの預けどころが無く、茂庭と中澤のフィードが怪しい事もあって、危ない位置でボールを奪われる場面が目立つ。中盤の選手もそれぞれ孤立しているためにフルハムで短くパスを散らす役に慣れている稲本のパスミスが多くなってしまってもうグダグダ。
しかしチュニジアにはシュートを打たれまくり、これはいったいどうするんだろうと思った前半39分、DFからダイレクトに前に蹴られたボールが、チュニジアのCBのミスもあって裏に抜けた柳沢に渡り、そこから柳沢らしくない落ち着いたシュートで先制点を決める。
後半になるとチュニジアの中盤のモビリティが落ちて、日本も先制点を取った事もあって全体的にやや引き気味で、それがかえってコンパクトさを保つ効果になって、日本はあまり守備であたふたする場面が無くなって来る。ボランチでボールがさばけるようになったために加地の上がりも度々見られるようになって、カウンターの場面をいくつか作る事も出来た。そして焦るチュニジアに対して日本はきっちり守りきって貴重なアウェイ戦の勝利をもぎ取った。
試合全体としては、日本の出来はあまり誉められたものではなく、特に前半は攻守両面でひどいものだった。やはりこのチームは中盤が黄金であるだけにサイドが上がる機会が無いとなかなかチャンスが作れない。そういう意味で加地は良かったが三浦は完全に消えてしまっていて、バランスの良い攻撃というものが最後まで見られなかった。また、今日は相手の決定力不足と、背の低いチュニジア人選手に対して中澤が制空権を制圧していたためにボロは出なかったが、最終ラインでのマークが緩い場面もあってセットプレイから決定的なチャンスを作られるなど、まだまだ不安は大きいと言える。
ともかく、今日の試合は先制点の幸運が全てを好転させたという面が大きく、多分に結果オーライであってとても内容の質を評価できる試合ではなかった。しかし、アウェイ1試合目での勝利がチームを落ち着かせた事は間違いなく、今日の課題を消化し、出来が良かった中澤と加地を今後どう使っていくのかという点でも、次のルーマニア戦で注目していきたいところである。
●採点