直前の試合でUAEがレバノンに引き分けているだけに、バーレーンに勝てば大きく五輪出場に前進する一戦。日本は体調不良の選手が多くてメンバーを入れ替えざるを得ない状況。スタメンはGK林、DFは那須、闘莉王、茂庭、MF根本、今野、鈴木、徳永、トップ下前田、2トップは高松と田中という布陣。
バーレーンは試合開始直後こそ高い位置からプレスをかけようとするが、すぐにべったり引いて日本にスペースを与えないようにする。しかも、引きながらもバイタルエリアをきっちり埋めているのでなかなか日本はパスを回せない。攻めに困ってDFからのロングボールを増やそうとするのだが、バーレーンの高さに高松が競り負けてセカンドボールが良い形で拾えない。
バーレーンは、攻撃ではとにかくロングボールを出してFW2人を走らせ、日本のDFのクリアを攻めあがった中盤の選手が拾うという中東らしい戦い方で、それほど日本にとって怖さと言うものは無いし、かえって相手が攻めあがった時に中盤にスペースが出来るので、ボールを奪ってからクロスカウンターで早く攻めればチャンスは作れるはずなのだが、マイボールにしてから中盤の押し上げが遅く、FWのポストプレイからボールが戻ってきたときに攻撃が停滞してしまう。
さらに悪い事に、26分に闘莉王が怪我をして阿部と交代、阿部がそのままCBの中央に。阿部は久々の出場というせいもあるのか闘莉王よりフォアチェックの位置が低く、徐々にバーレーンが前線でキープできる場面が増えるものの、その分バーレーンの守備にも穴が出来て田中などがチャンスを作るがシュートが正面を突くなど得点できずに前半終了。
後半開始直後は、日本も高い位置からプレスをかけてセカンドボールを拾うのだが、最後のところでクロスが合わなかったりトラップをミスしたりしてやはり日本は得点出来ない。しかしその後も日本のペースは続き、いつ得点が入るかなと思った26分、相手GKのフィードに根本がかぶり、さらに裏を取られた那須が相手選手を押し倒してしまいFK。FKは一旦は壁に当たったものの、ハイボールのこぼれ球をを押し込まれてしまいバーレーンに先制を許してしまう。日本は完全にボールウォッチャーになってしまっていた。
ここで日本は根本に代えて石川を左サイド、鈴木に代えて松井を入れるなどするが状況は変えられず、日本は得失点差でまだ首位とは言え、あと2戦絶対に負けられないという苦境に陥る痛い痛い敗戦を喫してしまった。
今日の試合は典型的な「負ける時はこんなもの」という試合であったが、高さで勝るバーレーンには高松ではポスト役として全く効き目が無かった事、前田と前線との息が終始合ってなかった事、左の根本で攻撃、右の徳永で守備と言うサイド戦略が裏目に出た事、闘莉王と那須が怪我をしても代わりがいない事など、平山と闘莉王の直前の加入でかろうじて形になった山本ジャパンの要を失うと、以前のダメダメチームに戻ると言う当たり前の結果を改めて見せ付けられた試合だった。次は怪我や体調不良の選手がどこまで復活するか分からないが、山本監督がこの試合のように「ベストでないなら過去のやり方で」といった方法で行こうとすれば相当危険な事になって来るだろう。大久保のトップ下や阿部のボランチ起用など、思い切った起用でチームのスタイルをガラリと変える冒険を期待したい。
注)採点は皆ダメすぎるので省略(苦笑)。
直前の試合でバーレーンがUAEを2-0で破り、勝つしかなくなった日本は何と超攻撃的布陣でスタメンを構成して来た。GK林、DF茂庭、阿部、近藤、MFが今野1ボランチで上がり目に松井と前田、サイドが森崎と石川、そしてFWが平山と大久保である。
試合開始直後から日本は高い位置からプレスをかけてレバノンを圧倒する。しかしレバノンもゴール前に人を固めて競り合いも負けずに対抗し、10分過ぎにはペースが一段落してしまう。これで今日も日本は苦しむかなと思われたのだが、14分に大久保のドリブルが相手のファールを誘い、ゴール前やや左からのFKを獲得。これを阿部が見事にゴール左隅に決めて、日本は喉から手が出るほど欲しかった先制点を手に入れる。
しかし、先制点を取って安心気分が広がったのか、ここから日本はボールの動きがめっきり停滞してしまい、安易なバックラインでのパス回しを相手に奪われそうになるなど危険な時間帯を迎えてしまう。特にボランチやDFからサイドへのパス出しが遅く、石川の攻撃力をほとんど生かすことが出来ない。また、前田と松井がサイドの前目にいるために森崎などがオーバーラップするスペースが生まれず、どうにも糞詰まりな展開に終始してしまう。
それでも30分ごろからは相手のマークも甘くなって石川の突破や平山がボールを受けられる場面が増えるのだが、最後の部分の判断のタイミングが合わずに追加点を奪えないまま前半終了。
後半になると日本も少し積極性が出始め、セカンドボールからサイドに展開し、クロスやセットプレイなどのチャンスを得るのだがやはりなかなか得点出来ない。こうなると罠が待っているのがサッカーと言うもので、23分に何でも無いロングボールを阿部と近藤がダブルでかぶってアトウィにシュートを決められてしまう。
しかし日本を救ったのは警告男大久保だった。失点直後に松井に代えて田中を入れたわずか1分後、右からの前田のクロスを裏に抜け出た大久保がヘッドを決めて再び1点差に。そしてレバノンがややばてた35分過ぎからは、立て続けにCKを獲得するがフリーのヘディングを決められないなど日本も勝負を決められない。案の定40分からは日本の中盤が空いたところでパスミスが続いて危ない場面を作るものの、何とか守りきって試合終了。
日本は最低限のノルマである勝利を手にする事が出来たとは言え、バーレーンとの得失点差は4であり、バーレーンがレバノンに大勝すればどうなるか分からない危険性をはらんだまま最終戦を迎える事になってしまった。この試合の戦い方も、今野が奮闘していたとは言え前田と松井の併用が効果的であったとは言えず、選手交代も田中を入れた後でも最後まで前田を残すなど、結局ボランチからの広い配球でサイドを生かす戦い方が出来なかった事も不満が残る。だいたい今日活躍した大久保を今まで何で使わなかったのか、途中から明らかにペースが落ちた平山を何故交代枠が余っているのに引っ張ったのか。選手は頑張ったとは思うが選手起用次第でもっとましな試合が出来たのではないかという疑問は拭えない。
とりあえず、最終戦のバーレーンの展開次第で日本の戦い方が変わってくるわけで、短い時間ではあるが状況に応じたゲームプランを多数準備してもらいたいものである。
●採点
アテネを目指す日本にとって泣いても笑ってもこれが最後の試合。日本はGK林、DF那須、阿部、茂庭、MF森崎、今野、鈴木、徳永、FWが田中、平山、大久保という3トップで挑む。
試合が始まるといつも通り日本は前からプレスをかけてUAEを追い込む。この試合のUAEは3バックの布陣を引いているため両サイドにスペースが出来ているので、左サイドを田中が使って突破する場面が目立つ。そして何度かセットプレイを獲得するのだが、頼みの阿部が濡れたピッチに影響されたのかミスキックが続いてうまく行かない。
しかし12分に左サイドの深いところで再び田中がドリブル、それを止められてゲットした阿部のFKが今度はフリーの那須にバッチリと合って日本は幸先の良い得点を取る。当然UAEは攻めに出てくるのだが、その切り替えがうまく行かないのかバイタルエリアにスペースを作ってしまい、そこで平山がボールを受けてカウンターを仕掛ける場面が増えて追加点のチャンスが出来たのだが、セットプレイから平山が落としたボールを田中が決めたように見えたが大久保の飛び出しが早くてオフサイドになるなど、日本もチャンスになかなか決めきれない。
その後は日本も徐々にペースが落ちて、バーレーンもレバノン相手に先制してこれはどうなるか分からないなと思われた40分、左からの阿部のミスキック気味の低いCKが流れ、そこに飛び込んだ大久保が落ち着いて決めて日本はいい時間帯に2点目を決めて前半終了。
後半開始早々の2分、日本は右からの森崎のFKのこぼれ球を大久保がシュート、これが一旦はクロスバーに当たったものの、跳ね返りを再び大久保が蹴りこんで、決定的な追加点を奪う。さらに11分には大久保とからんで倒れたマタルが少し気の毒な報復行為を取られて一発退場。これでほとんど試合は決まってしまった。
その後は日本がボールをキープして攻めるものの攻めがやや個人技に偏って雑になるが、UAEもPA外まではボールを運ぶものの、そこからの攻めに迫力が無くて全く危険を感じさせない。そしてバーレーンもレバノンに追いつかれ、日本は勝ち点2の差をつけて、苦しんで苦しんで苦しみぬいた最終予選を無事首位で勝ち抜き、アテネ行きの切符を手に入れた。
今日の勝因としては、ピッチが雨に濡れて慣れてないUAEの選手が戸惑っていた事、日本の3トップに対して何故かUAEが3バックを敷いて来てサイドからチャンスを作れた事、ようやくホーム寄りの審判になってくれた事。そして何より、この世代では抜けている阿部のセットプレイと大久保の個人技、田中のスピードがようやく共存できた事に尽きるように思う。
その意味では、あくまで結果論ではあるけれども、怪我人や体調不良の選手が出てしまって最終予選直前でようやく固まったチームが本番で作れず、妙な選手起用や采配によって勝ち点を落とし続けたものの何とか首位をキープし、最後の最後になってようやく日本の最適の形が間に合って勝ち抜くことが出来た山本監督は、やはり強い悪運の持ち主であったと感心すると同時に、2年間の間に青木リベロとか大久保1トップなどの面白采配をせずに、チーム作りをもう少ししっかりやっていればここまで苦しまずに勝ち抜けたはずという思いも残るのは確かだ。
今後は、相手のプレスが強いときに生きる松井のトップ下や相手のサイドが空いている時の3トップといった、このシリーズで見つけられた有効なチームバランスを下手にいじることなく、OAの選手を入れてさらにバリエーションを増やし、弱点を補うチーム作りをお願いしたいものである。
とにかく、出場おめでとう、ニッポン!
●採点