皆さんご存知のように、今年のJ1第1ステージは横浜Fマリノスが磐田、市原の上位3強による混戦を制して見事に優勝を飾った。それとは対照的に、去年は上位だったガンバは12位に沈み、鹿島も終盤失速して結局8位と失望の結果に終わってしまった。他に上位を見るとFC東京やセレッソといった攻撃的な戦法をチームカラーにしたところがランクインしている。
それとは対照的に、途中まで上位に付けていた名古屋と鹿島については、名古屋は戦術的に整備された堅い守備を作り上げたが最後まで前線の選手頼みの攻撃パターンしか持てず、鹿島は守備の安定感の無さから次第に攻撃のバランスまで崩していってしまった。
この結果を見れば、第1ステージにおいては「攻撃力」という言葉がキーワードになったと言える。それはもちろん、選手層の厚さや優れたFWの有無によって大きく左右される点ではあるが、戦術的に見た場合、今年は特にサイド攻撃の優劣がチーム成績に表れたように思う。
FC東京はアマラオの安定したポストプレイから石川、阿部と言ったスピードある若手がサイドのスペースをうまく生かし、磐田は西の突破力に加えて名波や藤田のポジションチェンジを生かしたワイドな攻撃を見せ、市原は精度に難はあるものの運動量と展開のスピードでサイド攻撃の機会を量産する事で厚みのある攻撃を実現していた。優勝したFマリノスは、それに加えてMFの奥や佐藤だけでなく、ドゥトラやユサンチョルといったSBにも攻撃力の高い人材を揃え、二の矢三の矢が放てる厚みのあるサイド攻撃の展開が可能だった事が他のチームを大きく凌駕していた点であったように思う。
ここ数年スペインを始めとする4-2-3-1流行りに見られるように、世界的にもサイド攻撃を重視した戦術が台頭してきているが、このJ1の内容や結果を見ると、ただ戦術的にサイド重視の布陣を敷く事だけではなく、人材や訓練、トータルでのコンパクトネスといった「具体策」をどれだけ実装しているかという点が成績に反映されたのは間違いないだろう。
こと日本においては、監督の采配や戦術の形ばかりが注目されてしまう傾向が強いが、監督の意図するサッカーをするための下準備こそが最も大事な点であることを修羅場を経験したオシム氏や岡ちゃんは身に染みて分かっていたはずである。そういう意味でも、ただ単に経験があって代表経験の多い選手がいる事だけではなく、いかに勝つためのプランを準備し実行するかと言った、監督やチームのプロデュース能力が問われる時代になって来たと言えるのかもしれない。ただ単に悪かった選手を取り替えて練習しさえすれば巻き返せると思っているようなフロントや監督のチームでは、もはやJで勝ち抜くことは難しい。
開幕がすぐ2週間後に迫っている第2ステージの展望であるが、やはり地力から言って第1ステージ上位3チームに加え、ヴェルディ時代に選手から評価が高かったネルシーニョを招聘した名古屋に、例年第2ステージには強さを見せる鹿島あたりが加わる展開になるだろうが、シーズンが短い事に加えて精神的なタフさがまだ弱い若手選手が多い市原の場合、ガンバや京都のようにリズムが悪くなると一気に崩れてしまう可能性も有り、オシム監督にとっても真価が問われるステージになるだろう。
残留争いという点では、狂いっぱなしだった歯車が噛み合う兆しを見せてきた京都の巻き返しと、選手層的にかなり苦しい大分と仙台がどういった補強を施してくるのかに注目である。特に今年は、残留ラインがかなり高くなる可能性が高く、第1ステージ中位につけたチームにとってもまだまだ安心できない状況は続くだろう。