2003年5月26日

・02/03シーズン海外組通信簿 イングランド・ドイツ・ベルギー編

※点数は5点満点


●稲本/フルハム(イングランド) 2.5

W杯での活躍後にアーセナルからフルハムに移籍、インタートトやUEFAカップでゴールを決めるなど素晴らしいスタートダッシュを見せるも、徐々にプレミアの速い流れについていけなくなり、本来のCMFで使われないという不運もあって監督の構想外になってしまう。来期はフルハムに残留が決定したが、レンタル契約のままである。チームもまた、インタートト出場チームに付き物の秋からのパフォーマンス低下に苦しみ、かろうじてプレミア残留を果たしたものの監督解任と言う冴えないシーズンに終わってしまった。

フィジカルもパワーもテクニックも兼ね備えサッカーセンスについてはおそらく現在の海外組ではもっともポテンシャルが高いと思われるのだが、それがレギュラーの座を勝ち取れないとは極めて残念な事である。

彼の問題点は、とにかく「頭」。サッカーは90分間常に頭を働かせて、ボールが無い時でも攻守の流れを予測したポジショニングをしないといけないのだが、どこかで東本氏が同じ趣旨の事を書いていたと思うが、彼のプレイを見ているとチームとしての約束事や要求されるプレイに従っていると言うよりは、自分の感覚だけで動いているように見える。また、帰国時の映像やスーパーサッカーのインタビュー映像を見てもシーズン後半で普通ならばげっそりしていてもおかしくないはずなのに顎に肉が目立ったりして、自己管理も出来ていないように見える。

もちろんプロとしては中田のようにほっといても自分で全てお膳立て出来る人間がベストなのだろうが、プロとして本当に大事なのは現状を把握して必要な対策を施す、つまり自分に出来ない事があるのならばそれを補うための周囲の環境を整え、トータルで過不足無いように仕上げる事である。コールマン新監督は翌シーズンに備えて肉体改造を施すと宣言しているようだが、本人の自覚無しでは無理な話だろう。

とにかく、代表戦を除けば丸二年満足に試合に出ていない環境にはまってしまっているのは彼の年齢から考えても問題であると言わざるを得ない。来期は本当の正念場と肝に銘じて、環境から何から一から作り直す気持ちで行ってもらいたいものだ。

 

●戸田/トットナム・ホットスパー(イングランド) 2.5

今期の出場が4試合と、トットナムというプレミアの中でも中位に位置するチームにJから移籍して半年の成果としてはまずまずチャンスをもらえた方だと言える。しかし出場した試合の中で目立った活躍が出来ず、首脳陣に対するアピールとしてはほとんど印象が無かったと思われる。まだまだフィジカルや判断のスピードのレベルが足りない。

しかし、彼自身のテクニックは黄金の4人ほどのものは持っていないハンデはあるが、ザネッティやガットゥーゾなどセンスがあまり無くても高いレベルで活躍している選手はたくさんいる。もちろん、まだまだ彼らの試合を読む目や運動量、フィジカルには遠く及ばないが、これらは後天的な要素でありこれからの努力次第で追いつく事は不可能ではない。

幸いにしてあと半年は契約が残っている。オフ返上で鍛えると本人が言っているように、自分の課題は理解していると思うので頑張って欲しい。

 

●川口/ポーツマス(イングランド) -

試合に出ていないので採点無し。

酷な事を言うようだが、クラブからは完全に不要な存在とされてしまった。代表でのウルグアイ戦のミスを見ても、実戦感覚の欠如はかなり深刻である。楢崎がますます安定感を増している現在、代表正守護神の座も既に遠いものと化してしまっている。

彼の人生は彼自身が決める事であるから、我々がとやかく言うべきではないが、代表に対する執着があるならそろそろイングランドはあきらめたほうが良いだろう。

 

●鈴木/ゲンク(ベルギー) 1.5

ベルギー戦での思わぬ大活躍が目を引き、スポンサーのバックアップもあってゲンクにもろ手を上げて迎えられるも、ダガノ、ソンクといったビッグリーグ並の実力を持ったFWがいるために不慣れな右SHというポジションにコンバートさたものの当然実力を出せず、ごくたまに与えられたFWとしての出場でも決定的なチャンスに外してしまうなど、結果を残す事が出来ずに残念ながら放出決定。チームもこれで何故去年優勝できたのかというぐらいに守備がボロボロでUEFA杯出場権すら取れずいいところ無しに終わってしまった。

彼自身、決して点取り屋でないのを分かっていて「助っ人」として挑戦したのだから最初からあまり勝ち目の無い挑戦であり、まあこの結果は仕方ないと言える。しかし、同じくベネチアで成功できなかった名波が日本代表に力をもたらしたように、海外のクラブで苦労した経験というのは日本にとって決して無駄にはならないはず。それを鹿島や代表の若手に生かしてもらいたいものである。

 

●高原/ハンブルガーSV(ドイツ) 4

フィットが難しい冬の移籍だったが、少ない出場時間で3得点を挙げ、ロメオ、バルバレスに次ぐ第3のFWとしての地位を確立したのは立派である。チームもUEFAカップ出場権を獲得し、チームメイトやサポーターとも良好な関係を築いており、今のところ移籍に関して失敗と言える要素は無い。

ただ、彼の今のメインの役割としては運動量のあるFWとして守備力を買われて左ウイングやトップ下として使われているだけに過ぎず、さほど身体能力的に売りが無い彼の場合、本来やるべき仕事は今のロメオの役割であるはず。そう考えると、ポストプレイにしてもDFとの競り合いにしてもフィジカルで負ける事がまだまだ多く、フィジカル攻撃を無効化するスキルもロメオに比べれば見劣りは否めず、FWとして先発を安心して任せられるほどの信頼は得ていない。

チームの来期の構想はまだ当然不明だが、マハダビキアが残留するのであれば今期同様の3トップになる事は間違いなく、UEFAカップとのターンオーバーで先発となる事はあるかもしれないが、基本的には控えスタートのままであろう。年齢的に問題を抱えるバルバレスやビッグクラブへのステップアップの可能性があるロメオがいざ不在となった時が本当の勝負である。それまでに少ない出場時間でどれだけ結果を出せるかが重要だろう。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」