2003年4月6日

cover

「6月の熱い日々--サポーターズアイ」

ビバ!サッカー研究会著 中央公論事業出版

サッカーマガジンで「ビバ!サッカー」というコラム連載中の牛木素吉郎先生が主催する、日本テレビ文化センター北千住で行われている「ビバ!サッカー講座」の受講生の人たちによる、2002年W杯での出来事、感想、考察などをまとめた本である。

内容については、サッカーライターばりの美文ありの、居酒屋風漫談ありのまさにサッカー掲示板的ごった煮状態なのだが、面白いのはこういう本の体裁になっているものを読むと、W杯当時のネットの掲示板の書き込みを読んでいる時より、ずっと過去の懐かしい出来事のように思えてしまう事である。

読み終わった後に「こういう感覚は、確か今までに感じた事があるよな」と思って自分の中を探っていたのだが、数日経ってふと気がついた。「これって、高校やなんかの卒業文集を読んだ時の感覚じゃなかろうか」と。

もちろん、この本に寄稿された方は高校生とは比べ物にならない立派な日本語を書かれているわけだし、私と顔見知りの元クラスメートというわけでもない。しかし、そこに書かれている文章から感じるものは、同じ時間を共有した仲間が書いたものとしか思えないのである。

つまり、2002年W杯とは、世界中のサッカーファンが参加した、文化祭であり体育祭であり、はたまた(開催地への)修学旅行だったと言えるのだろう。そう考えればちょっと気恥ずかしいような、少し感傷的な気分になるのも当然なのかもしれない。

だが、それもアジア最終予選が始まってしまう2年後までの話だ。中学や高校の思い出とは違い、W杯は4年に一度、何度でもやって来る。

この本の中に中川桜さんという方が書いた文章がある。

「4年ぶりに出会う顔もあった。98年フランス以来会ってなくても、一緒に代表を応援しつづけていた仲間である。顔を合わせれば、それだけで打ち解けた。言葉はいらない。思いはひとつ、私たちの代表のことだけだ」

そう、自分自身が生きている限り、サッカーファンの青春は終わらないのである。

「6月の熱い日々--サポーターズアイ」 ビバ!サッカー研究会著 中央公論事業出版 


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」