2003年3月21日

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「蹴球日記」

岡田武史著 講談社

説明するまでも無い、元日本代表監督であり現横浜Fマリノス監督の岡田氏が、2002年W杯の試合の解説の合間に、自らの監督経験やエピソード、世の中に対する考えを語っている本である。

本が出されたタイミング的にはW杯についての印象、分析がメインだったのかもしれないが、そこについてはそれほど特筆すべきものは無い。韓国やブラジルなど、勝ち残ったチームには「勝ちたい」という執念があったという結論も理論派とされる監督の文としてはやや物足らない。まあそういう面はこの本ではあまり求められていなかったのかもしれないが。

それよりも、カズ外しの後に友人だと思っていたジャーナリストに批判されてショックを受けたり、有名人になってタクシーがお金を受け取ってくれなかったり、決勝トーナメント行きを決めたイタリア代表のパーティー会場で選手の監督に対する本音を聞いたり、「ドーハの悲劇」の時のテレビスタジオの舞台裏など、そこかしこに当事者でなければ書けない貴重なエピソードが隠れているのが面白い。

また、文章の内容自体も変な達観や知ったかぶりが無くて平易で分かりやすく、ましてや誰かのように単なる日本卑下の韓国礼賛にもならず、誠実で正直な岡田氏の人柄が良く出ているところも好感が持てる。もっとも、海千山千の経験が求められるサッカーの監督、それも日本を代表する人物の文としては、「こんな真っ当な人で大丈夫かいな」と思ってしまうのも事実だが、トルシエまで行ってしまうのもまずいし(笑)。

元代表監督岡田武史としての重みのある発言を期待すると少し裏切られてしまうのだが、読み終わってみれば日本人監督「岡ちゃん」を思わず応援したくなってしまう、そんな不思議な魅力がある本である。

「蹴球日記」 岡田武史著 講談社 


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