メキシコは欧州ほど身体能力が強くない割りに、これまでW杯で何度もベスト16に勝ち上がっている、日本としてはベンチマークになっているチーム。その相手にアウェイで終始主導権を握ってのドローは、確実に日本の自力が上がっている事を証明する試合だったと思う。
その大きな原動力になったのは、チームで統一されたハイプレスの意識。メキシコの4バックに対して上田、南野、久保の3トップが追い回し、瀬古、渡辺、板倉の3バックがラインを上げて中盤をサポート。セカンドボール争いでは個人て負けてもサポートで上回って試合を優位に運ぶことが出来た。
ただ、そのせいで犠牲になったのは攻撃のバリエーションである。試合の序盤に、日本のハイプレスから久保が2度のシュートチャンスを作った後は、日本が誇る攻撃陣の出番は少なく、前半34分にメキシコのカウンターを食らった場面では、堂安が戻って逆サイドで三笘がカバーに入って難を逃れるなど、攻撃のキーマンであるはずのWBが守備で目立つ場面が多くなってしまった。
後半33分には、南野、久保、鎌田に代えて前田、伊東、佐野海舟を入れて三笘、堂安をシャドーに位置に上げてWBが飛び出す形を作ろうという狙いは見えたが、戦術的に組み込まれた動きではなくて単発の継続性が無い攻撃に過ぎなかった。
3-4-2-1の戦術であれば、どれだけ両WBが高い位置でボールを保持して攻撃の起点を作れるかがポイントになるので、WBがほとんど守備に回っている日本の戦術、ビルドアップの能力は選手のクォリティに対して物足りないと言わざるを得ない。
後半36分に日本は堂安と三笘に代えて町野と鈴木唯人を投入したが、むしろメキシコがボールを支配する流れになるが、45分にスローインから鈴木がドリブル、縦に抜けたボールに反応した上田が後ろからモンテスに倒されレッドカード。しかし日本がFKを得た地点はそのファールよりずっと後ろの地点(苦笑)。
その後は10人になったメキシコが自陣に引きこもり、日本は最後まで攻めあぐねて7分のロスタイムもスコアは動かず試合終了。日本はアメリカ遠征の初戦をスコアレスドローで終える結果になった。
戦術担当守田を欠いて日本はビルドアップの形ができず、鎌田が何とか潤滑油にはなっていたがWBの上がるタイミングが無くて低いまま、シャドーが個人で打開しないとどうにもならない3バック。三笘も堂安も伊東も宝の持ち腐れ。果たしてこの森保ジャパンがアメリカ戦で何とかなるのかどうか、期待せずに見守りたい(笑)。
