ジーコ、ファルカン、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾという黄金のカルテットを擁するブラジルと、W杯初出場の若きマラドーナを擁するアルゼンチンが対戦した、1982年スペイン大会の2次予選。NHK「FIFAワールドカップ 伝説の試合ノーカット」で放送された試合のレポート。
試合はまずアルゼンチンが、マラドーナとケンペスにボールを集めて攻撃の主導権を握る。しかし前半12分にブラジルがゴール前25m地点でファールを受けると、助走をつけたエデルの強烈なFKがクロスバーを叩き、詰めたジーコが押し込んでブラジルが先制する。
その後はブラジルペースの展開。ブラジルはジーコが中盤に下がってボールを受け、ソクラテスがドリブルで持ち上がったり、ファルカンが前線に飛び出し、トニーニョ・セレーゾがオーバーラップと、トータル・フットボール的に変幻自在のポジショニングで攻撃してくる。
逆にアルゼンチンは、マラドーナが若さのせいかオフ・ザ・ボールの動きに工夫が無く、なかなか良い形でボールをもらえない。それでも左足アウトサイドのワンタッチパスや、低い重心でドリブルを仕掛けるボディバランスなど、随所に非凡な才能を見せている。
38分にはファルカンが相手の攻撃をインターセプトしてそのままドリブル、ラストパスを受けたジーコがアウトでのワントラップからシュートもバーの上。42分にはファルカンが空中ワンツーからボレーもまたバーの上。アルゼンチンも43分にCKからヘッドもブラジルGKペレスが弾く。
後半からアルゼンチンはケンペスに代えてラモン・ディアスを投入、立ち上がりは勢いを見せる。後半7分、マラドーナが右サイドでタックルを受けながらドリブルで加速、PA内で倒されるがPKにはならず。現在なら確実にVARでPKと判定されるシーンだった。さらに18分、アルゼンチンが高い位置でボールを奪って、パスを受けたディアスがフリーでシュートも枠に飛ばせない。
そこからまたブラジルが盛り返し、21分にはジーコから右サイドへ展開、折り返しをジーコ自身がダイレクトボレーもバーの上。そして22分、ジーコのスルーパスにファルカンが飛び出し、クロスをセルジーニョが頭で押し込んでブラジルが追加点。
28分にはゴール正面でジーコがFKを得るも決められなかったが、30分にジーコの芸術的なスルーパスにオーバーラップしたジュニオールが流し込んでブラジル3点目。
アルゼンチンも、34分にマラドーナの浮き球パスに抜け出したパサレラがシュートもペレスが弾く。38分にはアルゼンチンがブラジルのゴール前でボールを奪い、マラドーナがループシュートを狙ったが決められず。
そして41分、マラドーナが足の裏を見せてバティスタに蹴りを入れ、一発レッドで退場。後半44分に高い位置でボールを奪ったアルゼンチンが、ディアスのシュートで1点を返すが試合はそこまで。試合は1-3で終了し、アルゼンチンは2次リーグで姿を消した。
若きマラドーナを擁するアルゼンチンに圧勝したブラジルだったが、次のイタリア戦でパオロ・ロッシにハットトリックを決められ、世界最強と歌われたチームがベスト8で敗退する事になってしまったのだった。