ここ数日、コロナ禍そっちのけで欧州の話題を独占している「欧州スーパーリーグ(ESL)」の創設問題。
当然、イギリス国家を筆頭にあちこちで大炎上、これはそう簡単に事は運ばないだろうなと思ってしばらく静観していたら、今日になって急転直下、いきなりイングランド・プレミアリーグの6クラブ全部がESLからの脱退を表明、まだ他の6クラブは声明を出していませんが、最も多くのマネーを握るEPL勢が居なくなった事で頓挫は確実な状況になって来ました。
The news report of Chelsea’s withdrawal from the European Super League has reached the fans outside Stamford Bridge who were protesting ?? pic.twitter.com/231CXhM5Fy
— ?????? ???????? ?? (@TheEuropeanLad) April 20, 2021
(ESL脱退を喜ぶ、スタンフォード・ブリッジに集結したサポーターの皆さん)
ESL参加のビッグクラブがこういう動きに出たのは、新型コロナウイルス感染防止のために無観客試合が続いてクラブの収入に大きな打撃を受けている事、サッカーを見る手段が映像に限られているため、YoutubeやNetflixなどと視聴時間の奪い合いになり、特に若い人たちのサッカー離れが起きている事に危機感を抱いた事が第一。
そしてUEFAがネーションズリーグを発足し、さらにはチャンピオンズリーグも2024年から36チームに拡大する事を発表するなど、サッカー利権を拡大する一方、ビッグクラブはスケジュールが逼迫して放映権の分け前が希薄化するなど、負担が増して行く事に対する不満があると見られています。
そもそも、チャンピオンズリーグのお金はビッグクラブである自分たち目当てでかき集めたものだから、自分たちだけで分配してしまおうと考えるのはある意味自然で、勝手に税負担を増やし続けるUEFAを懲らしめようという気になるのも分からないではないです(笑)。
もう1つの視点は、これはある意味サッカーの”メジャーリーグ化”を目論んでいるという事です。上記12クラブのうち、マンU、リバプール、アーセナルはアメリカ人がオーナーで、ESLにはアメリカの投資銀行JPモルガンが資金提供を約束していると言われています。また、毎年夏のオフシーズンに行われているプレシーズンツアー、インターナショナル・チャンピオンズカップの参加クラブを見ると、見事なまでに上記12クラブの名前がズラリと並んでいます。
おそらく、ESLが無事発足を果たした暁には、ヨーロッパだけではなく世界でリーグ戦を展開、アメリカ大陸やアジアからの観客収入、放映権を集めて行く構想があるのだと思います。イギリス以外は遅々としてワクチン接種が進まない欧州で無観客試合をやるよりも、今年の夏には集団免疫が成立すると見られているアメリカで満員の観客を集めて興行するほうが旨味は確実です。
そして最終的には、アメスポのように五輪やワールドカップよりもESLを上位の存在に押し上げる事。そうなれば、UEFAやFIFAがいくらクラブや選手を主催大会に出場させないと息巻いたところで無意味ですからね。確かに戦略としては面白いですが、あまりにも「フットボール」の歴史や文化を軽視し過ぎました。
特にイングランドではサッカーは国技であり、日本に例えたら大相撲の幕内を分離して外国の別団体が興行をするようなもので、そりゃ政府が介入するのも当然でしょう。それに、アメリカとは異なり現代でも階級社会が残っているイングランドにあっては、サッカーは代理の階級闘争であり、ある意味社会のガス抜きとして機能しているわけで、それが無くなったら一気に社会不安を引き起こしかねません。
結局、FIFAもUEFAもビッグクラブも、いかにして世界中のマネーを自分の懐に入れるかしか考えていないわけで、たとえ今回のESL構想が頓挫したとしても、今後も間違いなく醜いパイの奪い合いは続いて行きそうです。