欧州サッカーと同じ時期に開催していると、3週間のツール・ド・フランスもあっという間に感じられるもので、早くも今大会最大の山場、標高2,304mのラ・ロズ峠頂上ゴールのクイーンステージがやって来た。
ラ・ロズ峠は、メリベルというスキーリゾートの中に作られた自転車専用道路で、おそらくツールのためにわざと整備された激坂コース。ラルプ・デュエズなんかは年々観客が増加して選手が危険な状況になっているし、レース後の渋滞も酷い事になっているので、今後はこんな峠がツールの売りになって行くのかもしれない。
さて、第15ステージで大きく遅れてしまったディフェンディングチャンピオンのベルナルが、背中の痛みでリタイアという衝撃的なニュースで迎えた大一番。レースの方は、アクチュアルスタートから早速選手が飛び出し、一時は20人程度の逃げ集団が作られたが、チーム総合成績を狙うモビスターが逃げに加われなかったために追走を始め、30kmぐらいの地点で吸収されそうになったところで、アラフィリップ、カラパス、ダンマルティン、ケムナ、イザギレの5人がアタックに成功する。
45km地点のスプリントポイントでは、メイン集団の中からベネットが先着してポイントを少し積み重ねる。その後はメイン集団はユンボ・ヴィズマが先頭を固めてペースが落ち着き、先頭と6分の差がついてこのまま逃げ集団が逃げ切るかと思われたが、超級山岳マドレーヌ峠の登りで7位に付けているミケル・ランダの総合ジャンプアップを目指すバーレーン・マクラーレンがハイペースで牽引、どんどん差が縮まってしまう。
そして2分40秒の差を保った状態で最後のラ・ロズ峠。先頭ではケムナ、アラフィリップらが脱落し、カラパスとイザギレだけが残ったが、ユンボ・ヴィズマチームが牽引するメイン集団がイザギレを飲み込み、最大勾配24%の激坂が待ち受ける自転車専用道路区間へ突入する。
ここでエース同士の一騎打ちが始まり、勝負に出ていたランダが遅れてしまい、総合3位のウラン、5位のアダム・イェーツが遅れ始める。ログリッチは最後のアシスト、セップ・クスの援護を受けていたが、何故かここでクスがログリッチを置いてスパート、これにミゲルアンヘル・ロペスが反応する。そして単独で逃げていたカラパスがとうとう追い抜かれる。
クスはようやくログリッチが離れてしまった事に気づいたようで、ここでアシストのために後退、ロペスが単独で逃げ続ける事に。ログリッチはクスから離れてマイペースで追走するが、ポガチャルとリッチー・ポートがジリジリと遅れ始める。
しかしログリッチもロペスには追いつけず、ステージ優勝はロペスがゲット。ログリッチは15秒差の2位、3位には30秒差でポガチャルが入り、これで総合タイムでログリッチとポガチャルの間は57秒差まで広がった。第20ステージの個人タイムトライアルではログリッチが優位と見られているので、ポガチャルが逆転するには今日の第18ステージで決定的な差を付けるしか無い。
その第18ステージは、山を下ってからの平坦ゴールとは言え、途中で超級山岳が1つ、1級山岳が2つ、2級と3級が1つずつをこなす、獲得標高は実に4000mにも達するハードなステージ。もしログリッチに体調不良の瞬間が訪れると、あっという間に決定的な差がついてしまう危険なステージだ。ポガチャルが逆転をかけた大勝負に出て来るのかどうかも注目だ。