「パンチャーがスペシャリストを駆逐、フランスを熱狂に引きずり込む」

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休養日明けで、本格的に総合争いが始まるツールの第2週がスタート。

第11ステージはアルビからトゥールーズまでの完全平坦ステージで、最後はここまでスプリント争いに常時加わりながら勝てなかった、カレブ・ユアンがフルーネウェーヘンをわずかに差し切って勝利。ここまで6回の集団スプリントで勝者が6人という、まさに群雄割拠という言葉がピッタリのツール前半戦である。

次の第12ステージはいよいよピレネー山脈に突入。2つの1級山岳ペイルスルド、ウルケット=ダンシザンを超えてから30kmの長い下りをこなしてのゴールという、逃げ屋による逃げ屋のためのステージで、実に40人もの逃げが決まった後は淡々とレースが進み、ペイルスルド峠で25人に集団が減る。

そして下りでクラークが単独で逃げるが、ウルケット=ダンシザン峠でトレンティンとサイモン・イェーツ、ミュールベルガーに追い抜かれ、サイモン・イェーツが引っ張る形でミュールベルガー、少し遅れてビルバオが頂上を通過、メイン集団とは6分差でほぼ逃げ集団の中で勝利が確定する。

3人は結局ゴールまで逃げ粘り、ゴールスプリントではサイモン・イェーツが他の2人を圧倒して勝利、メイン集団はチームイネオスが最後までコントロールしながらゴール。アラフィリップはマイヨジョーヌを守ったが、1分12秒差の2位にゲラント・トーマスがきっちり射程に捉えた状態で、いよいよ第13ステージの個人タイムトライアルを迎える。

おそらく、フランス人以外のほとんどの自転車レースファンは、アラフィリップのマイヨジョーヌがここで失われ、ゲラント・トーマスを中心とした各チームのエース・オールラウンダーが総合上位に並び、いつものツール総合争いが繰り広げられると思ったはずだ。

ところが、TT世界チャンピオンのローハン・デニスはチームともめて前のステージで自主的にリタイア、4番スタートのトニー・マルティンはチームオーダーのためか流した走りで後続に抜かれ、クリテリウム・デュ・ドーフィネのTTステージを優勝したファン・アールトはフェンスに足を引っ掛けて裂傷の大怪我と、TTスペシャリストの存在感が無い。

代わりにトップへ立ったのが、第8ステージで超大逃げを決めて勝利したトーマス・デヘント。そこからリッチー・ポート、ティポー・ピノが数秒差、リゴベルト・ウランに至っては0.28秒差までデヘントのタイムに迫るが逆転できず、いよいよ勝負はトップ3人へと移る。

優勝候補筆頭の総合2位ゲラント・トーマスが後半にペースアップ、第2計測で20秒差を付けてトップに立った時は、やはりトーマスは強いと皆が思ったはずだが、まさかマイヨジョーヌのアラフィリップがそれを上回るタイムで刻んで来るとは予想外だった。

そしてゲラント・トーマスがデヘントに22秒差を付けて予想通りにトップに立つも、フランス人の熱狂的な応援を受けて快走するアラフィリップがトーマスからさらに14秒の差を付けてゴール、実に18年ぶりとなるフランス人選手によるツール・ド・フランスでのタイムトライアルの勝利を飾った。

これでアラフィリップとゲラント・トーマスとの総合タイム差は1分26秒。そして今日は今回のツールで大きな山場となる超級山岳トゥールマレー峠頂上ゴール。間違いなくゲラント・トーマス率いるチームイネオスが勝負に出てくる戦いになる。これまでは単なるパンチャーだったアラフィリップが、長い登りでどれだけ絶え間ないライバルのアタックに耐えられるか、本当の真価が問われるステージになるはずだ。

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