「長谷部はベッケンバウアーではなく、もはやあのバレージに比較されるべき存在」ドイツ・ブンデスリーガ第7節 ホッフェンハイム-フランクフルト

ヨーロッパリーグから中2日のフランクフルトは、DFラインはラツィオ戦と変わらず長谷部がリベロの入り、前線がレビッチとヨヴィッチを並べた3-1-4-2。チャンピオンズリーグでシティに1-2と敗れた後で中3日のホッフェンハイムも同じフォーメーションでスタート。

試合経過よりも、この試合では長谷部の守備について注目して見ていたのだが、まず一番の特徴としてはアウェイであってもラインを積極的に上げる点にある。だいたいヨーロッパではイギリスを除けばアウェイでは引いて守るのが定石なのだが、日本人の長谷部には全くそんな習慣が無い。

この試合でも、長谷部はハイプレスでは定評のあるホッフェンハイムに対して一歩も引かず、一瞬でもマイボールになれば素早くラインを上げ、味方がセカンドボールを拾えるようにして相手に一方的なボールキープをさせていなかった。

もちろん、ただ無謀なハイラインを仕掛けているのではなく、まずしっかりとラインを上げて相手のFWのスタート位置を下げさせ、そこから常時視野に入れながらボールの位置によって細かくラインをコントロール、もし相手がアタッキングサードで前を向いたり、サイドの深い位置で基点を作られると、長谷部は素早くポジションを下げてカバーリングに集中する。

さすがに純粋な高さやスピードでは劣るために、前半29分に味方のミスからサイドを深く攻められ、長谷部がクロスに競り負けて折り返され、混戦からのシュートがクロスバー、38分にもサイドから崩されて長谷部が追いつけずシュートがクロスバーという決定機を作られる。

しかし前半40分に、スローインから一発のパスで裏を取ったレビッチが、ホッフェンハイムGKバウマンが前に出たのを見逃さずチップキックのシュート、これがホッフェンハイムゴールに吸い込まれてフランクフルトが先制する。さらに後半早々にも、ボールを奪ったフランクフルトがレビッチのスルーから右へ展開、クロスをバウマンが防いだこぼれ球をフリーでPAに入り込んだヨヴィッチがしっかり決めてアウェイで大きな2点目をゲットする。

その後は2点をリードされたホッフェンハイムが圧倒的に攻めるのだが、長谷部は冷静に相手が前を向く瞬間を狙ってオフサイドラインを上げるなど牽制の動きで勢いを弱める努力をしていたが、後半19分にレビッチが2枚目のイエローで退場、フランクフルトは窮地に追い込まれてしまう。

すかさずホッフェンハイムは3人目の交代でCBを1人下げ、4バックにして徹底的にフランクフルトゴールを攻め立て、長谷部のラインコントロールもPAやや外側まで押し上げるのが関の山で、後半30分には長谷部自身がイエローカードを受けてしまい、36分にはとうとうラインを強引に突破されたネルソンに1点を返されてしまう。

しかしフランクフルトは決してパニックにならず、常にラインを保持してトラップとのコンビネーションで安易にシュートを許さない。そして5分の後半ロスタイムにはFKからフリーでヘディングを浴びるもトラップが片手1本でクリア、そのまま1-2で試合終了、フランクフルトがホッフェンハイムを抜いて7位にまで浮上した。

ドイツでプレイしている事とリベロというポジションから、ベッケンバウアーに例えられる事が多い長谷部だが、決して身体能力的には優れておらず、苦手な部分は味方に任せ、自身は常に冷静さと保ってラインコントロールとカバーリングで守備を統率する姿は、かつて黄金時代のACミランに君臨していたバレージに近いと思う。もうちょっと長谷部が若ければ、ニコ・コバチ監督が苦しんでいるバイエルンに引き抜かれたかもしれないね(笑)。