「冨安がつき遠藤がこねし天下餅すわりしままに食うは鎌田」ベルギー・ジュピラー・プロリーグ第10節 シント・トロイデン-ムスクロン

ここまでリーグ戦6位とプレーオフ1入りが現実的な目標になりつつあるシント・トロイデンと、最下位ながら監督交代後は調子が上向きつつあるムスクロンとの対戦。

シント・トロイデンは2シャドーの位置でレギュラーだったセバージョスがアンデルレヒト戦の一発レッドで2試合出場停止、代わりに鎌田が先発でトップ下に入り、冨安が3バックの右になった3-1-4-1-1の形で、遠藤はベンチスタート。対するムスクロンは4-1-4-1のフォーメーション。

試合はアウェイのムスクロンが序盤から積極的に前からプレスを仕掛け、アンカー気味にプレイするアサモアの脇に出来るスペースにどんどん選手が攻め上がり、何度もシュートチャンスを作り出す。鎌田も何とかボールを引き出して基点になろうとするが、キープもリターンも怪しくてポストプレイが安定しない。

前半25分には相手のクロスがDFに当たってゴール前でピエロが完全にフリーになるも、シュートはシント・トロイデンGKステッペがコースを消して何とか防ぐ。逆に、シント・トロイデンはその直後に左サイドからのパスに抜け出したボリが後ろから倒されPK。これをボタカが決めて押されていたシント・トロイデンが先制する。

ムスクロンは31分にみ右サイドからの速いクロスにピエロが飛び込み、冨安が後ろを取られて一瞬体を抱えたように見えたが、ヘディングしたボールは外へ流れてシント・トロイデンは命拾い。

シント・トロイデンは前半35分に、セットプレイから浮いたボールをフリーになっていた鎌田がボレーで叩きつけるもGKがキャッチ。さらに40分、鎌田がスラロームのようなドリブルで切れ込んだところをボヤが倒し、これが2枚目のイエローとなってムスクロンが10人になってしまう。

が、ムスクロンは前半43分にCKから足で合わせたシュートはステッペに防がれたものの、こぼれ球を押し込んで同点に追いつく。シント・トロイデンも鎌田のスルーパスから折り返してのフリーなシュートは相手GKに防がれ、同点のまま前半を折り返す。

後半もシント・トロイデンはアサモアが引き出された後のスペースを使われて決定機を作られたり、ピエロに力づくで反転されPA内でシュートを打たれるなど、相変わらず数的優位とは思えない不安定な展開。そして後半20分に遠藤をアンカーに投入、冨安が右CB、鎌田がシャドーになった4-3-2-1のフォーメーションへと変更する。

これで中盤を広くカバーする選手がアサモアと遠藤の2人になってシント・トロイデンの守備がようやく安定、ここから一気にホームチームへと流れが変わり始め、それまでは消えがちだった鎌田も味方との距離が近くなり、柔らかいトラップからのドリブルでボールに絡むようになる。

すると後半39分、シント・トロイデンはCKからファーの遠藤が折り返し、テイシェイラのヘッドはGKに防がれたが、こぼれ球をボリが押し込み勝ち越しゴール。さらに後半45分、ゴール前でクロスに飛び込もうと競り合った鎌田が倒され、VARによってPKが与えられる。これを鎌田自身が決めて3-1、そして試合終了。

結果的に勝ったとは言え、試合を通じてみればムスクロンのほうが内容は優勢で、遠藤が入ってフォーメーションが変わってから明らかにシント・トロイデンの状況が好転したように、実は3-1-4-2よりも4-3-3のほうがいいんじゃないか。遠藤もアンカーよりはインサイドハーフのほうがやりやすそうだ。

冨安は後半はビルドアップの貢献で盛り返したが、前半はフィジカルモンスターのピエロに対して完全にやられたシーンもあり、ちとほろ苦い出来だったが良い経験になっただろう。

そして鎌田はやっぱり美味しいところだけを持っていくなと(笑)。相変わらず前線の選手としては線が細くて頼りないけど、以前に比べると多少は攻守の切り替えに対する意識は向上したように思う。まだ本格的になるのは時間がかかるだろうけど、今はとにかく試合に出続けて経験を積むしか無いね。