「”遅れない男”ゲラント・トーマス優勝を決め、フルームは意地の表彰台」ツール・ド・フランス2018 第20ステージ

パリ・シャンゼリゼでゴールする今日の最終ステージは、総合争いは行わないという不文律があるため、この第20ステージの個人タイムトライアルが事実上の最終決戦。

距離は31kmと短いながらバスク地方特有のアップダウンがあるコース設定だったが、レース自体にそれほど大きな波乱は生まれなかった。

序盤にヘップバーンが44分強という好タイムを叩き出して長くトップの座をキープしていたが、徐々に濡れたコースが乾き始めた後半になるとタイムがどんどん塗り替えられ、マルク・ソレル、アンデルセン。クウィアトコウスキーらがタイムを塗り替えていく。

そして注目のトップ10がスタート、キンタナ、ランダ、バルデといったクライマーはあまりタイムを伸ばせない中、総合4位のフルームが意地を見せ、クウィアトコウスキーから49秒タイムを上回る40分43秒のタイムを叩き出してトップに立つ。逆に総合3位だったログリッチェは、前日の勝利で足を使ってしまったのかタイムを伸ばせず総合1位に転落、フルームに表彰台を奪われてしまった。

しかし総合2位のデュムランは、前半こそ抑え気味のペースでライバルたちから少し遅れたタイムだったものの、後半に盛り返して最後はトップタイムだったフルームをわずか1秒で上回り、あとはゲラント・トーマスのタイムを待つだけ。

最後はマイヨ・ジョーヌを来たゲラント・トーマスがスタート、13km、22lmの途中計測地点でトップタイムを記録して有終の美を飾るのかと思われたが、そこからは失速して最終的にはデュムランから遅れること14秒でゴール。ステージ優勝はならなかったものの、総合争いでしっかりトップを堅持、これで事実上の総合優勝が決定した。

キャリアの序盤はウェールズ出身のトラックレーサーで、2008年の北京オリンピックの団体追い抜きで金メダルを獲得、その後はチームスカイへ移籍するもアシストが主で比較的地味な選手だったのだが、2016年にパリ=ニースに優勝すると昨年のツールでも第1ステージの個人TTで勝利、今年のツール前哨戦、クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝と、一気にキャリアを花咲かせた印象がある。

ゲラント・トーマスのスタイルは、タイムトライアルに強く、登りの爆発的な強さは無いけどもライバルたちから離されない粘り強さがあり、スプリント能力があるのでクライマーらとの集団ゴールになると確実にボーナスタイムを稼いで来るという、かつてのミゲール・インデュラインを思わせるスキの無さを感じる。

今年はたまたまフルームの不調によってエースの座に着いたが、チームにフルームがいる限りは明確なエースの交代は無いだろうし、チームトレックが獲得するのではないかという噂もあり、これからシーズン終盤に向けてストーブリーグが気になるところである。