「元スキージャンパーはピレネーの下りでもジャンプする」ツール・ド・フランス2018 第19ステージ
- 2018.07.28
- 自転車
第20ステージが個人タイムトライアルであるため、チームとして戦える最後の決戦となった第19ステージは、ピレネー山脈伝統の峠がすし詰めで、1級山岳のアスパン、超級山岳のトゥールマレー、2級のボルデレ峠を超えてすぐ超級のオービスク、そこから20kmの下りをこなしてのゴールというスーパーハードなコース。
いつものように、スタートから山岳賞のアラフィリップ、デヘント、アダム・イェーツ、モレマなど18人の逃げ集団が形成される展開で始まるが、60km地点から始まるアスパンへの登りでメイン集団にも早速動きが出る。まずザカリンがアタックすると、4分34秒差の7位に付けていたランダ、それにバルデやマイカも付いて行く。
トゥールマレー峠の頂上はアラフィリップが先頭で通過、これでアスパンのポイントを含めて今年の山岳賞を確定させる。そしてランダとバルデを含む追走集団は43秒差、メイン集団は3分差を付けられトゥールマレーからの下りへと突入する。
ランダは先頭集団から降りてきたチームメイトのアマドールをペースメーカーにしてテンポを上げると、下りで7人ぐらいになっていた逃げ集団に追いついてしまい、メイン集団とは3分30秒の差をつける事に成功する。
しかしメイン集団も、2級山岳のボルデルへの登りでチームスカイに代わってロットNL・ユンボ;チームのヘーシンクがハイペースで引っ張り始めると、あっという間に先頭集団から1分30秒の差まで詰め、ラストのオービスク峠へと差し掛かる。
オービスク峠では、先頭ではランダやマイカ、バルデらがアタックして集団が分解、メイン集団からはクライスヴァイクがアタックするが、デュムランの追走などでその逃げは潰されてしまう。このペースアップについて行けなかったのはキンタナで、ずるずる遅れて結局7分後でのゴールになってしまった。
さらに残り30km地点で、トーマスから2分47秒差で総合4位に付けているログリッチェが力強いアタックを決めると、デュムランとゲラント・トーマスがしっかりマークするものの、徐々にフルームは遅れてしまう。が、なんとか後ろから追いついたベルナルの献身的なアシストを受けて1度目の頂上付近で追いつく。
しかし2度目の登りはそれほど勾配が強くないのもあって、メイン集団は交互にアタックは繰り返されるものの、それらが決まるまでには行かず、最後の頂上を前にしてランダらの逃げ集団に追いつき、頂上自体はマイカが取ったものの、後ろに付けたメイン集団がすぐに吸収して8人で残り20kmの下りへ突入。
そして下りでテクニックを見せつけたのは、元スキージャンパーという異色の経歴を持つログリッチェ。ずっと先頭をキープしながらジリジリと集団との差を広げ始める。集団では総合タイムでログリッチェと争っているフルームが前に出て追走。しかしログリッチェとの差は20秒差まで広がってしまう。
残り3kmからは平坦になるが、タイムトライアルを得意とするログリッチェはそのまま逃げ続け、集団はデュムランも引きに加わるが差は詰まらず。そのままログリッチェが逃げ切ってステージ優勝、10秒のボーナスタイムも加算してフルームを逆転、総合3位に浮上した。
19秒遅れた集団のスプリントではゲラント・トーマスがトップの2位に入ってボーナスタイムを積み、これで2位のデュムランに対しては2分5秒の差をつけて個人タイムトライアルへと臨むことになった。
そのバスク地方で行われる第20ステージは、距離は31kmと短くアップダウンがあり、タイムトライアルスペシャリストよりもオールラウンダー向きで、ゲラント・トーマスが2分の差を逆転される可能性は極めて少ないが、怖いのは落車などのトラブル。トーマスにとってはリスクとタイム差を考慮した神経質な走りになりそうだ。
-
前の記事
”時間”の概念を超越した存在、それが我らの技術委員会! 2018.07.27
-
次の記事
「”遅れない男”ゲラント・トーマス優勝を決め、フルームは意地の表彰台」ツール・ド・フランス2018 第20ステージ 2018.07.29