「とうとうクリス・フルームがエースの座から滑り落ちる」ツール・ド・フランス2018 第17ステージ

たったの65kmという短いコースの中に、1級山岳が2つ、そして最後は超級山岳サン=ラリー=スラン峠の頂上ゴールが待ち受ける異例のコース設定となった第17ステージ。

しかもスタートはMotoGPのように総合1位の選手からグリッドに並んで一斉スタートという初めて見る光景だったが、これは案の定企画倒れで、すぐにいつもどおりに逃げを図る選手が前に出るおなじみの形になってしまったけどね(笑)。

スタート直後に始まった1級山岳ペイラギュード峠への登りで、まずはカルメジャーヌがアタックを仕掛け、バルベルデ、モレマ、マイカ、アラフィリップ、イェーツといった恒例の逃げ屋たちがすぐに反応、13人ほどがメイン集団を引き離す展開で始まる。その中からエストニア人選手のタネル・カンゲルトが抜け出し、最初の峠を先頭で通過。

その下りではアラフィリップ、デュラセックがカンゲルトに追いついて3人の先頭集団を形成、そのまま2つ目の1級山岳であるヴァル・ルーロン・アゼ峠への登りに突入し、アラフィリップが先頭で通過して山岳賞ポイントを順調に積み重ねる。そして後ろのメイン集団では、モビスターとAG2Rチームが先頭を引っ張ってペースアップ、他チームのアシストをふるい落とす作戦に出る。

そしてあっという間にラストのサン=ラリー=スランへの登りがやって来る。前の下りでデュラセックが脱落して2人になった先頭集団だったが、登りが始まるとすぐにアラフィリップが力尽きて脱落、カンゲルトの独走状態に。メイン集団からは総合で4分遅れとなっているキンタナがアタック、チームスカイが見逃す間にキンタナは先行していたチームメイトのバルベルデと合流、マイカと3人でカンゲルトを追走する。

さらにメイン集団からはログリッチェやクライスヴァイクがアタックを仕掛けるも、ベルナルが牽引するチームスカイがコントロールしてアタックは吸収される。が、フランス期待のバルデはそのペースアップについて行けず遅れ始める。そして残り3km地点で再びログリッチェがスパートすると、何とチームスカイのエース、クリス・フルームが遅れ始める。当然、ライバル達はそれを見逃さず、ログリッチェとデュムランがペースアップ。これにマイヨジョーヌのゲラント・トーマスは付いて行くが、フルームはベルナルのアシストを受けながらも徐々に引き離されてしまう。

先頭ではキンタナとマイカがカンゲルトを追い抜き、残り6km地点でキンタナがマイカを突き放すとそのまま軽々と急勾配を走り抜け、ダニエル・マーティンの追撃を受けながらも逃げ切ってゴールイン。毎年、ツール・ド・フランスの優勝候補と見られながらも期待を裏切ってきた選手だったが、実に5年ぶりのステージ優勝で復活を印象づけた。

結局メイン集団では、最後にゲラント・トーマスがデュムランとログリッチェに5秒の差を付けてフィニッシュ、総合での差をデュムランに対してほぼ2分の差を付ける事に成功したが、1分35秒遅れてゴールしたフルームは総合で3位に転落、ゲラント・トーマスはインタビューでも今までとスタンスは変わらないと発言しているが、チームスカイの中での序列は逆転したと見るのが自然だろう。

今日の第18ステージは平坦コースで、19ステージに最後の山岳が待ち構えているが、超級山岳を登ってから20kmの下りを経てのゴールであり、よほどのアクシデントが無ければフルームが2分30票の差を逆転するのは難しい。第20ステージのタイムトライアルではデュムランが強い事を考えると、トーマスを守ることがチームスカイの第一目標となる。

フルームが今年のジロ・デ・イタリアで優勝している事を考えると、ツール・ド・フランスで上位をキープしているだけでも驚異的であり、決してフルームの時代が終わったわけではないものの、1つのターニングポイントになる事は間違いない歴史に残るステージだった。