「今だったらクライフのポジション放棄とアリバイ守備はバッシング?」74年ワールドカップ・西ドイツ大会 決勝 西ドイツ-オランダ
- 2018.06.12
- ワールドカップ
現在、NHK-BSで「ワールドカップ伝説の名勝負」と称して、過去のワールドカップから抜粋した試合をフルマッチで放送、アナウンサーと解説まで改めて付けるという何とも嬉しい放送をやっていたので、昨日は74年の西ドイツ大会決勝、あのヨハン・クライフとベッケンバウアーが対決した試合を観戦。
試合開始でいきなり、オランダの華麗なパスワークの前に西ドイツが1度もボールに触れず、クライフがDFラインの位置からドリブルで持ち上がり、PA内ギリギリで倒されPK、ニースケンスがど真ん中に蹴り込む伝説のシーンが現れる。
オランダのフォーメーションは、一応はクライフがトップ下に入った4-3-1-2なのだが、クライフのポジションは完全な自由で、彼が動いたスペースに他の選手がスライドしてパスコースを作る、いわゆる「トータル・フットボール」。
対する西ドイツは皇帝ベッケンバウアーがリベロに入った1-3-2-3-1システムで、フォクツがクライフに対してマンマークを仕掛けていた。それでオランダの攻撃リズムを寸断、縦にボールを入れてから激しくプレスをかけ、セカンドボールを拾う泥臭い攻撃で徐々にオランダを押し返していく。
25分に、西ドイツはカウンターからヘルツェンバインがドリブル、これを元サンフレッチェ広島監督のヤンセンが倒したと判定、実はシミュレーションだったがPKを与えられ、ブライトナーが冷静にこれを決めて同点に。
このシーン、クライフが最初にプレスをかけるべきポジションにいたんだけど、何となく前に立つだけのアリバイ守備でそのままカウンターへ持って行かれてしまった。現代サッカーだったら間違いなくクライフが叩かれるなと思った(笑)。
ここから完全にペースは西ドイツで、クライフをマークしていたフォクツも決定的なシュートを放つ。逆にオランダはサイドへ展開して速く攻めようという意識が強すぎ、中の人数が足りずにクロスのタイミングが合わない。
前半35分、ベッケンバウアーがアウトサイドでチップ気味のFK、オランダGKヨングブルートがかろうじて弾く。オランダも36分にカウンターから2対1の決定機、これもGKゼップ・マイヤーがコースを切って防ぐ。しかし43分、右サイドへオーバーラップしたボンホフのクロスを、中で受けたゲルト・ミュラーが反転しながらシュートを決めて西ドイツがリードする。
後半早々、西ドイツはCKからボンホフがゴール前で完全にフリー、しかしヘディングはわずかに枠外に外れるチャンスはあったが、そこからオランダが猛攻を開始、クロスをGKゼップ・マイヤーが弾いてあわやゴールイン、それをブライトナーがライン上でギリギリクリア。
さらに15分ぐらいからクライフが前線に上がったままになり、オランダがアーリークロスを入れる攻撃に変化。西ドイツは中をしっかり抑えて最後のところで足を出してシュートを許さない。しかし25分ごろから西ドイツはDFが下がりっぱなしのベタ引き状態になり、オランダがほぼ西ドイツ陣内でボールを保持するハーフコートサッカー状態に。31分にいわゆるニアゾーンへの飛び込みからクロスをフリーのニースケンスが合わせるも枠外。
その後もオランダは再三の決定機を作るも決めきれず、終了間際には攻め疲れて西ドイツが再び盛り返し、ロスタイムはほとんど取らず試合終了。地元西ドイツが2度目のW杯優勝を成し遂げた。
今まではダイジェストと各媒体での記事でしか見たことが無く、一般的にはクライフ率いるオランダの攻撃を耐えきった西ドイツ、みたいなイメージで語られてる試合だけど、全体的には球際の激しさ、攻守の切り替えで西ドイツが上回っており、終盤こそ押し込まれたがそれまでの時間はむしろ西ドイツペースの試合だったように思う。
オランダは、クライフがフィールドを縦横無尽に移動して攻撃を指揮する姿は確かに印象的だが、クライフは基本メッシのように歩いているし(笑)、いくらトータルフットボールと言えどカバーリングには限界があり、あちこちに大きなスペースが生まれて西ドイツに何度もカウンターを許してしまっていた。現代のポジショナルプレーだと、クライフのプレイは到底許されないだろうなあと思ったのであった。
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