「日本のバロテッリになれるのか、荒削りだったオナイウ阿道が驚きの変貌中」J2第17節 ジェフ千葉-レノファ山口
- 2018.06.05
- Jリーグ
スタートダッシュでは明暗が分かれた両チームだが、ここ6試合はどちらも負けが1つだけと好調を維持しているチーム同士の好カード。千葉のフォーメーションは今回も指宿とラリベイのツインタワーを前線に並べ、船山がトップ下に入った4-3-1-2、山口はオナイウ阿道が1トップの4-3-3という形。
千葉はアンカーの熊谷が下がって3バック気味になり、SBが高く上がってビルドアップを形作る。山口もCBとアンカーで千葉の前線3人をマークし、千葉はボールを支配しながらもなかなかシュートまで持って行けなかったが、前半16分に茶島へのサイドチェンジから右に展開、クロスを指宿が頭でコースに流し込み千葉が先制する。
しかし山口も直後に山下のミドルをクロスバーに当てるチャンスを作ると、池上の直接FKは千葉GKロドリゲスが横っ飛びで防ぎ、スルスルとファーから飛び出した高木のシュートも素早いカバーリングで山口に得点を許さない。
それでも山口は25分過ぎにオナイウにボールを集めて攻撃のリズムを作ると、32分にオナイウの胸トラからのパスから池上と繋ぎ、小野瀬がサイドをえぐってのリターンにオナイウがきっちり合わせ、山口が流れるような攻撃で同点に追いつく。
山口は直後に相手陣内でのミスを拾い、小野瀬がゴール正面でGKと1対1になる決定機を作るも、ロドリゲスがまたも素早い寄せでファインセーブ。すると38分に左サイドを突破した矢田のクロスは相手に当たってコースが変わったものの、指宿が競り勝ってヘディング、1度はGKに彈かれたもののこぼれ球を押し込み千葉が再びリードする。
後半の序盤は千葉ペース。相手陣内で個人の粘りで山口のマークを突破、10分には右サイドをスルーパスから指宿が完全に抜け出し、ラリベイが合わせるも三幸が体を張ってシュートを防ぐ。山口も小野瀬が高木のパスに裏へ抜け出しシュートもまたロドリゲスがセーブ。
25分になると山口は岸田を入れて千葉と同じ4-3-1-2にフォーメーションを変更、千葉もラリベイに代えて鳥海を投入、3バックにして山口の攻撃に合わせたのもあって、その後は膠着状態が続く。
千葉は後半35分にCKから鳥海がドンピシャヘッドもライン上でクリアされ、その直後にも左サイドをえぐっての折返しに増嶋が中央でフリーになってシュートという決定機があったが、山口GK藤嶋がファインセーブでダメ押しならず。
逆に6分のロスタイムには山口がオナイウ、大崎とPA内で連続シュートも決まらず、これは千葉が逃げ切るかと思われたのだが、4分にセカンドボールを拾った小野瀬から右サイドをオーバーラップした三幸にパス、そのクロスを前が競り勝ってヘディングゴールを決め、山口が土壇場で同点にする。その直後にもオナイウ、小野瀬とつないで折返しを大崎がスライディングするもタイミングが合わずポストの横。そして同点のまま試合終了。
山口のサッカーを今シーズン初めてじっくり見たのだが、ボールに位置によってサイドを高く上げてのビルドアップとゲーゲンプレッシングを使い分け、5レーン理論を取り入れたポジショニング、サイドで基点を作ってのニアゾーンへの走り込みや、ファーサイドからDFの視界から消えるニアへの飛び込みなど、欧州のトレンドな戦術をもれなくキャッチアップしており、Jリーグの中では戦術的な洗練度ではトップクラスと言えるかもしれない。
ただ、ゲーゲンプレッシングを常時維持する事は難しいし、この試合でもリトリートした状態からサイドを崩されて指宿に2失点と、これから運動量がガタリと落ちる夏場を迎えるにあたって、どうやって勝ち点を拾って行くかが問われることになりそうだ。その鍵を握りそうなのがオナイウ阿道の存在、今までの単なる荒削りな選手から、タイミングの良い飛び出しから周りを使ってチャンスメイクもするなど、バロテッリ的なプレイも出来るようになっていてちょっと驚いた。これから非常に楽しみな選手である。
そしてハイラインが代名詞だった千葉は、戦術的な思想としては山口と似ているのだが、今は無理にラインを上げてパスを繋ぐよりも、シンプルにサイド攻撃とツインタワー中心の攻撃に特化しているのが功を奏している。このまま現実路線をキープするのか、それともまたムービングの誘惑に落ちてしまうのか、はたして運命やいかに。
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