「ブロックを固めてパトリック、というサッカーが首位を独走してしまうJリーグの悲しさ」J1第14節 ベガルタ仙台-サンフレッチェ広島

現在J1リーグの首位を独走中の広島と、7位仙台との上位対決。広島のフォーメーションは4-4-2でパトリックと渡の2トップ、対する仙台は3-1-4-2という形で、ここまで全試合で先発出場している野津田は契約上の理由で広島戦は欠場。

ここまでリーグ戦14試合で5失点と鉄壁の守備を見せる広島の守備組織は、あくまでベーシックなゾーン・ディフェンスで、4バックはPAの幅を堅持してボールの位置によってラインの上げ下げを行い、自陣でサイドを破られると初めてSBが自分のポジションからボールホルターへマークに行き、それでCBとの間に出来るニアゾーンは同サイドのボランチが埋める約束事が徹底されている。

もちろん仙台も広島の守備組織に対しては対策済みで、基本的にサイドチェンジを多用して仙台4バックの外側でWBが基点を作り、サイドに相手を引き出してからまた中央を攻めるという狙いが明確で、前半は仙台が試合のペースを握ると、12分に右サイドへの展開からクロスを落としたボールを奥埜が豪快に蹴り込み先制ゴール。

しかし強力な外国人選手を持たない仙台は、その後も良い流れを作るのだが得点には結び付けられず、逆に前半35分頃からは広島のパトリックと渡がサイドに流れて仙台3バックの外側で基点を作り始めると、前半41分にゴール中央からのFKを左サイドから中へ飛び込んだパトリックが合わせて広島が同点に追いつく。

仙台は前半終了間際に蜂須賀からの折返しに石原が絡み、ロスタイムには関口からのクロスを奥埜がダイビングヘッドもクロスバーと、リードを作るチャンスがありながらも決めきれず前半を1-1のドローで折り返す。

後半に入っても仙台のペースは変わらず、9分には右サイドを蜂須賀が深くえぐってからのクロスを奥埜が合わせるも、広島GK林のファインセーブに阻まれる。仙台はその後も押し気味に試合を進めるも、17分に広島がティーラシンを投入、仙台は関口が下がって永戸が入ったあたりから戦況が変わり、徐々に広島が仙台ゴールに迫る展開が増える。

すると後半26分、青山のパスに反応して左サイドからスルスルと柏が抜け出し、カットインから右足でファーサイドに見事なシュートを決めて広島が逆転に成功する。

仙台は梁勇基を投入して3-4-3にフォーメーションを変更、35分には蜂須賀のクロスからフリーになっていた中野がワントラップからシュートを放つも、ボールは惜しくも枠の外。広島はSHが下がって5バックのような形になって守り切る体勢。そして試合残り5分を切って仙台の攻めが雑になって来たところで、右サイドからの長いグラウンダーのパスを受けたパトリックが反転、そこからドリブルで持ち込み3点目。ロスタイムにはスローインからのクロスに石原が飛び込むもわずかに合わず、そのまま1-3で試合終了。

今期に城福監督が広島に就任すると聞き、「ムービングフットボール」をするか甲府スタイルにするかで天国と地獄が決まると思ったが、幸いにも甲府方面で固まったようで何より(笑)。ただ戦術的にはアトレティコのような高度な攻守一体型ではなく、4-4のコンパクトなブロックを組んであとはパトリック頼みというサッカーなので、それを打ち破れない他チームが情けないのも確か。

リーグ戦の展開という面でも、日本サッカーの戦術的な多様化という面でも、今の広島を軽く打ち破るようなチームの出現を望みたいところである。