「全てにおいて原口のコピーと化しつつある宇佐美、先輩を超える日は近いのでは」ドイツ・ブンデスリーガ2部 第31節 デュッセルドルフ-インゴルシュタット

一時はブンデスリーガ2部で首位を快走しながら、現在は3連敗で昇格が楽観視出来なくなってきたデュッセルドルフ。このホーム戦で万一負けてしまうと、いよいよ黄信号が灯る事になるとあって、久々に選手から必死さが感じられる試合内容となった。

フォーメーションは、デュッセルドルフは4-1-4-1で原口と宇佐美が両SHに位置し、1トップはヘニングスと置く形。対するインゴルシュタットは4-2-3-1という並び。中盤でインゴルシュタットのボランチとトップ下3人に対し、デュッセルドルフのアンカーとインサイドハーフが同数のマッチアップで、原口と宇佐美の両SHは相手のSBをマークするという、マンマーク戦術でデュッセルドルフは臨んでいた。

試合は序盤からデュッセルドルフがボールを支配、中盤からサイドを使う攻撃で宇佐美も良くボールに絡む。デュッセルドルフにとって攻撃のキーマンである原口のサイドは、相手に警戒されてかスペースが無く、この試合ではもっぱら守備の人になっていた。インゴルシュタットは中がマークされていてフリーな選手が作れず、長いサイドチェンジで基点を作ろうとする。

しかし先制点が決まったのは原口のサイド。前半6分にFKのサインプレイから左サイドを原口が抜け出し、折返しのクロスにヘニングスがボレーを合わせ、これがGKの股を抜くゴールになってデュッセルドルフが幸先よいスタートを切る。さらに22分、左サイドに走った宇佐美のリターンから、原口がPA内へドリブルで入ったところでインゴルシュタットの2人からサンドイッチを食らい、為す術無く倒されたがノーファール。

その後はビハインドを負ったインゴルシュタットが押し気味の展開になり、宇佐美のゴールライン際でのスライディングがあわやPKという危ないシーンはあったが、逆に前半38分の宇佐美がファーへ送ったCKをギーセルマンが頭で叩きつけるようなゴールを決めて、デュッセルドルフが良い時間帯に2点目をゲットする。

さらに後半4分、原口がPA内で右サイドからパスを受けると、相手のカバーをターンで交わし、最後はGKと1対1になったが相手の手にシュートが当たってしまって得点ならず。7分にもカウンターから宇佐美のスルーパスに原口が抜け出し、クロスはヘニングスが上手くシュートできない。

その後は膠着状態が続いたが、後半20分に2点目と同じようなコースへのCKをギーセルマンがヘッド、ボールはポストに当たったがこぼれ球をボルムートが押し込み3点目。原口は後半22分にもノイハウスからのパスをPA内で受け、トラップからハーフボレーでシュートを放つがこれもGKニーランに防がれてしまい、とことんこの試合はついてない。

後半29分、宇佐美は長い距離を走って戻り、相手にタックルを仕掛けてボールをカット。対面のガウスがガンガン上がって来るのだが、サボること無く最後まで付いて行ってフリーでプレイさせなかった。そして34分にスタンディングオベーションを受けながらラマンと交代。試合はその後単発でいくつかチャンスはあったが、どちらも得点には至らずそのまま3-0で終了。これでデュッセルドルフは残り3試合で、3位のヤーン・レーゲンスブルクに勝ち点6差。いよいよ昇格に大手がかかった。

宇佐美は絶対的に走る量、攻守の切り換えスピードが向上しているのは確かだが、ゾーン・ディフェンスに則ったポジショニングの改善も見逃せない。以前であれば、妙に高い位置や中に入ってボールを足元で受けたがり、当然そんなところに簡単にはパスが入らず、結局ボールを奪われは長い距離を戻らざるを得ず、それがスタミナにも影響していたのは確かだろう。

しかし今はゾーンを保ったワイドなポジションを取っているのでボールを受けやすいし、守備では無駄な距離を走る必要が無くなり、自分のゾーンを守っている限りは多少サボっていても守備に穴が開かない。ここまでポジショニングが向上した要因としては、デュッセルドルフのフンケル監督はどう見ても戦術家ではないので、おそらく原口のアドバイスによる部分が大きいのではないか。

そして面白いことに、守備でタックルしまくる原口のマネをしているのか、宇佐美までもがややぎこちないながらも何度もタックルを仕掛けるようになっている。もとからトラップの安定感、シュートの技術に関しては宇佐美のほうが上なので、運動量と守備力をさらに向上させ、スピードに乗った状態でボールを受けられるようになれば先輩を超える事も夢では無いように思う。