「ミシャサッカーが消えた堀浦和と、安定と実績の長谷川東京によるしょっぱい開幕戦」J1第1節 FC東京-浦和レッズ

ピョンチャンオリンピックとJリーグ開幕が重なってしまったために、今節の全国放送はNHK BS1でのFC東京対浦和の試合のみ。確かに、いつもなら熱いライバル同士の試合で盛り上がる事が多かったカードだが、今年はすっかり塩試合になってしまった。

その主な要因は、両チームが目指すサッカーにある。東京に就任した長谷川監督は、ガンバ時代から全く変わらず、とりあえず4-4で固いゾーンを作るだけで、ラインを上げてオフサイドを取りに行ったりせず、スカルトゥーラやディアゴナーレといった連動守備は選手任せというスタイル。

この試合では中盤ダイアモンドの4-4-2という、一見攻撃的なフォーメーションでスタートしたのだが、守備のためにトップ下の高萩が戻る機会が多く、浦和のインサイドハーフである柏木と長澤を抑えるために結局フラットな4-4-2になってしまい、攻撃はオリヴェイラと前田にロングボールを放り込むのみ。

しかし浦和も東京のことは言えず、一応4-3-3でウイングの武藤とマルティノスがワイドに開いた攻撃的なスタイルのように見えるのだが、かつてのミシャサッカーの片鱗さえ残っておらず、そのウイングにボールが渡るまでのボール運びが遅くて東京の4-4ブロックをほとんど崩せない。

Jリーグの試合は久々に見るわけだが、やはりヨーロッパに比べて1対1の守備力は弱いがボールホルダーへの寄せは早く、パススピード、パスワークが遅いとあっという間にフリーで攻撃する機会が失われ、他の選手へのパスに逃げざるを得なくなる。そういうミシャサッカーの根幹が堀体制ではすっかり失われてしまっている。

途中からインサイドハーフの長澤と柏木がアンカーの青木の横まで降りて来て、起点となってサイドにボールを配給しだしてからは、浦和の両ウイングもそれなりにクロスを上げる形が見られるようになるのだが、中が興梠一枚ではどうしようもない。

前半40分までで盛り上がったところと言えば、浦和GK西川がPA外に飛び出してオリヴェイラを倒したのにノーファールだった場面ぐらいで、40分までは両チームともにシュートはわずか1本ずつ、ようやく42分に柏木のパスを右に流れた興梠が抜け出したが、ボレーシュートはわずかに外で前半終了。

しかし後半になるといきなり試合が動く。東京は後半3分に、浦和の攻撃をカットすると高萩から槙野の裏を取って抜け出した東にスルーパスが渡り、シュートはヒットし切れなかったがゴールマウスに転がって先制点を挙げると、浦和もその直後に柏木のCKを槙野が足で一瞬先に触ってゴールへ流し込み同点に。

その後は浦和がセカンドボールを支配、16分にはマルティノスがドリブル突破からクロス、その折り返しを興梠がシュートも林がナイスセーブ、直後のCKには槙野がニアでヘッドもわずかにバーの上と惜しいチャンスを連発する。

ここで長谷川監督は、永井と16歳の久保君を次々に投入、久保君はそれまでに無かったダイレクトのパスで東京のサッカーにダイナミズムをもたらしたが、その時間も一瞬で後は浦和の勢いに飲み込まれ、後半ロスタイムにカウンターから久保が左に走る東にパス、そのリターンを久保自身がシュートしたものの、コースはGK正面で試合終了。

試合後の談話でも両陣営ともに負けなかったのである程度満足、という様子ではあったが、点を取るという意味ではどちらもまだ大きな課題が残っているように見える。今後J1で優勝争いをして行くには、前線に優秀な外国人選手を補強しないと厳しいのではないか、そう思わざるを得ない開幕戦だった。