「長谷部が整える”0.1秒”が、フランクフルトをチャンピオンズリーグへと押し上げるカギになる」ドイツ・ブンデスリーガ第23節 フランクフルト-ライプツィヒ

最近の公式戦9試合でわずか1敗と好調が続いているフランクフルトが、リーグ2位のライプツィヒを迎えた大一番。月曜に行われた日程に対する抗議として、ハーフタイムに大量のテニスボールとトイレットペーパーが投げ込まれるなど不穏な雰囲気に満ちていたが、試合内容自体は非常に緊迫した好ゲームだった。

対戦相手によって戦術を変えるフランクフルトのニコ・コバチ監督が取った手段は、3-1-4-2を基本フォーメーションとするライプツィヒに対して同じ3-1-4-2の形で、しかもハイプレスのライプツィヒに対して自分たちも負けずにハイプレスを仕掛けるという、まさにがっぷり四つの真っ向勝負を挑んで来た。

長谷部のポジションは、いつもは3バックだと3センターのリベロという役割になるのだが、この試合は3バックの前に位置するアンカーとしてプレイ。その狙いは明白で、長谷場は通常のアンカーみたいにバイタルにどっしり構えるわけではなく、あらゆるボールに対してアプローチを仕掛けてライプツィヒの攻撃を阻害する事だ。

アンカーとしての長谷部は単独でボールを奪う能力で見劣りはするのだが、アジリティと運動量、ボールに対する嗅覚が優れている事を活かし、とにかく3バックの前で0.1秒でも相手の攻撃を遅らせたり、精度を落としたりする事。ハイライン戦術においては、そのわずかな時間が生まれる事で、DFラインがオフサイドを取りに行くのか、マークしている選手に対して距離を置くのか、判断の精度を上げる余裕を与えてくれるわけだ。

前半12分に右サイドで守備の人数が揃っていながら細かいパスで突破され、最後はオギュスタンに先制点を決められた事でそのプランも崩れたかなと思ったのだが、21分にCKからアブラアムが競ったボールがファーに流れ、それを飛び込んだチャンドラーが押し込んで同点に追いつくと、25分にはライプツィヒDFオルヴァンが前に出てクリアしたボールを拾い、オルヴァンの裏をレビッチが突破、クロスをボアテングが押し込みフランクフルトが鮮やかに逆転する。

しかし前半29分、ゴールライン際で長谷部がクリアしようとしたところでボールを奪われ、レビッチが相手を掴んだと判定されPKを宣告されるも、ビデオ判定で長谷部のパスをカットした選手が戻りオフサイドだった事が分かってフランクフルトは命拾い。さらに前半43分にはまたもフランクフルトがライプツィヒの高いラインの裏を取り、レビッチがライプツィヒのGKグラーチと1対1になるがシュートはセーブされる。

そして前半終了のホイッスルが鳴った後で、長谷部に対してケイタがアフター気味のタックルをした事に長谷部が激昂、しばらくもみ合いになってハーフタイムに突入、そして上記のテニスボール投げ込まれ事件が発生。

これだと後半はどんな荒れた試合になるのかと心配したのだが、後半はやはりハイライン同士の激しいつっぱり合いが続くものの、どちらもセットプレイ以外にシュートチャンスが生まれず、後半21分にフランクフルトはカウンターから1対3の場面を作ったものの、ラストパスに対してハラーがトラップをミスしてしまいシュートまで持って行けず。

それでもフランクフルトは気持ちを切らす事無く、多くの選手が足を攣るまで走りまくってライプツィヒの選手をしつこく追い続け、後半ロスタイムに入っても足を止めずしっかりボールをキープし試合をコントロール。長谷部もきっちり相手の攻撃の基点を潰した後、自らボールをキープしながらタッチラインに向かってマイボールのスローインにするなど終始冷静な対応で、しっかり試合を整えて勝利。

これでフランクフルトは、ライプツィヒを勝ち点1上回って3位に浮上、2位のドルトムントとも勝ち点1差で、いよいよチャンピオンズリーグ進出が現実のものになって来た。逆にライプツィヒは得失点差でヨーロッパリーグ圏の5位に後退、これも勝ち点1差でシャルケが背後に控え、まだまだ熱い闘いが続きそうである。