「トルシエジャパンと同じ道のりが示す、15年間で変わった日本の立ち位置」国際親善試合 日本-ベルギー
- 2017.11.16
- 日本代表
昨日も書いたように、ベルギー戦は生では見られなかったので、試合の直後にはこんなツイートを流してみた。
ブラジル戦からベルギー戦の流れは、経験不足で当時世界最強のフランスに挑んで木っ端微塵になり、守備を優先して0-1で負けたスペイン戦のトルシエジャパンと同じだよねw
— こばやしりょーじ (@gazfootballcom) 2017年11月15日
今回の1-3、チャンスがありながら0-1という結果が、この15年間に縮んだ世界との差を表しているんじゃないかな。
— こばやしりょーじ (@gazfootballcom) 2017年11月15日
実際に試合を見てみると、トータルでその印象と変化は無かったんだけど、ベルギー戦の前半に関してはむしろ日本ペースだったと言って良いぐらい、互角以上の内容を見せていたのはちょっとした驚きだった。トルシエジャパンの時は世界との差が100だったとすると、今は50にまで近づいたように思える。
ザックジャパンの時にはベルギーに勝っていたと言われるかもしれないけど、当時のベルギー代表監督はあのヴィルモッツだし(笑)、香川と本田は全盛期だったし、ザックジャパンは手の内をさらけ出してバンザイアタックをするチームなので、直接的には比べられないからね。
さて試合だが、ベルギーは予想通り3-4-3のフォーメーションで、日本は山口がアンカー、インサイドハーフに長澤と井手口が入った4-1-4-1という形でスタート。
ブラジル戦では、日本はプレスに行くところと待つタイミングが統一されておらず、前線がDFにプレスをかけに行ったのに後ろが付いて来ず、そのスペースをマルセロらに攻略されて対応が後手に回ってしまったが、ベルギー戦ではその辺の意思統一がはっきりと向上していた。
相手がバックパスなどで後ろ向きにビルドアップした時には、日本の3トップがベルギーの3バックに対してプレスをかけてミスを誘いに行き、前を向かれたら前線がスッと下がって4-1-4のゾーンを作って待ち構える。おそらくハリルホジッチはスカウティングでフェルトンゲンを除けばベルギーのCBは足元が弱いと分析していたのだろう。案の定、前半のベルギーは日本に対して攻めあぐねる形になってしまった。
ただ攻撃については経験不足を露呈。Jリーグ勢で固めた中盤は、ボールを奪うところまで行ってもそこからの展開が狭い・遅い・判断が悪いで、せっかくのターンオーバーをつまらないミスで早々に終わらせてしまっていたし、大迫はボールを収めるまでは出来てもシュートはなかなか打てないし、原口はデブルイネに引っ張られて守備での奮闘ばかりが目立ち、浅野はスピードを活かして何度かチャンスに絡んでいたが、ラストプレイが壊滅的でことごとく決定機一歩手前で無駄にしまう。
後半はベルギーが対策を施し、WBが最初からFWがと同じ列に上がった3-2-4-1にして常に日本の4バックの間や外のスペースを狙って来た。そのため日本は原口と浅野がさらに下がってしまい、日本はボールを奪っても中へとパスを出すしか無く、ただでさえ展開力が低い中盤がほとんど攻撃をオーガナイズ出来なくなり、攻撃面では完全なジリ貧。前線の動き出しに大きくしっかりとパスを出せていたベルギーとの差は明白だった。
そこでカンフル剤として森岡と久保を投入したが、かえって日本が必死で保っていた守備のバランスが崩れてしまい、久保のカバー遅れと山口のお見合いが起こった隙に、シャドリにスルスルとドリブルで抜かれ、長友がマークを外して中央のカバーに入ったためにルカクがドフリーになってやすやすとヘディングを決められ、事実上の終戦。試合はそのまま0-1で終了した。
今回の欧州遠征が連敗で終わってしまった事で、またハリルホジッチに対する風当たりは強くなっているが、そもそも今回のようなポット1クラスの相手なら、グループリーグは基本的に無失点のドローで終える事がベターであるため、本番であれば同点のままで久保や森岡を入れる采配はしないはず。親善試合であるからこそ勝ちに行った采配なので、そこでの失点は織り込み済みだろう。
しかし楽観視は禁物である。単なる親善試合と対戦国が日本を丸裸にして研究して来るW杯本番は全く異なるステージだし、国内のキリンカップとアウェイの試合でも全然違う。Jリーグと海外リーグはサッカーの質が全く違うし、ベルギーやオランダ、ブンデス下位と比べて、欧州4大リーグのトップチームとではチーム内の競争が別次元である。
今回の欧州遠征で最も落ち着いていた酒井宏樹を見れば分かる通り、ブンデス時代はオタオタするばかりだったのに、マルセイユでガルシア監督から徹底指導を受けてサブからレギュラーに這い上がり、チームもリーグアンの上位に付け、ELなどを経験した自信が物を言ってるわけで、普段の練習から高いレベルで揉まれているかどうかは非常に大きい。
今回招集されたメンバーがいくら啓発されたとしても、チームに戻って同じような取り組みに終わったのでは元の木阿弥である。このままでは、W杯本番ではまた香川や岡崎、本田の経験に頼らざるを得なくなるだろう。クラブでどれだけこの経験を反芻し、さらに高いレベルへと積み上げて行けるか。国内組にはE-1が控えているので、そこで「脱亜入欧」のサッカーを見せて欲しいところだね。
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