「酒井宏樹はすっかりフランス化して、今では守備に専念する毎日」フランス・リーグアン第11節 リール-マルセイユ

2010-11シーズンにリーグ優勝を飾ったものの、昨シーズンは11位と中位に終わってあのビエルサ監督を招聘したリール。しかし蓋を開けてみればリーグ戦をここまでわずか1勝の19位と大スランプで、早くも監督解任の噂が流れる中、ホームで5位のマルセイユと対戦した。

フォーメーションはどちらも4-2-3-1。マルセイユは1トップがミトログルで、トップ下は怪我で欠場したパイェに代わってサンソンが入り、あとはいつものベストメンバー。もちろん酒井宏樹も右SBでスタメン入り。

ビエルサ監督の戦術と言えば、高い位置から激しいマンマークでボールを奪うと、後ろからどんどん選手が追い越してパスコースを作り、素早いボール回しでサイドからチャンスを作る形がイメージされるが、リールの序盤は全く似ても似つかない惨状で、これは19位に沈んでいるのも納得する出来だった。

例えばSHが下がってCBからのパスを受けると、すぐさま同サイドのSBがオーバーラップするまではいいのだが、中のフォローが全く無くて縦関係しか作れてないため、コースを塞がれてそこでおしまい、また後ろに返して組み立てのやり直しという繰り返しになっていた。そして前半6分にPA右でのフリーキックから、サンソンがサインプレイでグラウンダーのキックを合わせてマルセイユがあっさり先制。

その後はアウェイのマルセイユが守備を固めてリールがボールを持つ展開になり、前半20分頃からようやくリールは左SHのエル・ガジを中心に、バイタルのスペースで縦パスを受けられるようになり、そこからダイアゴナルに選手が動いてパスを受けるビエルサらしい攻撃が見え始めたが、マルセイユは自陣に4-5-1の形でしっかりゾーンを固め、マンダンダの好セーブもあってゴールを許さない。

後半7分から、相変わらずほとんど攻撃の基点になれないミトログルに代えてジェルマンを投入、それまでに無かったスペースへの走り込みでボールを引き出しつつ、徐々にプレスの勢いが落ち始めたリールに対して、マルセイユが中盤でボールを持つシーンが見られるようになり、19分には酒井のボールカットからジェルマンへクロスというチャンスも作る。

マルセイユは終盤に何度もカウンターになりそうな場面はあったのだが、いずれもラストプレイの精度を欠いてシュートまで行けず、ロスタイムに入った直後のグスタボのシュートもGKにセーブされ、直後にリールも強い縦パスから決定的なシュートを放つも枠外。そのままスコアは動かず0-1でマルセイユの勝利となった。

ゾーン・ディフェンスを採用するチーム、特にフランスリーグはアフリカ系の選手が多いのもあって中盤の守備組織が他国に比べると緩めで、そのためSBがほとんど上がらずDFラインを形成し、サイド攻撃は快速ウイングが単独突破で打開するパターンが多い。シーズン序盤はブラジルのラテラウのようにオーバーラップしまくっていた酒井だが、良くも悪くも段々リーグアンに馴染んで来たのかなという気がする(笑)。見ていてあまり面白くないけど、酒井のキャリア的に上がっているのは確かだろう。