「横浜Fマリノス、神がかりな決定力で鹿島に意地を見せつける」J1第30節 横浜Fマリノス-鹿島アントラーズ

現在は盤石とも言える首位を築いている鹿島アントラーズに対し、3位ながら勝ち点は大きく離され、チーム得点王のウーゴ・ヴィエイラ、斎藤という攻撃の飛車角が怪我で抜けた横浜Fマリノス。どう見ても鹿島有利な対戦だったのだが、ここで負けると優勝の可能性がほぼ消えてしまう横浜が、まさに意地を見せた格好になった。

鹿島はいつも通りの4-4-2で、2トップは骨折から復帰したペドロ・ジュニオールと金崎が務めるベストメンバー。4-2-3-1の横浜は伊藤翔が1トップ、バブンスキーが左SHでそれぞれ久々の先発つなった。

試合はどちらもゾーン・ディフェンスが整備されたチームらしく、互いにコンパクトでバランスの取れた守備から素早くサイドを攻める展開になるが、先手を取ったのは横浜で、前半3分に大きなサイドチェンジからマルティノスが放ったシュートがCKになり、それを伊藤翔がピンポイントで合わせて先制点をゲットする。

さらに横浜Fマリノスは、前半14分にも鹿島CB植田がトラップから持ち出そうとドリブルを始めたところで、そこに素早くプレスをかけた天野がボールをスティール、そのまま持ち込んでゴール左にきっちり決めて、前半の早いうちにまさかの2点目を獲得してしまう。

しかし鹿島は慌てず、高い位置取りをするSBを使ったビルドアップでボールを支配すると、金崎とペドロ・ジュニオール、レアンドロ、レオ・シルバが中で繋いで横浜の守備を中央に集め、出来たスペースを山本や西がオーバーラップで絡む分厚い攻めで横浜を攻め立てる。

横浜もボランチの中町と喜田がシンプルにボールをはたき、鹿島の波状的なプレッシングをうまく掻い潜り、時には両SHがDFラインの位置まで下がる6バック状態になって何とか耐えていたのだが、前半のロスタイムにCKから金崎が落としたボールが山本に当たり、それを山本が拾ってゴールに押し込み鹿島が1点を返して前半を終了する。

後半になると、精神的にも肉体的にも疲れが出たのか、横浜の中盤が前半に見せたようなパスワークを出来なくなり、1トップの伊藤翔とその後ろが完全に分断、安易に前へ蹴っては鹿島にボールを拾われるサンドバッグ状態で、カウンターもほとんど繰り出せなくなる苦しい展開。

モンバエルツ監督も、たまらず遠藤と扇原を入れて前後を繋ごうとするのだが、後半21分にCKから植田がミスを取り返すヘディングが決まり同点、その直後にも土居が抜け出しゲームを決める逆転かと思われたのだが、これが微妙な判定でオフサイドを取られてノーゴール。ここが結果的には運命の分かれ道となった。

後半25分を過ぎると、そこまで攻撃に絡みまくっていたレオ・シルバの運動量が落ちてようやく横浜が中盤でパスを繋げるようになると、後半29分に左サイドで山中が1対1を突破、ドリブルで中へと切れ込み遠藤へラストパス、これを遠藤がうまくターンしてマークを交わしシュートを放つと、GK曽ヶ端の手をかすめて昌子の足に当たり、これがゴール内へと転がって横浜が再びリードする。

その後は鹿島がレオ・シルバの鋭いシュートなどで横浜を脅かすが、横浜も後半37分に栗原を入れて5-4-1にしてサイドのスペースを埋めると攻め手が無くなり、逆に横浜が扇原の単独突破でファールをもらうなどカウンターで上手く時間を使い、横浜Fマリノスが1点のリードを守りきって試合終了。

いや、J1上位7チームの中で最も得点数が少ない横浜Fマリノスが、攻撃の大黒柱を2本欠きながら首位の鹿島から3点を奪って勝つとは思わなかったね。これで鹿島は2位の川崎に対して勝ち点差が2に縮まり、今期は鹿島の独走で終わるかと思われたJ1の優勝争いが面白くなって来た。優勝は厳しいだろうが、横浜Fマリノス、セレッソ、柏の3チームが勝ち点1差でせめぎ合うACL争いもこれから楽しくなりそうだ。