「ハリルホジッチにとっての真の狙いは、おそらく試合の裏側にあるはず」キリンチャレンジカップ ニュージーランド戦展望

残念ながらどこも放送をしてくれなかった、アジア最終予選プレーオフですが、マレーシアで行われた第1戦は相当に怪しいPKの判定でシリアが追いつき、1-1のドローで終了したみたいですね。オーストラリアが優位なのは変わらないですが、第2戦で万が一シリアが先制すると分からなくなりそうですな。

てな感じで、既にW杯出場を決めているこちらは余裕で眺めていられる幸せを噛み締めているわけですが、本番に向けての準備第一歩であるキリンチャレンジカップのニュージーランド戦が本日行われます。

メンバーについては、発表の時点でハリルホジッチ自身が語っているように、アジア最終予選のラスト2試合で選ばれながら出場できなかった選手に経験の機会を与える事になりそうです。全く出番が無かった、GK2人や植田、小林祐希、香川、武藤あたりの先発に期待したいところです。

試合展開については、南米5位との大陸間プレーオフを控えているニュージーランドとしては、日本は格好の「仮想南米」であり、本気モードでカウンター狙いのサッカーを仕掛けて来るでしょう。日本にとっては、本番で最初から攻める試合は無いでしょうが、相手に先制されて守られる展開は十分あり得るので、それを崩すためのシミュレーションにはなるでしょう。

しかしハリルホジッチが重要視しているのは、おそらくキリンチャレンジカップの試合内容や結果ではなく、それを目的に行われる代表合宿にあると思っています。11月には、欧州遠征でブラジル、ベルギーという世界トップクラスの強豪と親善試合をする事が決まっていますが、そちらの方がより本番に近いレベルのテストになるので、その1ヶ月先を見据えた準備を行っているはずです。

マスコミや世間では、今回のキリンチャレンジカップで新戦力が選出されなかった事を非難する向きがありますが、ブラジル・ベルギー戦の準備と考えればそんな余裕は無い事が分かるはずです。たとえ新戦力が加わるとしても、おそらく今から本番まで選手が入れ替わる割合は多くても1~2割程度で、今のメンバーに足りない左利き、今回招集された車屋や若手枠で堂安ぐらいはあり得るかもしれませんが、森岡、宇佐美、南野、中島翔哉らは厳しいように思います。

今の代表が抱える最大の問題点は、相手に攻め込まれた時の戦術の連携。イラク戦でもサウジ戦でも、4-4のゾーンを作ってしっかり人数をかけて守りながらも、相手のボール回しに選手が釣られてしまい、ゾーンに穴を作ってそこから攻め込まれ、失点してしまいました。アジアだから1失点で済んだものの、これがベルギーやブラジルだったら毎回絶対に見逃してはくれません。

残念ながら、今の代表でゾーン・ディフェンスを理解して適切に動ける中盤選手は長谷部だけで、小林祐希はある程度バランスぐらいは取れるかもしれませんが、山口蛍、井手口、遠藤、倉田あたりは壊滅的です。ハリルホジッチが長谷部を招集しなかったのは怪我明けの影響もあるでしょうが、彼らだけでゾーン・ディフェンスの連動をマスターさせたい狙いがあるのかもしれません。

ともかく、今回のキリンチャレンジカップについては、11月の欧州遠征、そしてW杯本番へと続く長い準備の一部としてじっくり見てみたいと思います。