「世界最強の矛3本よりも、岡崎のような盾を加えるほうが攻撃は機能するはず」ロシアW杯南米予選 第16節 アルゼンチン-ベネズエラ

現在予選5位と、自動出場枠から落ちてオセアニアとのプレーオフ枠に甘んじてしまっているアルゼンチン。8/31にウルグアイとのアウェイ戦がスコアレスドローに終わっただけに、最下位ベネズエラとの試合では絶対に勝利が必要だったのだが、まさかの1-1ドローで終了、ホームのエスタディオ・モヌメンタルは大きなブーイングに包まれた。

とは言え、アルゼンチンが酷かったというわけではない。アルゼンチンのフォーメーションは3-4-1-2で、2トップがイカルディとディバラ、メッシがトップ下という布陣。それにしても、アグエロがベンチでイグアインは招集すらされていないというのは、前線のタレントが豊富すぎて羨ましいを通り越してるよね。

序盤はやや固さが見られたアルゼンチンだったが、10分頃に攻撃力が全開し、左WBに入ったディ・マリアが高い位置でボールに絡み、5トップでベネズエラを鳥かご状態に押し込み、次々に決定的なチャンスを作るのだが、イカルディが少なくとも4回はあったシュートチャンスをことごとく決められない。

そしてアルゼンチンにとって非常に痛かったのは、前半25分にディ・マリアがハムストリングを痛めてアクーニャに交代してしまった事だ。今のネイマールが抜けたバルサもそうだが、ディ・マリアという長い距離を走って前線と中盤の間を繋ぐ選手が居なくなった事で前線に良い形でボールが来なくなり、それでもメッシは相手4人に囲まれてもシュートを打ったり、前半ロスタイムには強烈なミドルを放ったがGKにセーブされて得点ならず。

後半開始早々にもベネズエラはイエローをもらい、これでチームの半数である5人がイエローになって無失点だけど苦しい展開だなと思っていた後半4分、アルゼンチンが前がかりになったところでベネズエラの絵に描いたようなカウンターが炸裂、最後はムリージョが落ち着いてGKを交わすロビングのゴールを決めて何とベネズエラが先制点を奪ってしまう。が、その4分後にはクロスにイカルディと競ったフェルチャーにあたってオウンゴールが決まり、アルゼンチンが何とか同点に。

さらに後半17分に、メッシの陰に隠れて存在感が薄かったディバラに代えてアルゼンチンはベネデットを投入、30分にはイカルディを下げてパストーレにし、メッシとベネデットの2トップにするが、メッシがほとんど前線で歩いているだけになって消えてしまい、攻撃のチグハグさは増すばかり。4-1-4-1で自陣に壁を築いて守るベネズエラに対して、どうしてもラストプレイが合わずに追加点が奪えない。

むしろロスタイムにはベネズエラのほうにカウンターからチャンスが生まれ、アルゼンチンもパストーレがGKと1対1になる決定的なシーンを作ったが、やはりどちらも得点できずに1-1のまま試合終了。ボールポゼッションは76対24とアルゼンチンが圧倒していたが、シュート数は13本に終わり、支配率の割にはチャンスが作れなかった事が数字でも証明された。これでアルゼンチンは相変わらず5位のままでペルーとエクアドルとの残り2節を戦う事になってしまった。

全然レベルは違うけど、アルゼンチンと日本代表の悩みは良く似ているなと実感する。前線の駒はそれなりに豊富で、コンディションの良さで選手を選んだとしても、日替わりで組み合わせが変わるのでコンビネーションが作られず、ゴールに向かうラストプレイで息が合わない場面を作ってしまう。日程的に練習時間の余裕が無いW杯予選ならなおさらである。

アルゼンチンの場合、イカルディはフィニッシャー、メッシとディバラはチャンスメイカーで、2人いたらどうしても味方からのボールはメッシにボールが集まってしまう。おまけにリンクマンのディ・マリアが居なくなったので完全にディバラが除け者になってしまった。こういう組み合わせなら、岡崎のような中盤に下りたり飛び出してスペースメイクをするFWを加えるべきなんだろうけど、どうしても最強の矛を揃えたい欲求には逆らえないんだろうね。