「監督にしかわからない何かがある」スポーツクロス 藤田俊哉インタビュー

BS朝日に、”部活応援宣言!”とか言う訳のわからないテーマを掲げてやってる「スポーツクロス」という古田敦也がキャスターをしている番組があるんですが、そこにVVVフェンロでコーチとして2部優勝を成し遂げ、今期からイングランドのリーズ・ユナイテッドでスタッフとして転身した藤田俊哉氏のインタビューをやっていたので見てみました。

進行としては、質問のテーマをいくつか並べてそれに藤田氏が答えていくという形だったのですが、ざっくりした聞き取りで箇条書きに並べてみます。

32歳でオランダに移籍したが、結果的に半年で帰ってきた。もっとやりたかったが選手としては無理なので、今度は指導者として勝負する事にした。

好きな事をしているので苦労と思う事は無かったが、コミュニケーションは最初のうちは難しかったので、好きでもないのにいつもコーヒーを入れたり、いろんな仕事を探し出して引き受ける事で少しずつ机も広くなり、監督に向かってステップアップ出来ている。

強いチームとは、クラブがどういうサッカーをするか目指す方向性が決まっている。そしてチーム内の良い競争が存在する事。ジュビロもそうだが、選手間で意見交換やコミュニケーションが取れていて、常に皆で議論している。

もちろん才能も必要で、特にピッチを平面から俯瞰で見れる選手が揃って、初めて美しいサッカーにつながる。ピッチや戦術が悪いなどと、環境や監督のせいにする選手は伸びない。

海外移籍でJリーグが空洞化すると言われるが、海外にはどんどん移籍するべき。選手が移籍すればまた新しい選手が出て来る。そして海外に渡った選手がまたJリーグに経験を持ち帰ると言う新陳代謝、循環が必要。

注目している日本人選手は、フローニンゲンに移籍した堂安選手。左利きのドリブラーで得点力もある。何しろ20歳での移籍というのが良い。ヨーロッパはそれぐらいの若手がどんどんトップリーグに出て来て活躍している。日本の10代の選手にはとても良い刺激になる。

自分の最終的な目標は、日本のサッカーが世帯でトップを走る事、つまりワールドカップで優勝する事。そのためには、指導者が海外のトップを感じて日本に還元しなければならない。監督にしかわからない何かがある。

語っている内容自体は、ここでも以前から主張してきた事でそんなに驚きは無いのですが、逆に言うとヨーロッパの前線でバリバリ働いている指導者と、我々素人のサポーターとの距離感が近くなっていると言えるわけで、ある意味感慨深いものがあります。

自分の勝手な理論として、日本サッカーピラミッドというものがあります。

これは、日本のサッカーが世界のトップクラスになるために世界レベルへと変わらないといけないレイヤーを示していまして、裾野の大きさと難易度を表しています。

最下層のサポーターについては、既にスカパーやDAZNの普及で十分ハイレベルになっていると思います。選手についても、既に欧州移籍が珍しくないぐらいに世界経験を順調に獲得しています。

相当難しいかなと思っていたクラブについては、ジーコイズムが浸透しきった鹿島、ゴールドマン・サックス出身の会長がいる岡山、岡ちゃん率いる今治、そしてジャパネットの高田氏が就任した長崎など、世界に通用しそうな経営者が出てきています。

古川・早稲田閥がひしめく協会でも、早稲田ではあるけどビジネス畑の村井チェアマン、学閥なんか屁とも思ってなさそうな副会長岡ちゃん、選手として世界を知っている北澤氏など、新しい風が吹き始めていると言えます。

それに比べると意外に苦戦しているのが指導者です。確かに戦術面ではゾーン・ディフェンスは若手の指導者にとって当たり前になっている様子ですし、底上げは確実に出来ているように思います。

しかし相変わらず日本人監督の立場は軽く、クラブ首脳やサポーターは戦術や規律より選手の好み、楽しさが優先される傾向は強いですし、キッズ、ユース世代に旧態依然とした体罰や罵声を好む体育会系指導者がはびこっているのも事実です。裾野の広がり方に、必要なレベルが追い付いていないのが実情だと言えるでしょう。海外で学んでいる指導者も増えているようですが、協会にとって外様の外様な人がいくら増えても一向に体制は変わりません。

それだけに、藤田氏のような影響力を持った人が、指導者としてヨーロッパの高いレベルを吸収してくれる事は大変に貴重です。選手としての経験と、指導者としての経験は全く違うものがという事は、「監督にしかわからない何かがある」という言葉に良く表れていると言えます。

旅人氏が貴重な人脈と経験をちっともサッカーに使ってくれないので(笑)、ますます藤田氏に頑張ってもらうしか無いですよねえ・・・ぜひ、リーズでの活躍を期待しています。