「最強スプリンター・キッテルの悲劇、フランスとイタリアの凄絶な2位争い」ツール・ド・フランス2017 第16・17ステージ

とうとう最後の山場、アルプスステージが迫って来た今年のツール・ド・フランス。

第16ステージは、前半こそ山があるものの後半は平坦で、コースプロフィール的には逃げ選手向きのステージではあったのですが、その序盤の3級山岳でマイヨ・ヴェールのキッテルが遅れたことで、ポイント賞で2位に付けているマイケル・マシューズ擁するサンウェブチームが、シルヴァン・シャヴァネルやトーマス・デヘントといった選手が含まれていた逃げ集団をあっという間に吸収するハイペースな展開に。

マイケル・マシューズは中間スプリント、そしてステージのゴールスプリントでも1位を取って50ポイントの荒稼ぎ、当然ながら大きく遅れたキッテルはポイントに全く絡めず、マイヨ・ヴェール争いは一気に29ポイントの差まで詰まり、完全に射程内に入りました。が、次のステージでもっと大きな動きが発生したわけですけどね・・・

このステージでは、後半のオーヴェルニュ地方に旗が折れ曲がるような強風が吹き荒れ、終盤はかなりナーバスな展開になりました。大きなアクシデントこそ無かったですが、総合で5位に付けていたダニエル・マーティンは、チームメイトのキッテルのために後方集団にアシストを残していたため、横風区間で前に上がれず中切れで取り残され、8位のルイス・マインティーズやコンタドールらと共に先頭から51秒遅れてゴール、痛いビハインドを負ってしまいました。

そして下りゴールとは言え、伝統の「デュオ」、アルプス1級山岳テレグラフ、超級山岳ガリビエ峠のコンビが後半に待ち構える難関の第17ステージ。

当然ながら序盤から逃げ集団が形成され、その中に入り込んだマイケル・マシューズが早速スプリントポイントをゲットして9ポイント差に迫った一方、キッテルはスタートから20km地点で落車に巻き込まれ、大きなダメージを受けて治療は行ったものの、その後の山岳を到底走り切れないと判断、何とここまで来てのリタイアとなり、これから熱くなるだろうと思われたマイヨ・ヴェール争いは、残念なアクシデントによってマイケル・マシューズにほぼ確定してしまったと言って良いでしょう。

総合争いでは、7分差と大きく遅れてしまったコンタドールが、最初の超級山岳クロワ・ド・フェール峠でアタックして逃げ集団に追いつき、一時は5分の差をメイン集団に付けたものの、1級山岳テレグラフ峠でチームスカイがペースアップ、3分差まで詰めて頂上をクリア、そしていよいよ勝負はガリビエ峠に。

先頭集団の中ではログリッチェが単独でアタックし、コンタドールらは付いて行けず集団はペースダウン、そこに総合3位のバルデやダニエル・マーティンがアタックを繰り返して一気にペースが上がったメイン集団が追いつき、再びメイン集団を形成する中、総合2位のファビオ・アルが遅れだしガリビエ峠の頂上までに追いつけず長い下りがスタート。

ログリッチェはテクニカルな下りでもペースを落とさず、そのまま逃げ切りを決めて、嬉しいスロベニア人初のツール・ド・フランスのステージ優勝。後方では、ボーナスタイム獲得のスプリントが行われ、結局リゴベルト・ウランが2位、フルームが3位でゴール、4位のバルデはボーナスタイム獲得ならず、総合トップのフルームとは27秒差にウランとバルデが並んだ状態で、明日行われる最後の山岳ステージを迎える事になりました。

ファビオ・アルは、結局コンタドールとともにフルームから31秒遅れてゴール。総合では53秒差の4位に後退、バルデのフランス、アルのイタリアという代理戦争はフランスが勝利した格好。優勝争いはフルームが取る可能性は非常に高いですが、2位、3位の表彰台争いは最後まで完全にもつれそうです。