「乾、本田、井手口の台頭はハリルホジッチにとってどっちの悩み?」キリンチャレンジカップ 日本-シリア

仮想イラクを想定して臨んだ、キリンチャレンジカップ・シリア戦。ホームで1-1のドローに終わったという事で、あちこちでお決まりのように悲観論やバッシングが沸き起こっている状況だけれども、個人的には下手に4-0とかで勝って慢心してしまうよりも良かったと思っている。

むしろ、グループ3位に入る上で絶対に勝利が必要な中国戦を控えたシリアのほうがベストコンディションで、日本相手に90分間足を止めず必死で戦い、GKが最後は中東戦法をするぐらい”勝ち点1”を取りにきたのが不思議で、ピークをここに持って来て大丈夫なのかと心配になるぐらいだった。

それに対して日本はコンディションがバラバラで、特に久保はボールが足につかないほど最初から疲れが見えていて、今野も得点は決めたが試合から消えている事が多く、吉田は終盤にヘディングを連続でミスするぐらいにヘロヘロになるなど、コンディションが良さそうだなと思ったのは大迫ぐらいで、まだまだあと1週間で調整しないといけない部分は多かったように思う。

4-3-3の戦術面でも課題は多く、前半の10分に香川が肩の怪我で退いた後には倉田が入ったのだが、中盤の3人全てが使われる人であって誰もボールを落ち着かす事が出来ず、原口と久保が相手のSBに厳しくマークされ、酒井と長友の上がりもSHにきっちりついて行かれた状況なのに、無理に速い展開で運ぼうとしてカットされ、間延びした中盤に出来たスペースを使われるというマッチポンプを繰り返してしまった。

それを一変されたのが後半の選手交代。山口が傷んで交代で入った井手口は、山口よりもバランスを取ることに長けていてアンカーらしい堅実なプレイを見せると、後半開始から入った本田が今野が退いた後でインサイドハーフになった事で本領を発揮、前半には見られなかった中盤でのキープから鋭いパスを左右に通してシリアを自陣へ釘付けにさせる。

そして何と言っても乾の活躍。セクシーなトラップからキレキレのドリブルで左サイドを切り裂き、何度も決定機を作って味の素スタジアムの観客を大いに沸かせた。が、いくらドリブルで突破しても得点が入らなければ意味が無いのは事実で、乾をチームの攻撃の一環としてどう使うのか、サイドで張るよりもインサイドで受けたがる乾と、長友や倉田との連携についてはまだまだ課題が残るところである。

今日先発してコンディションが悪かった先発メンバーの回復を見極め、サブで好調だった選手をどう当てはめていくのか。日本代表全体の底上げという面では収穫の多かった試合ではあるが、イラク戦に向けてという事を考えると、ハリルホジッチ監督にとっては良くも悪くも悩みの多い1週間になりそうである。