「柴崎がテネリフェのアイドルになった理由は、香川以上の意外な”柔軟性”にあり」

既にほとんどの欧州リーグがシーズンを終了しているのに、まだあと2節+昇格プレーオフが残っている過酷なスペイン2部。

現在4位と3~6位までのプレーオフ圏に入っているが、7位のウエスカとは勝ち点4差で負けられない試合が続くテネリフェは、アウェイで残留争いをしているアルコルコンと対戦。

とは言え、アルコルコンはここ3試合負け無しと好調で、この試合もゾーン・ディフェンスをベースにしながらもマンマーク指向が強い守備で、4-2-3-1のトップ下に入った柴崎も左右に大きく動いてみるのだが、相手にきっちりマークを受け渡しされ、中盤からのパスコースも切られてほとんどボールが出て来ない。

が、少ないプレイ機会でチャンスを作り出すのが柴崎で、10分にゴール前でボールを受けてから右に流れ、PA右側にいたアーロンにスパッとパスを通すと、アーロンがそのまま持ち込んでクロス、これをフリーになっていたロサノがヘディングで押し込みワンチャンスでテネリフェが先制点を挙げる。

その後も15分、18分とテネリフェは決定的な場面を作るのだが、アーロン、ティロネと外してしまって得点ならず。さらに28分には右サイドで柴崎が絶妙なタイミングでロサノの裏抜けにスルーパスを合わせるが、これもシュートまで持って行けない。ならば自分がと思ったのか(笑)、30分に右のニアゾーンへ走り込んだ柴崎にティロネからスルーパスが通り、柴崎はそのまま左足ダイレクトでシュートを放つと、ボールはGKの足元を抜けてゴールに飛び込み、柴崎はバースデイゴールである同時にスペインリーグ初となる得点を決めた。

しかしここからアルコルコンが猛反撃、活発なサイドアタックを中心にテネリフェを激しく攻め立てると、43分にはクロスから完全などフリーとなるヘッドを至近距離から打たれるが、テネリフェGKダニ・エルナンデスがスーパーセーブで防ぐと、ロスタイムの強烈なシュートもきっちりキャッチ、テネリフェはかろうじて無失点のまま前半を終える。

後半4分のオスカル・プラノが放った完璧なFKは、さすがにエルナンデスも止められず1点差に迫られたが、11分にCKで相手が競ったボールがフリックのような形になってティロネの前に落ち、ワントラップから放ったボレーが突き刺さってテネリフェが大きな3点目をゲット、アルコルコンに傾いた試合のペースを引き戻す。

このあたりから疲れが見え始め、プレイのインテンシティが落ちた柴崎は、23分にアマトが入った後は右SHに場所を移してボールを落ち着かせる役割を果たすと、35分にカミーユが2枚目のイエローで退場した直後に守備固めの選手と交代。その後はテネリフェが相手に押されながらも5分の長いロスタイムを消化、試合はそのまま3-1で終了した。

下位のウエスカ、バジャドリードが勝ったために順位と勝ち点差4は変わらないが、1試合を消化したので残り2試合。次のホーム戦は奇しくも鈴木大輔が所属するヒムナスティック・タラゴナとの日本人ダービー。ヒムナスティックも残留がかかっているだけに複雑ではあるが、試合は楽しみである。

柴崎はリーガ・エスパニョーラ2部第40節のMVP候補になるなど、世間からは絶賛の試合だったが、後半は疲れていたし個人的には凄く出来が良かったとは思えなかった。ただ、中盤で試合が作れないと裏抜けをしてみたり、守備でも激しいスライディングを見せるなど、現代のトップ下に求められる要件については、香川以上に理解してプレイに反映させているように思う。

チームに加入した当初は前線に蹴り込むだけだった退屈なサッカーを、柴崎が入ることでパスで繋ぐサッカーに変貌させたし、テネリフェとしては何としても柴崎との契約延長を望んでいる事は疑いない。そのためにも、何とかプレーオフで勝ち抜き、晴れて1部の選手として契約を結んでもらいたいものだ。