「メッシの至近距離シュートをも曲げる、ブッフォンの反重力」UEFAチャンピオンズリーグ 準々決勝第2レグ バルセロナ-ユベントス

ベスト16ではPSGに対する4点差のビハインドを、ホームのカンプ・ノウで6-1の歴史的な大勝でひっくり返したバルセロナ。同じように3点差を付けられた準々決勝で、ユベントス相手に前回の再現を狙った試合だったが、結果は1点も取れず0-0のスコアレスドローに終わってあっけなくバルサの敗退が決まってしまった。

正直なところ、PSGのGKトラップとは能力も経験値も2回りは上のブッフォンを擁するユーベに対し、いかにバルサと言えどそう簡単に点が取れるとは思えず、バルサの勝ち抜けは難しいとは思っていたけど、ここまでユーベの守備が上手くハマるとは思わなかった。

試合の序盤は、攻撃時は4-2-3-1、守備時は4-4-2で守るユーベに対し、4-3-3のバルサは右ウイングのメッシにマークが集まるのを利用して、左ウイングのネイマールがドリブル突破を仕掛けてチャンスは作ったが、この試合のネイマールは焦りもあるのかあまりに仕掛けが強引で、それでも2~3人ぐらいはテクニックで抜いてしまえるのだが、ゴリゴリやっている間にユーベの守備が揃ってしまうので、結局最後のところで引っかかる場面が多すぎた。

それでも、前半19分にはPA内に入って来たメッシが至近距離からシュートを打ち、GKのブッフォンはブラインドになっていたせいか全く反応できず、枠にさえ入っていればゴールになっていたはずなのだが、ポストの右側にそれてしまう。ここで先制点が決まっていれば試合の流れは大きく変わっていたはず。

その後はユーベもきっちりと守備を修正、相手陣内ボールでは高い位置からバルサの4バックとブスケツにプレスをかけてサイドチェンジを許さず、自陣に入ると3ラインでコンパクトなブロックを形成してメッシを封じ込め、アタッキングサードでは6-3-1のような形になってサイドと中央にスペースを空けない、3段階の構えをフィールドプレイヤーが一糸乱れず遂行する。

それでもMSNが絶好調であれば点をもぎ取る能力をバルサは持っているはずなのだが、目立っているのは何とかボールをPAまで運ぼうと奮闘しているネイマールだけで、メッシとスアレスはユーベにスペースを消されて存在感が皆無。ある程度守備を免除されている彼らが働けないと、バルサの試合は一気に苦しくなる。

特にメッシは後半21分にも、珍しくハイボールをキャッチし損ねたブッフォンが飛び出している間に、折り返しをフリーでボレーしたシーンがあったのだが、これもふかしてしまうなど全くメッシらしくないプレイの連続で、試合を通じて放った6本のシュートのうち、枠内はたったの1本という有様だった。

ただそればバルサの不調というよりもユーベの守備にも理由があると見るべきで、DF陣はほとんど危ないシュートコースを切っていたし、ゴールにはブッフォンが待ち構えているため、いつもより精度とスピードを高めたシュートを打たなければ決まらないという強迫観念がバルサの選手にはあったのではないだろうか。

ともかくこれで、バルサの一時代が終わってしまったのは確かだろう。MSNが崩れるにはまだ早いとは思うが、シャビの退団に加えてイニエスタにも衰えが見えてきた事で、彼らを攻撃に専念させるだけの構成力が中盤から失われ、攻守に負担が増大してしまっている。そしてサブの選手層も薄い。

バルサは今期でのルイス・エンリケ監督が退任が決まっており、移籍禁止処分が切れる今年の夏には大型補強を敢行するのだろうが、果たしてクラブはどんなチームに作り変えようとするのだろうか。