「化物ぶりを見せつけたディアワラだが、アンカー対決の軍配はカゼミーロに上がる」UEFAチャンピオンズリーグ ベスト16第1レグ レアル・マドリー-ナポリ

4-3-3や4-1-4-1、最近では3-1-4-2など中盤の底を1人で務めるアンカーを置くフォーメーションが増えた事により、このポジションにどれだけ良い選手を揃えるかが、欧州のトップリーグで優勝を狙うチームにとっての必須条件になりつつある。

2015-2016シーズンを2位で終えたナポリは、大エースのイグアインを事もあろうに宿敵ユベントスに引き抜かれ、今期はさすがに激しく弱体化するかと思われたのだが、何と昨年の11月からこの試合まで18戦無敗でチャンピオンズリーグ圏内の3位をガッチリキープしている。

それはもちろん、第一にサッリ監督の卓越した戦術構築能力にあるのは間違いない。この試合でナポリは前半の8分にインシーニエが意表をついたミドルシュートで先制点を決めたのだが、ボールを奪うと前線の選手がダイアゴナルに飛び出し、中盤の選手はおそらく状況を見てからではなくオートマティズムで「そこに走っているはずの」味方に向かってパスを出しているのだろう。それほど、レアルの守備陣にとって判断が間に合わない電光石火の得点だった。

そしてそのナポリの超速攻撃を支えているのが、若干19歳のアンカー、ディアワラ。プレイスタイルはカンテとヴァイグルを足して2で割ったような感じで、この試合で実に両チームトップの12.8kmを記録したように、カンテほど広範囲なボール狩りは出来ないが、常に動き回って攻守に絡み、ヴァイグルのようにシンプルで判断速く縦パスを出して来る。彼もまた、オフシーズンにビッグクラブから確実に狙われる逸材だろう。

ただ惜しむらくは、ナポリの守備陣にインテンシティが足りなかった事。守備時には4-5-1の形でコンパクトには守っていたのだが、セットプレイを恐れてなのか激しいアタックはせずに、結局ドリブルやパスワークでレアルにゴリゴリと自陣の深い位置で基点を作られ、守備陣が引きつけられたところで中央に出来たスペースを使われる悪循環。同点で折り返した後の後半4分に決めたレアルの2点目も、クリロナを追い込みながら止められず、折り返しをクロースに流し込まれたものだった。

レアルはまずモドリッチが素晴らしかった。ナポリのコンパクトな守備をものともせず、少しでもスペースが見えたらすかさず入り込み、インサイドとアウトサイドのキックを自由に使い分け、スピードを落とさずボールを繋ぎ続けた。後半はややペースが落ちたが、今度は前半に消えがちだったクロースがモドリッチの仕事を着実に引き継ぎ、さらに大きな展開でナポリのプレッシャーを無効化した。

またレアルのアンカーであるカゼミーロも良い仕事をした。ディアワラほどのタレントは無いものの、危険を察知してスペースを埋めるポジショニングはさすがで、1度抜かれても最後まで粘って足を出す泥臭さは、今のレアルにとって不可欠な要素になっている。しかもこの試合では、後半の9分にナポリがクリアした浮いたボールをダイレクトで叩く、ゴラッソなドライブシュートを決めてみせるなど大活躍。先輩アンカーとしての貫禄を見せつけた。

ただしレアルは3-1で勝利したとは言え、まだ魔境サン・パオロでのアウェイ戦を残しての2点差は安心できない。特にエースのクリロナはナポリ戦でも2回の超決定機を外すなどかなりの不調。バルサとは違って中盤が好調なので問題は顕在化してないが、気の緩みだけは絶対に起こさないようにしたいところだ。