「通算19冠の鹿島、年間シルバー3冠の川崎との埋めがたい差」天皇杯 決勝 鹿島アントラーズ-川崎フロンターレ

通算で18冠のタイトルを獲得し、今年のクラブW杯で準優勝という結果を出した鹿島と、今期はJリーグ年間2位をマークするも、未だタイトルを獲得できていない川崎フロンターレとの対戦になった、2017年元日の天皇杯決勝。

下馬評では、経験値で圧倒的に上回っている鹿島が有利と見られていたが、展開は非常に拮抗した見ごたえのある、日本一を決めるにふさわしい試合になった。

川崎のフォーメーションは3-4-3で、鹿島の4-4-2に対して戦術的なミスマッチを狙いに来た格好。そしてその狙い通り、前半は川崎のペースで試合は進む。

鹿島はゾーンで守備陣形をセットするが、相手が自陣に入ると早めにマンマークへと移行する。川崎はそこを突いて、大久保や小林が中盤に下がり、マークを引き連れて空いたスペースを大島や中村憲剛が入り込んでパスを受ける、ギャップを作る動きでチャンスを作り出すが、鹿島も最後はしっかり体を寄せてシュートコースを限定するなど、いつもの粘り強さを見せて川崎に得点を許さない。

序盤は守備で混乱を見せていた鹿島だったが、そこはさすがの修正力でマンマーク寄りからゾーンで守る形に戦術を修正、そこから徐々に持ち直し始める。すると前半42分、遠藤の左CKを山本脩斗が後ろに下がりながらのヘディングで合わせ、マークに付いていた車屋が体を寄せきれず、ボールはゴール右隅に決まって押されていたはずの鹿島が先制する。

後半から、川崎は三好を投入して4-4-2にフォーメーションを変更、ゾーンの相手に対して1対1での早い仕掛けで勝負を挑む。そして早速後半9分にその策が実り、小林が縦パスをスルーしてマークを置き去りにすると、ボールを受けた三好からの横パスをきっちりファーサイドに決めて川崎が同点に追いつく。

その後は両チームともに連戦の疲れが出てか中盤にスペースが空き出すが、体力的に余裕がある川崎がボールを保持する機会が多くなり、小林がゴールポストに当たるシュートなど2度の決定機を作るが得点ならず。もしここで川崎が2点目を決めていれば違った結果になったはずだが、試合を決めきれず延長戦へと突入。

ここで今まで死んだふりをしていた鹿島が牙をむく。延長前半3分に、ファブリシオがロングボールから抜け出したシュートは、エドゥアルド・ネットが決死のクリアで防ぎ、直後のCKから西のヘディングはクロスバーに救われたが、さらに鈴木のヘディングを西が競って潰れたこぼれ球をファブリシオが蹴り込み、鹿島が怒涛の攻撃で2点目をもぎ取ってしまう。

その後は交代枠を2人残していた川崎が、森谷、森本と選手を投入して攻勢に出ようとするが、鹿島はしっかり受け止め逆にカウンターからチャンスを作る。川崎は最後のCKでGKチョン・ソンリョンが上がるもファールの判定。そのまま鹿島が逃げ切り、19冠目のタイトルを獲得した。

もともと試合巧者だった鹿島が、クラブW杯での経験を積んでより凄みを増してしまったな、というのがとにかく第一印象。90分を終えて川崎の緊張が少し緩んだスキを狙って猛攻を仕掛け、まんまと得点に繋げた一連の試合運びには戦慄させられるものがあった。

この鹿島が上り詰めた高みに、他のJクラブがどうやって追いついていくのか、その経験がACLでどう発揮されるのか。2017年がいろいろ楽しみになる、良い天皇杯決勝だった。ついでに、本年もどうぞ宜しくお願いします(笑)。